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マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>

第50回

本シリーズの総括(後編)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「約一年、現場マネジャーのマネジメントについて考えて来た。組織戦略室では評価項目に『現場の働き手をサポートしたか?』という項目を付け加えた。中川課長としては、次に研修制度や評価報酬制度の改革に繋げていきたいと思っているようだが、上層部はそれにOKを出さない。そういう状況のようだな。」

「そうなんです。」

「その理由として、中川課長は上層部の頭が固いことを挙げた。もちろん、それもあるだろう。しかしそう決めつけたのでは一歩も前に進まない。では、どうすれば良いのだろう?」

「どうすれば良いのでしょう?」


マネジメントの実行方法を明確化する

「これについては、もしかしたら、中川課長はすでに答えを持っているのかもしれない、と思っている。」

「私は答えを持っているですって!?どうしてそう思うのですか?」

「先週、中川課長は、本格的に現場マネジメント改革に取り組むに当たってのポイントとして、大きく2つあると言ったよな。」

「はい、言いました。」

「一つ目は、現場マネジャーの役割を明確化することだった。」

「そうです。」

「では2つ目は?」

「あ、そうか。」

「だから何?」

「役割を果たすために自分が何をできるかを、きちんと認識することです。」

「そう、実行方法だ。」

「そうか。役割を求めるだけでなく、その方法もセットにして伝える必要があると言うことですね。」

「そうなんだ。」


マネジメントの方法

「それで、マネジメントの方法として大きく分けて、何があった?」

「アクション・コントロール、リザルト・コントロールそしてピープル・コントロールです。」

「よく覚えていたな。今度はメモを使わず言えたではないか。」

「まあ、最近に教えてもらいましたしね。それにアクション、リザルト、ピープルという言葉は、耳慣れない分、覚えると忘れません。」

「そうだな。俺もそうだったよ。」


3つのコントロール

「そこまですらすら言えるなら、大丈夫だと思うのだが、確認のため、アクション・コントロール、リザルト・コントロールそしてピープル・コントロールとは何か、復習してみよう。」

「アクション・コントロールとは、行って欲しいこと、もしくは行って欲しくないことを伝えて促したり動機付ける、時には強制することでしたね。」

「そうだ。会社が予め行って欲しいこと、もしくは行って欲しくないことを定め、それをさせていくというコントロールだな。次は?」

「2番目の方法はリザルト・コントロールですね。ノルマでコントロールすることでした。」

「まあ、最近はノルマといった方が分かりやすいかもしれないな。言葉の意味からすると、働き手が生み出した成果を基準にコントロールすることだ。」

「会社が予め望ましい成果を定義できることが前提でしたね。」

「よく覚えていたな。では、その勢いで3つ目もいこう。」

「3番目はピープルコントロールでした。人の性質、『人とは、こんな時にはこんなふうに考え、行動するものだ』という考察に基づくコントロールといえます。」

「そうだ。より適切に仕事してくれるよう、環境整備することだと言えるかもしれないな。」


マネジメントをシステムとして作り上げていく

「つまり三上部長は、我が社にMCSに基づいたマネジメントを浸透させるためには、現場マネジャーの役割だけでなく、その方法論も伝えていかなければならないと言いたいわけですね。」

「そう言うことだ。」

「それでMCSが完成するのですね。」

「いや、それは少し違う。もう一歩『システム化』が必要なんだ。」

「システム化ですか?」

「だって、MCSだろう。マネジメント・コントロール・システムなんだよ。」


システム化とは

「それでは、MCSを完成させるためには、何をすれば良いのですか?」

「それは昔、教えたのだけどな。まあ、忘れたのだろうな。」

「はい、はっきりいって、忘れました。」

「随分、気持ちよく肯定するではないか。」

「と言うことで、教えてください。」

「マネジメント・コントロールのシステム化とは、『担当者を決めて』『役割を与え』『うまくいかなかった場合には措置ができる』ような仕組みを構築することだ。」

「なんとなく、そういえば、昔々に教わったような。」


マネジメントの階層化

「だったら思い出さないか。マネジメント・コントロールのシステム化は、マネジメントを階層化することにより実現する。」

「なんとなく思い出したような、やっぱり思い出せないような。」

「現場マネジャーには現場のマネジメントを行うという役割を与え、フィードバックして改善してもらう。そこに、より上位階層にあるマネジャーが関与して、配下マネジャーが上手くマネジメントできなかった場合には、上位階層にあるマネジャーがフィードバックして配下マネジャーのマネジメントを改善させていく。それを行う仕組みがマネジメント・コントロール・システムなんだ。」

「何となく、思い出したような気がします。」

「なんだったら、そちらの方も伝授しようか?」

「是非ともと言いたいところですが、また今度にしてください。」

「分かったよ。気が向いた時に聞いてくれ。俺が退職しないうちにな。」

「そうさせて頂きます。」



読者の皆さん。

長らく「マネジメントを再考してみる<現場マネジメント編>」をお読みいただき、どうもありがとうございました。約一年にわたって、MCS論をもとに現場マネジメントについて考えてみました。お役に立つことが少しでもありましたら、筆者としてこれに勝る喜びはありません。

ご覧頂いた皆さんはお察し頂けたのではないかと思いますが、筆者は、「日本のマネジメントはなっていないから、海外のマネジメントを導入するように」という趣旨で、このシリーズを書いた訳ではありません。日本のマネジメントは、海外から手本にされるくらい優秀なマネジメントです。それは、今も変わらないと思います。

一方でマネジメントの成果とすると、日本は欧米に一歩も二歩も遅れを取っているように感じられます。それはなぜか?欧米は、自分たちのマネジメントに日本のマネジメントの良い点を加え、ブラッシュアップしたからではないかと思います。しかし一方で、日本は欧米のマネジメントを取り入れてブラッシュアップするということが、少ないように感じられます。本シリーズは、それを行う試みとして、発行させて頂きました。

約一年の連載でMCSの現場マネジメントに関わる部分をご説明してきました。新年度からは、上級マネジメントに関わる部分をご説明していきたいと考えています。

新年度に入った4月7日から新シリーズ「マネジメントを再考してみた<上級マネジメント編>」を発行致します。

次シリーズを楽しみにして頂けると幸いです。
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

「世界の先進国では日本だけが一人負け」という話を聞くことがあります。世界が日本を羨んだ “Japan as No.1” からまだ40年ほどしか経っていないのに、当時、途上国といわれていた幾つかの国々の後塵を拝している現状です。

それを打開する方法の一つに、マネジメントを高度化していくことがあると思われます。日本のホワイトカラーの生産性は先進国では最低だといわれていますが、逆に言えば、マネジメントを改善すれば成果を飛躍的に伸ばすことができる可能性があります。

筆者は Bond-BBT MBA でMCS(マネジメント・コントロール・システム)論を学んで以来、マネジメントでもって企業の業績をあげる方法について研究してきました。マネジメントを合理的に考え直し、システムとして組み直すのです。StrateCutionsで行うマネジメント支援の理論的背景や方法論を、お知り頂ければと考えています。


Webサイト:StrateCutions

マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>

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