知恵の経営

第12回

歩合制を廃止した住宅会社

アタックスグループ 2015年3月25日
 
 営業マンの歩合制が常識になっている業界で、それを廃止したハウスメーカーが「びわこホーム」(滋賀県甲賀市)だ。しかも、歩合制廃止前までブレまくっていた業績が、廃止後は高く安定した。

 設立は1990年。現会長の上田裕康氏が営業マンとして勤務していたハウスメーカーを退職して、スタートした。現在の社員は30人、売上高は約16億円だ。

 同社が歩合給を全面的に廃止したのは8年ほど前。その後の業績推移をみると下がるどころか、すこぶる好調に伸びている。大手ハウスメーカーがひしめく地域にあって、11年連続新設着工件数がナンバーワンであるばかりか、利益率も平均的に7%前後を持続している好業績企業である。

 創業当初は業績と給与が連動する明確な歩合制を導入していた。創業者である上田会長自身が、ハウスメーカーのトップセールスマンとして働いていたこともあり、「みんな仲良くなんてとんでもない…、営業マンは全面的な歩合制が正しい…」。 つまり、「一に売り上げ、二に売り上げ」を掲げた経営に邁進(まいしん)していた。

 しかしながら、こうした経営は個人の売り上げを高めることを至上主義にした社員や、その目的達成のためには手段はどうでもいいといった社員を増大させた。気が付けば、会社の中はぬくもりが消えうせ、逆にギスギス感が次第に蔓延(まんえん)していった。売り上げを高めることのできなかった社員ばかりか、好成績を上げた社員まで、疲れ果てたように離職していった。

 さらには売り上げを優先するあまり、新築後のアフターサービスなど、金額のはらない仕事は次第におろそかにし、新築した顧客からのクレームが相次ぐ、といった本末転倒の経営になっていった。

 当時、一時資金不足で倒産の危機もあったという。こうした中、現社長の高木光江さんが見かねて資金援助をするとともに「皆が幸せを感じるいい会社をつくろう…」と進言する。上田氏も「自分が家族のいる社員だったらこんな経営をしている会社で幸せを実感できるであろうか、お客さまに親切丁寧にしようと思うだろうか…」と大いに反省し、それを契機に歩合制を廃止し、全員参加の大家族的経営にかじを切ったのである。

 同時に社員満足度を高め、社員の一体感を高める上で考えられるあらゆる経営を次々に実行していった。この結果、会社は大きく変化していく。

 全ての社員が自分目線・業績目線から顧客目線・仲間目線で仕事に取り組んでいったばかりか、セクショナリズムもなくなり、部門間で助け合う社風が醸成されていった。

 それまでの高い離職率も、年々低下し、今や業界のベンチマーク企業として高い評価を受けている。

 「歩合制こそが」と考えている多くのリーダーに一考を促す好事例である。

<執筆>
法政大学大学院政策創造研究科教授、アタックスグループ顧問 坂本光司
2015年3月25日「フジサンケイビジネスアイ」掲載
 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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