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マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>

第32回

現場マネジャーの役割(矛盾解消)(上編)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「現場マネジャーの役割について、お話を伺っているところです。前回、戦略対応についてのご説明の中で、トラブル対応についてはこれから詳しくお話し頂けるということでした。」

「それについて、説明しようと思う。現場には数多くのトラブル、もっと広く捉えると、仕事を行う上での矛盾が発生しているからな。」

「仰る通りです。現場は大変なんですよ。今の仕事でパフォーマンスを上げろと言われるだけでもかなりの苦労なのに、戦略にも対応しろだの、他と連携しろだのと言われるのですから。」

「まさにそうなんだ。現場に与えられた仕事で最高のパフォーマンスを上げることと、経営戦略に対応すること、そして他部門と連携することなどを同時に実現しようとすると、どうしても矛盾することが生じてくる。」

「放っておく訳にはいきませんね。」

「だからマネジャーの役割として、次に、矛盾に対応することが求められることになる。」

「納得です。」

「矛盾に対応すると、一口でいいますが、それはそれは大変なことですよね。どうやって実現すれば良いのでしょうか?」

「そうだな。これについては、確たる理論が打ち立てられている訳ではないのだけれど・・・。」

「けれど・・・。三上部長なりの意見があるということですね。」

「そうなんだが・・・。」

「是非、聞かせてください。」


矛盾する目標を整理して伝える

「先ずは、矛盾する目標を整理して伝えることから始めることになるんだろうなと考えている。」

「それはどういう意味ですか?『整理して伝える』とは。」

「現場で部下に指示する時のことを考えてみて欲しい。品質管理担当から『最近、製品のばらつきが多くて顧客から苦情が出ている。公差以内に収めるのはもちろんだが、できるだけばらつきのないように仕事して欲しい』との指示があったとする。」

「よくあることですね。その通り伝えて、標準作業の徹底します。」

「すると翌日、今度は営業部門から『納期が早まった。対応して欲しい』と依頼があったとする。」

「これもよくあることです。その通り伝えます。」

「すると部下から『標準作業の徹底を指示しておきながら納期の前倒しを命令するなんて、おかしい。納期前倒しは断るべきだった』という不満が上がったとする。そういう場合、どうする?」

「部下の気持ちも分かりますけどね。でも、両方に対応しなければ顧客を失うかもしれません。是非とも対応しれもらわなければ。」

「そうなんだ。その時に『不満を言っていないで仕事しろ!』なんて言ったら、どうなる?」

「現場の不満は溜まりますね。度重なると、大変なことになるかもしれません。」

「そうなんだ。とすると、これら矛盾する要求を整理して伝えるしかない。『クレームを避けるために標準作業は徹底して欲しい。そして、顧客要望に対応するために納期を前倒しして欲しい。どちらも顧客を失わないために必要なんだ』と。」

「そうか、その辺を整理しないでさみだれに言うと『昨日は品質改善を言い、今日は納期短縮を言う。実はどちらが大切なんだ?方針にブレがあるのではないか?取り合わないでおこう』と受け取られてしまう訳ですね。」

「そういうことなんだ。」


マネジャーが矛盾を解消して現場に伝える

「でも、そんなことをしたら、現場は困惑してしまいませんか?つまり、矛盾を解消する方法を考えるあまり普通の仕事もできなくなる。2兎を追う者、1兎も得ずと言うではないですか。それが現実になりそうです。」

「その心配は、確かにあるな。だからこそ、現場マネジャーには、頑張って欲しいことがある。」

「それは何ですか?」

「前にも言った、知的外段取りだ。」

「ああ、現場の働き手が価値を生む仕事に集中できるよう『段取り』に相当する仕事を現場マネジャーが行うということでしたね。」

「よく覚えていたな。その通りだよ。」

「先ほどの品質改善と納期前倒しの例でいえば、品質改善はマニュアルの改訂やトレーニング、納期前倒しは急ぎでない作業の洗い出しとそれら作業のリスケジュールで対応すると決められるかもしれない。」

「確かに。対応について一から協議するというのは意外と時間がかかりますからね。リーダーが予め案を作成しておけば、会議に出席する関係者の厖大な時間を節約できるかもしれません。」

「その通りだ。」

「そして、方針に沿った仕事に現場作業者が集中できるよう関係者との根回しを済ましておけば、仕事の効率も上がるし、成功の可能性も上がるでしょう。」

「そうなんだ。矛盾する課題については現場マネジャーが知的外段取りをして案を考えておく。現場マネジャーができる根回しなどは自分で行っておく。これらを励行する現場マネジャーがいる部署とそうでない部署では、パフォーマンスが大きく違うだろう。」

「本当に、仰る通りです。」

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

「世界の先進国では日本だけが一人負け」という話を聞くことがあります。世界が日本を羨んだ “Japan as No.1” からまだ40年ほどしか経っていないのに、当時、途上国といわれていた幾つかの国々の後塵を拝している現状です。

それを打開する方法の一つに、マネジメントを高度化していくことがあると思われます。日本のホワイトカラーの生産性は先進国では最低だといわれていますが、逆に言えば、マネジメントを改善すれば成果を飛躍的に伸ばすことができる可能性があります。

筆者は Bond-BBT MBA でMCS(マネジメント・コントロール・システム)論を学んで以来、マネジメントでもって企業の業績をあげる方法について研究してきました。マネジメントを合理的に考え直し、システムとして組み直すのです。StrateCutionsで行うマネジメント支援の理論的背景や方法論を、お知り頂ければと考えています。


Webサイト:StrateCutions

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