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マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>

第34回

現場マネジャーの役割(矛盾解消)(後編)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「組織を運営する上で必ずと言って良いほど生じる矛盾について、それへの対処の多くは現場マネジャーに期待されているというお話しでした。」

「大切なことだからな、覚えておいてくれよ。」

「その必要性は確かに感じるのですが、それをマネジメントで解消するというのは、どういう意味なのでしょうか?矛盾を解消するのは、どちらかという高度に知的な思考の賜物で、部下をマネジメントすることによって生まれるというものではないと思うのですが。」

「例えばどんな場面を想定している?」

「よくあるのは、納期を短縮しながら品質を改善しろという要求です。コストを下げながら品質改善しろという場合もありますね。」


矛盾に知的思考で解消する

「なるほど。それを知的思考で対処するとは、どういう意味だ?」

「以前に、知的外段取りの話をして頂きました。例えば納期を短縮しながら品質も改善する、そういう手順を自分で考えるという意味です。」

「それは良い方法だな。中川課長は、いつもそうしているのか?」

「そういうと、自分で自分の首を絞めてしまうのですよね。もちろん、いつもできる訳ではありませんが、頑張っていますよ。」

「悲観することはないよ。どんなマネジャーだって、自分で矛盾を全て解消できる訳ではない。だから、マネジメントが必要になる訳だ。」

「まあ、そうなんですが。」


矛盾をマネジメントで解消する

「現場のことを一番よく知っているのは、現場だ。現場マネジャーも手が出ないようなシビアな問題に立ち向かってもらうためには、現場の手を借りるしかない。」

「確かにそうですね。製造コスト削減と品質改善を同時に実現するというのは、まさにシビアな問題でです。現場マネジャーができることは限られていると思います。」

「だから、現場の働き手の手を借りなければならない。」

「しかしそう簡単に、人は動いてくれますかね。日常の仕事とは別に取り組んでもらわなければなりませんが、日常の仕事にもノルマがあります。そう簡単に取り組んでくれるとは思えません。」

「だから、現場の働き手が矛盾解決に取り組んでくれるように、マネジメントすることが肝心になるんだ。」

「なるほど。で、どのように行うのですか?」


明確な役割を与えてモチベートする

「コストと品質という矛盾した課題に対処するモチベーションをもってもらえるよう、仕向けることができるだろうな。」

「例えば?」

「いろいろ、策はあると思う。第1に、明確な役割を現場に与える方法だ。」

「わかったような気がします。『矛盾への対処も仕事のうち』と、しっかりと認識してもらうということですね。」

「そうなんだ。自分がまだ平社員だった頃、上司の言葉が指示・命令なのか、アドバイスなのか、感想なのか、とても注意深く気にしていた記憶がある。全てを感想やアドバイスだと思って対応していたら大切な指示や命令を無視してしまう可能性がある一方で、全てが指示や命令だと思って対応していたのではこっちの身が保たない。」

「私も、それは気にしていましたね。だからこそ、矛盾への対応を『なんとかできたら良いな』なんて感想のように伝えるのではなく、『是非、ここで対処しよう』という指示として伝えることが大切なのですね。」

「そうなんだ。そうやってマネジャーが腹をくくれば、部下も腹をくくってくれるだろう。」

「なるほど、分かりました。他にもあるのですか?」


マネジメントを複数に分割する

「第2は、マネジメントを複数に分割することではないかと思う。」

「何ですか?その、マネジメントを分割するとは。」

「例えばコストが高騰してしまう原因として、何が挙げられると思う?」

「いろいろありますが、私が現場にいた時の実感では、機械の故障による作業のストップが挙げられると思います。」

「そうだな。そして品質低下の原因は?」

「これは、もう、雑な作業としか言いようがないですね。」

「さて、今の例からすると、矛盾する問題への対処を求める相手として『現場の働き手』一つに集中する必要はないのではないか?」

「それはどういう意味ですか?」

「今は機械のメンテナンスを作業者自身にやらせているから、コストと品質が矛盾してしまったんだ。これを、機械のメンテナンスは設備課に依頼することにすれば、両者は矛盾しない。設備課がコスト、作業員が品質を担うという構図になるからだ。」

「なるほど。社内の根回しは大変でしょうけれどね。」


評価・報酬を活用する

「そして第3は、評価・報酬を活用する方法だ。」

「どうやるのですか?」

「例えば、一つの課題を解決したら報酬を与えるのはもちろんのこと、もう一つの矛盾する課題も同時に解決したらもっと大きな報酬を与えるという方法がある。」

「なるほど。コストまたは品質のどちらかを達成したらボーナスを10万円出すけど、両方同時に達成したら50万円出すことにするのですね。」

「そうなんだ。これくらい差をつければ、一方だけでなく両方を狙ってみようという気に、なると思うのだが。」

「確かに!私が三上部長の部下だった時、結構難しい矛盾した課題の解決に貢献したと記憶しています。あの時に、この制度があれば良かったのにと思います。」

「そういうこともあったかな。残念だったな。」

「それだけですか!」

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

「世界の先進国では日本だけが一人負け」という話を聞くことがあります。世界が日本を羨んだ “Japan as No.1” からまだ40年ほどしか経っていないのに、当時、途上国といわれていた幾つかの国々の後塵を拝している現状です。

それを打開する方法の一つに、マネジメントを高度化していくことがあると思われます。日本のホワイトカラーの生産性は先進国では最低だといわれていますが、逆に言えば、マネジメントを改善すれば成果を飛躍的に伸ばすことができる可能性があります。

筆者は Bond-BBT MBA でMCS(マネジメント・コントロール・システム)論を学んで以来、マネジメントでもって企業の業績をあげる方法について研究してきました。マネジメントを合理的に考え直し、システムとして組み直すのです。StrateCutionsで行うマネジメント支援の理論的背景や方法論を、お知り頂ければと考えています。


Webサイト:StrateCutions

マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>

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