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マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>

第36回

現場マネジャーの役割(環境整備)(後編)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「現場マネジャーの役割の最後として、環境整備についてお聞きしているところです。」

「マネジャーには、自分のマネジメントが成功するために必要な環境要因があるとすれば、それを整備することも役目として果たさなければならないということだ。」

「そう言われてみると『できる上司』はここで差を付けているいるようですね。」

「そうなんだ。でも、この役割はあまり表立って言われることがなかった。だから俺は『マネジメントには環境整備も含まれるんだよ』と公言することで、皆に注目してもらいたいんだ。」

「そのお気持ち、分かりました。」


マネジメントの表現方法を工夫する

「その環境整備について、先回は一例として根回ししておくことが挙げられていました。他には、ないのですか?」

「いろいろあるぞ。まず、マネジメントの表現方法を工夫することが挙げられるだろう。」

「はぁ?」

「確かに、分かり難い表現だよな。例えばで話をしよう。中川課長が上司から、今手がけている作業に一区切りついたら自分のところに来るようにと指示されたとしよう。その一区切りとはどういう意味なんだろう。自分で区切りだと思うところまで続ければ良いのだろうか?」

「それでは、多くの場合、『なぜすぐ来ないんだ』って怒られますね。特に、三上部長の場合には。」

「そうなんだ。それは、俺の言う『一区切り付けて』というのは、『今、持っている鉛筆を放り出して、すぐに来い』というほどではない。『読点まで書き終え、きちんと鉛筆を机にしまうまで待つぞ』という意味だからだ。」

「今時、鉛筆で仕事してる担当者はいないと思いますが、パソコン作業でも同じだと言いたいのですね。その趣旨は、何ですか?」

「マネジャーは、自分の言葉の意味を明確にすることによって、そのマネジメントの効果を高めることができる。そう言うことだ。」

「三上部長が言われる『一区切り』とは『読点までタイプし終えたら』という意味だと、明らかにするわけですね。」

「まあ、ものの例えだがな。日頃のマネジメントで、今言ったような曖昧さが残るような指示を出すと、きちんと趣旨を理解してもらえるような言い方をすることによって、マネジメントの効果を高めることができるだろう。」


マネジメントを可視化しておく

「お話としては、了解しました。でも、これだけですか。」

「今の話を切り口に、発展させて考えることはできないか?」

「うーん。」

「先ほどの続きだ。上司の席に行くと、あるプロジェクトの進展が思わしくなく、緊急に立て直してくれという指示を受けた。しかしそれは、中川課長が関わったことのないプロジェクトだ。そういう時、どうする?」

「困りますね。緊急だと言われても、すぐに対応することはできません。」

「そんな時、プロジェクトの概要やリーダー、コアメンバーなどに関する一連の資料を渡されたら、どうだ?」

「ずいぶん助かります。」

「部の中で毎月など定期的に進捗会議があり、部内の全てのプロジェクトの状況について情報が共有されていると、どうだ?それらの資料も渡されたら。」

「既存メンバーと、資料的には横並びということでしょうか。」

「更に、そのポイントが、部内のどこからでも見える掲示板に張り出されていたらどうだろう。」

「そこまでされると、自分が関わっていないプロジェクトだとしても、状況に関心を持っていないと部内のマネジャーとして失格だと言われてしまいそうですね。」

「そうなんだ。今のように、指示を口頭ではなく書面で提示する、いつも情報を共有できるようなミーティングを開催する、リアルタウムの情報に注意を向けさせる掲示板を用意するなどすることによって、マネジメントの効果をどんどん向上させていくことができる。」

「確かにそうですね。」

「俺はこれを『マネジメントの可視化』と言っている。」

「なるほど。その通りですね。さりとてマネジメントの可視化は、そのものがマネジメントだという訳ではなさそうです。」

「そうなんだ。だから俺は、この辺のことを『マネジメントの環境整備』と言うべきではないかと思っている。」

「なるほど。このような取組みは、優秀なマネジャーだったら取り入れているようですね。」

「そうなんだ。だからこれらもマネジャーの仕事だときちんと掲げることによって、より多くのマネジャーが取り組んでくれると思う。それを、期待したいんだ。」

「分かりました。」

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

「世界の先進国では日本だけが一人負け」という話を聞くことがあります。世界が日本を羨んだ “Japan as No.1” からまだ40年ほどしか経っていないのに、当時、途上国といわれていた幾つかの国々の後塵を拝している現状です。

それを打開する方法の一つに、マネジメントを高度化していくことがあると思われます。日本のホワイトカラーの生産性は先進国では最低だといわれていますが、逆に言えば、マネジメントを改善すれば成果を飛躍的に伸ばすことができる可能性があります。

筆者は Bond-BBT MBA でMCS(マネジメント・コントロール・システム)論を学んで以来、マネジメントでもって企業の業績をあげる方法について研究してきました。マネジメントを合理的に考え直し、システムとして組み直すのです。StrateCutionsで行うマネジメント支援の理論的背景や方法論を、お知り頂ければと考えています。


Webサイト:StrateCutions

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