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マネジメントを再考してみる 後編<上級マネジメント>

第4回

上級マネジャーとは

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「ところで、ここで基本的なことをお聞きして良いですか?」

「何だ?」

「三上取締役が言っておられる『上級マネジャー』の範疇なんです。私は上級マネジャーとは、最初、役員のことかと思っていました。でも、部長のことなんですよね。では、役員はどうなるのでしょうか?」

「うん。そこを明らかにしておくのは、大切なことだな。良いことに気がついたな。」

「お褒めにあずかって、光栄です。」


現場マネジャーをマネジメントする階層

「上級マネジャーとは、いくつかの階層にまたがる概念なんだ。」

「はい。」

「その下限は、現場マネジャーを直接にマネジメントする階層だ。」

「だから部長なんですね。」

「そうなんだ。」


経営陣との曖昧な境界線

「一方で、上限は、日本では曖昧な概念だろうな。」

「どういう意味ですか?」

「上級マネジャーの上にある階層は、何だ?」

「藪から棒ですね。でも、何でしょう?」

「経営陣に決まっているじゃないか。」

「あ、そうでした。」

「その経営陣は、具体的には誰のことだ?」

「社長、副社長、専務、常務、そして取締役でしょうか?」

「そうだな。ロジカルには、それが答えだろう。」

「えっ、『ロジカルには、それが答え』どういう意味ですか?」

「俺は、取締役だが経営陣か?」

「そうではないのですか?」

「俺は営業本部長だが。」

「それが何か。」

「営業本部長というのは、経営階層の下限なのか?それとも上級マネジャーの上限なのか?」

「あ、そうですね。そう言われてみると、上級マネジャーの上限のような気がしてきました。」

「全てが全て、そうは言えないのかもしれないが、我が社の場合、営業本部長は上級マネジャーの上限に当たると思う。そして俺は、経営陣である取締役でもある。」

「なるほど。微妙なポジションですね。」

「こういう状況を微妙というべきかは意見が分かれると思うが。まあ、曖昧な状況と言わざるを得ないだろうな。」


経営陣の下で、現場マネジャーをマネジメントする階層

「今言ったように、日本では、特に経営陣との線引きでは微妙なところがある。もとい、曖昧なところがあるが、上級マネジャーとは、経営陣と現場マネジャーの間にあって、現場マネジャーをマネジメントする階層のことを指すんだ。」

「なるほど。わかりました。が、新たな疑問が生まれてきました。」

「何だ?」

「何で、そんな複雑な階層を取るのでしょうか?上級マネジャーなんて中間層を作らないで、経営陣が直接に現場マネジャーを指揮すれば良いではないですか?」

「そうだな。」

「一時、組織のフラット化という言葉が流行りました。上級マネジャーは、それに逆行する概念なのではないですか?」

「そうか、中川部長は、そう考えるのか?」

「何ですか?そんな、しんみりと感想を述べるなんて。」


「現場マネジャーのマネジメント」という特別な役割

「経営陣が現場マネジャーをマネジメントすれば良いという話。確かにもっともな時もあるよな。」

「三上取締役がそう言われるとは『そうでない時が多い』という含みがある訳ですよね。」

「深読みするなあ。でも、その通りだ。」

「どういう時、経営陣が現場マネジャーをマネジメントできないのですか?」

「経営陣が、現場マネジャーをマネジメントしきれない時だよ。」

「何か、煙に巻かれたような気がします。」


戦略のブレークダウン機能

「では聞いてみよう。経営陣が『これからは高級化路線』という戦略を打ち出したとする。但し、高級化路線なんて抽象的な言葉では現場は動きようがない。もっと具体的な指示でなければならないし、他部門と整合性があっていなければならない。」

「そうですね。高級化路線と言っても、現在のラインナップを基本に品質を向上させるのか、もしくは例えばヨーロッパやアメリカのテイストを取り入れた製品にランナップを変更するのかで、大きく違ってくると思います。」

「製造部は品質改善で、営業部がラインナップ変更だと考えていたら、どうなる?」

「困ったことですね。」

「実際、そうはならないのは、上級マネジャーがそういう調整を行いながら、戦略を現場にブレークダウンしているからだ。」

「なるほど。」


現場マネジャーのマネジメントという特別な仕事

「そしてもう一つ。」

「もう一つ?」

「戦略が適切にブレークダウンされて現場に指示されたとしよう。それに対応して現場が仕事ぶりを、何がしか変えようと計画したとする。さて、その計画が適切かどうか、経営陣に判断できるか?」

「それは無理そうですね。」

「仮に計画を承認されて実行されたとしよう。が、思ったようなパフォーマンスをあげられなかったとする。計画が悪いのか、実行が不適切なのか、判断つくか?」

「それも、無理でしょうね。」

「そんなことで、現場マネジャーをマネジメントできるか?」

「それは無理ですね。」

「そうなんだ。現場マネジャーをマネジメントするとは、経営、ここでは経営戦略を策定することとしておくが、それとは違った仕事なんだ。兼務させて、うまくいくことは少ないだろう。」

「なるほど。だから経営陣と現場マネジャーの間に、上級マネジャーという階層を介在させるのですね。」

「そうなんだ。」


 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

昨年まで、現場マネジャーが行うマネジメントについて、世界標準のマネジメント理論である「MCS(マネジメント・コントロール・システム)論」をベースに考えてきました。日本では「マネジメント」について省みることがほとんどないようですが、世界では「マネジメントとはこういうものだ」という姿がきちんと描かれていて、それを学ぶように促されています。日本のホワイトカラーの生産性が低迷している原因は、もしかしたら、このあたりにあるのかもしれません。

昨年度は約1年かけて、現場マネジャーのマネジメントについて考えてきました。現場マネジャーは、現場で働く人たちが高いパフォーマンスをあげられるよう促すマネジメントを行なっています。一方で現場マネジャーも、マネジメントを受けます。現場マネジャーが行うマネジメントが現場の力をあますところなく引き出しているか、企業として目指す方針や戦略を実現できるよう導いているかという観点でのマネジメントを必要としているのです。

今年度は、連続コラム「マネジメントを再考してみる」の後編として、上級マネジメント(上級マネジャーの行うマネジメント)についてMCS論をベースに考えます。上級マネジャーがどんな役割を担っているか、それをどのように果たしていくかについて、体系的にご説明します。 企業パフォーマンスを向上させる世界標準のマネジメントに関する解説は、日本初の試みです。是非、お楽しみください。


Webサイト:StrateCutions

マネジメントを再考してみる 後編<上級マネジメント>

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