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マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>

第21回

上級マネジャーの役割(間接部門を含めた部門間の連携)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「上級マネジャーの役割についてお聞きしているところです。ここまで、戦略に関する役割と現場マネジャーへのマネジメントをお聞きしました。次は何ですか?」

「次は、組織の分業を機能させることだ。」

「組織の分業を機能させる?物々しい言い方ですね。」

「言い方は物々しいかもしれないが、言っていることはシンプルだ。組織とは、分業して大きな仕事をやり遂げる仕組みと言える。」

「確かに。」


我を通しがちな各部門

「そうやって大きな仕事を分け合っている関係であるにもかかわらず、各部門は、自らの論理で判断し、行動しがちだ。協力し合わなければならない場面でも反目し合うことも少なくない。」

「確かに。そうやって我を通すと会社としてのパフォーマンスが落ち、結局は自分の実にならないのに、みんなそれを理解しようとしないのです。」

「そうだな。それは何故だと思う?」

「みんな、我が身可愛いからですか?」

「まあ、そうとも言えるがな。しかし根本を忘れてはならない。そうなるようにマネジメントされているからなんだ。」

「わがままになるようにマネジメントされているですって!そんなことって、あるのですか?」

「各部門は、自らのパフォーマンスで評価されるだろう。協力したことで評価される訳ではないんだ。」

「そういえば、そうですね。」

「多くの場合、協力したことを評価するという仕組みすらない。つまり各部門が我を通しがちなのは、マネジメントが原因だという側面もあるんだ。」

「なるほど。分かりました。」


連携の仕組みを整備する

「とすると、各部門が協力し合うようにするために、マネジメントで対応しなければならない。」

「仰る通りだと思います。しかしどのようにするのですか?」

「まずは各部門が貢献し合っている関係を目に見える形で示し、貢献を促す仕組みが必要があるだろうな。」

「これも、仰る通りだと思います。しかしどのようにするのですか?」

「会計上のやり方として『移転価格(Transfer Price)』がある。」

「あ、聞いたことがあります。例えば生産部門が製品を製造して販売部門に引き渡す時に、その価格を設定することですよね。」

「そうだ。例えば全社一丸となってある製品の原価を下げようとする時に、部門毎に引下率を設定するのは非常に難しい。」

「どの部門も、自分の引下率を軽くしようとするでしょうからね。」

「さらに、従来の会計処理だとコスト引下げは自分に不利になる場合がある。付加価値が下がるからな。」

「そうですね。」

「その点、移転価格を設定すれば、今まで以上にコスト削減に努めれば、自部門が生んだ価値が増えることになる。」

「コスト引下げに協力しようというモチベーションが高まるわけですね。」


間接部門の協力関係にも配慮する

「連携といえば、間接部門の貢献も大切だ。」

「間接部門ですって?間接部門は会社の必要悪でしょう。なるべく削減していくしかないのではありませんか?」

「おいおい、組織戦略室の重鎮が、そんな意識では困るだろう。間接部門は、直接部門に対して立派に貢献しているぞ。」

「そうですか?」

「では聞くが、間接部門がもし無かったら、どうなる。間接部門の仕事は、もうやらなくて良いのか?」

「いや、そうではないです。経営戦略を策定するなど会社内で積極的な意味を持つ仕事をしている部門にしても、福利厚生など法律等で決まっている仕事をするにしても、無ければ困る仕事です。」

「そうだろう。例えば1つ事例を考えて欲しい。昨年、給与課の合理化案が通ったよな。従業員一人一人の年末調整関係書類について、それまでは給与課が記入を鉛筆書きしておいてくれ、問題がなければ本人がペン書きして提出することになっていたけれど、昨年からは個人が書くことになった。」

「それで給与課の人員が削減されましたね。」

「確かにそうだな。しかし、現場の作業員が作業をやめて書類を書かなければならないことになった。それに見合うものだろうか?」

「見合うものだと聞いていますよ。年末調整関係書類の記入に要する平均時間に我が社の従業員数を掛けて作業時間を算出し、それに見合う人員を削減したと言っていましたから。」

「本当にそうなのかな。」

「イヤですよ。端数が余っているはずだなんてせこい話を持ち出されても。」

「そうじゃない。現場の作業員が書類のために使ってしまった時間で実現したはずの最終製品の価格で言っているんだ。もしくは、営業職員が使えなくなった時間で実現したはずのセールスで言っているんだ。給与課職員の合理化は、それに見合ったものだったのかな?」

「うっ、それは。」

「そうなんだ。給与課でさえ、こうやって考えれば現場に非常に大きな貢献をしている。連携しているんだ。これをうまく機能させることは大切なのではないか。」

「そう言われてみれば、確かに。」

「このように間接部門も会社の利益に貢献しているんだということを、忘れて欲しくないな。その貢献を増やすための知恵を出してもらいたいところだ。」

「仰る意味、わかりました。それが、間接部門の連携を推進するということなのですね。」

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

「世界の先進国では日本だけが一人負け」という話を聞くことがあります。世界が日本を羨んだ “Japan as No.1” からまだ40年ほどしか経っていないのに、当時、途上国といわれていた幾つかの国々の後塵を拝している現状です。

それを打開する方法の一つに、マネジメントを高度化していくことがあると思われます。日本のホワイトカラーの生産性は先進国では最低だといわれていますが、逆に言えば、マネジメントを改善すれば成果を飛躍的に伸ばすことができる可能性があります。

筆者は Bond-BBT MBA でMCS(マネジメント・コントロール・システム)論を学んで以来、マネジメントでもって企業の業績をあげる方法について研究してきました。マネジメントを合理的に考え直し、システムとして組み直すのです。StrateCutionsで行うマネジメント支援の理論的背景や方法論を、お知り頂ければと考えています。


Webサイト:StrateCutions

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