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知恵の経営

第51回

選択と集中で競争力伸ばす

アタックスグループ(税理士法人、経営コンサルティング)  執筆

 

 中国の華南地区に進出した大手OA機器メーカーを最近、視察した。工場責任者は「十数年前に進出したときは何もなかったが、現在は大都会の市街地。隣に高層マンションが建設され、もう工場地域ではなくなった」「労務費も年々上昇しベトナム、フィリピンに比べると3倍違う」という。現地の実情を知ると海外進出した日本企業の次のグローバル戦略、チャイナプラスワンの必要性を実感する。グローバル経済に勝ち残るには材料費、労務費、土地代などが安い地域で生産し、需要の多い地域で販売する適地生産・適地販売が鉄則だ。視察した企業も既にベトナム、フィリピンの新工場で生産を始めている。

 ところで「グローバルビジネスの隠れたチャンピオン企業」という本を読んだ。著者はコンサルテング会社、サイモン・クチャーアンドパートナーのハーマン・サイモン会長で、以前はドイツの大学教授でマーケティングを教えていた。ドイツは国内総生産(GDP)に占める輸出比率が50%以上で、その多くを中堅の「隠れたチャンピオン企業」が支えているという。日本企業の例もあり、中には視察した企業も紹介されていた。

 サイモン教授の主張で、中堅中小企業にも役立ちそうなことを紹介してみる。

 1つ目は海外進出・輸出に積極的なこと。例えば飼い犬用のリード(首輪につけるひも)は、ドイツのフレキシというメーカーの伸縮タイプが世界シェア70%を占める。

 2つ目は、多くの企業が顧客と極めて近く、4分の3は直接販売している。

 3つ目は、価格競争に巻き込まれない努力をしている。

 一方、筆者は資本主義経済下の競争ルールは3つと考える。

 (1)新商品・サービスの開発力。顧客層は誰かを考え、その顧客に継続的な価値と感動を提供できる開発力。代表例はトヨタ自動車、米アップル。

 (2)資材調達・製造・販売面のオペレーション力。コスト・スピード・便利さなどで優位に商品・サービスを提供する能力。ニトリ、セブン-イレブンなど。

 (3)選択的な市場構築力。自社の市場、顧客は誰かを鮮明にして何ものにも替え難い存在になること。家電販売のヤマグチ(東京都町田市)など。

 「選択と集中」で自社の競争力をどの方向で伸ばすか、中小企業といえどもグローバル視点で経営を考える時代である。

<執筆>

アタックスグループ主席コンサルタント・丸山弘昭

2015年12月30日「フジサンケイビジネスアイ」掲載

 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


Webサイト:アタックスグループ

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