知恵の経営

第20回

非価格競争力を強みに

アタックスグループ 2015年5月20日
 

先日、大学院生らと中国・浙江省の企業調査をしてきた。その中の一社に、「浪紗(ランサ)メリヤス有限公司」というメーカーがあった。場所は、杭州国際空港から東に車で1時間半ほど走った世界最大の軽工業品流通基地がある義烏市の郊外にあった。

 同社の主な事業は各種の靴下や肌着の製造で、現在の社員数は約8000人、売上高は日本円で約600億円となっている。とりわけ生産量が多いのは靴下で、年々増加し、現在では月産約6300万足、年産では約7億6000万足と世界最大の規模を誇る。

 同社は、今から20年前の1995年、現経営者である翁栄金氏が32歳のとき、独立し、創業している。

 翁社長は、当初、肌着の仕入れ小売りを主業務にしていたが、生産機能を持たない小売業では、売上高は増加するものの利幅が少ないと、創業後数年で生産設備を導入し、製造小売業として再びスタートした。

 やがて、靴下とりわけ女性向けのストッキングの将来性に着目し、最新鋭の生産設備を積極的に導入するほか、研究開発部門とマーケティング部門の人財確保と育成に注力してきた。

 こうした努力のかいあって、この20年間で開発販売した商品は数万アイテム、パンストだけでも、その種類は1000を超す。ちなみに、靴下専門の社内デザイナーだけでも、その数は数百人という。

 さらに驚くのは、同社の開発力だけもさることながら、その開発のスピードで、実際に同社の新商品発表会は毎月3回も開催されている。

 当初は、低価格品・大量生産品が中心だったが、品質も年々高まり、今や国内でも高級ブランドとして著名になった。そればかりか、販売の約20%を占める輸出先も、欧米のトップブランド企業へのOEM(相手先ブランドによる生産)とカルフールなどへの販売で、OEM先は年々増加しており、今や76社を数える。

 こうした中国の元気印の企業の存在を知ると、「問題は外部環境の悪化…」と元気を失っている、多くのわが国企業のなお一層の経営革新努力が強く望まれる。

 もとより日本企業の基本的な方向は、これらの企業との真正面からの価格競争や規模拡大競争などではなく、これら企業では到底できない、やれない非価格競争力をセールスポイントとする経営であることは言うまでもない。

 価格競争や規模拡大競争では歯が立たないのも当然であろう。浪紗メリヤスの社員の給料だが、現場ワーカーが平均7万円程度、デザイナーはその2倍弱の同12万円程度となっており、わが国ワーカーの月給約30万円、デザイナー約40万~50万円を依然として、はるかに下回っているからだ。

<執筆>

法政大学大学院政策創造研究科教授、アタックスグループ顧問・坂本光司

2015年5月20日「フジサンケイビジネスアイ」掲載

 
 

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アタックスグループ

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