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有限会社昭和プレス 取締役 高久 笑一氏
町の板金屋さんからアイデア発信。目指すはアウトドア用焚き火グリルのトップブランド

取材日:2013年1月28日


有限会社昭和プレス 代表取締役 高久 笑一氏
(ソルトレイクで開催されたアウトドアリテーラーショーにて)

自社ブランドsho's(笑's)が話題ですが、どのような経緯で立ち上げられたのですか
 弊社は父の代からプレス屋その他、鉄を切ったり曲げたりといういわゆる板金業を行い、今年でちょうど50年目を迎えます。 2006年頃から父は代表取締役会長、私は取締役社長として切り盛りすることになりました。自社ブランドを立ち上げようと思ったきっかけは、2008年のリーマンショックです。もともと金属加工の仕事というのは、お客様次第で仕事量が左右されます。自社のオリジナル製品を製造販売してみたいという想いは、ずっと温めていましたが、皮肉にもリーマンショックで実現しました。この時は、本当に大変で、売上げが5分の1にまで落ち込みました。それでも固定費はかかってくるわけで、廃業寸前まで追い込まれました。
 私自身、アウトドアが大好きで1人でもほぼ毎週末キャンプするほどなのですが、板金の仕事で生じる端材で自分用に焚き火台などを自作していました。その仕上りの評判が良く、友人からも作って欲しいとオーダーを受けたりしていましたので、アウトドア用の焚き火グリルをオリジナル製品として売ることにしました。販売第1号は、笑's コンパクト焚き火グリル 『ちび火君』です。コンパクトなうえに折りたためること、また丁番や溶接を一切使わず、組立にネジや工具も不要というところが特徴で組み立てても高さ24cm、重さも約1.3kgです。

◆収納サイズ: 約150mm×150mm×40mm
◆組立サイズ: 約212mm×212mm×240mm
◆重量   : 約1.3kg
◆材料   : 1mm厚ステンレス・アルミリベット
◆静止耐荷重: 60kg

 そうして、リーマンショックがあった2008年の12月に自社ホームページにカート機能をつけてこの「ちび火君」の販売を開始しました。ところが、最初は全く売れませんでした。少しづつ売れてきたのは、翌年2009年の6月頃からでアウトドア系雑誌、2誌(ガルヴィ(GARRRV)、BE-PAL)に取り上げてもらったことが大きかったと思います。そうして、今では自社製品の数は40種類近く、おかげさまで2012年には、黒字に回復しました。売上げの割合は、既存の板金業が70%、オリジナル商品は30%ですが「やりがい」は感じています。既存の仕事では、お客様から頂いた図面に従って加工し納めるわけですが、丁寧に検査して良品を納品してもそれは「出来てあたりまえ」の評価です。しかしながら、オリジナル製品を納めた先からは、「ありがとうございます。」というお声が直接届きます。そんなところが「やりがい」に繋がっていくのかなと思います。
グリルをはじめとする焚き火台は、確かにオンリーワンな商品ですが、
 アイデアはどのようにして生み出されたのですか?
 先ほどもお話したように、自分自身がキャンプをしていて「欲しいな。必要だな。」と思ったものを商品化しているということが中心です。あと、同じようにキャンプを頻繁にする友人などの利用者の声を参考にしています。例えば、販売2号商品の焚き火グリル『B-6君』という商品は、バイクに荷物を載せて1人でキャンプする友人が、もっとコンパクトで軽量の「焚き火グリル」欲しいということで作りました。重さは500gです。ところが、これでも重いという方も居たので続いて作ったのがコンパクト焚き火グリル 『B-6君ti』これは、チタニウム製で263gです。

【焚き火グリル『B-6君』】          【焚き火グリル 『B-6君ti』】

 この「焚き火グリル」を作ろうと思ったのは、現在ほとんどのキャンプ場が焚き火(直火)禁止だからです。私はどうしても焚き火で調理がしたかったのです。ですから、弊社の焚き火グリルは地面にローインパクト、またどの商品にも薪を足せる扉が付いています。焚き火は、エコなんです。山の木々を拾ってきて燃料にするから無料ですし、環境にも優しい。焼却されることで二酸化炭素が大気中に戻る。若木はそれを吸収します、燃えかすの灰は地中に入るといったカーボンニュートラル(CO2循環型エネルギー)な活動です。世界中でキャンプはしているのになぜ、この「焚き火」をもっと利用しないのかと思っています。利用者の声といえば、2011年東日本大震災の後、東北の方から焚き火ストーブのオーダーがありました。余震のたびに山に逃げなくてはいけないので車に積めるストーブが欲しいということで、私たちの折りたたみのストーブをご希望されていました。注文があった時期はまだ配送業者も現地までお届することが出来ず、行くことが可能な近隣までお届けしたということがありました。


【笑'sフォールディング薪ストーブ 焚き火の箱Gスペシャル本体(折りたたみ可)】

 このように、移動が容易にでき、大きな耐熱ガラス入り、更に煙突まで折りたためる薪ストーブは、いまのところ世界でも弊社以外に例がありません。もう1つ利用者の声の話をするならば、2012年8月 ソルトレイクで開催されたアウトドアリテーラーショーというアウトドアグッズの大きなイベントに出展しました。「アメリカに出すならば大きいものでないと相手にされないよ」と周りにいわれて望んだのですが、ソルトレイクでは、ザック1つで移動するいわゆるバックパッカー人口が多く重量約76gという超軽量小型ウッドストーブが人気でした。


【笑's チタンBPウッドストーブ 『93ti』】(分解収納可)
今後の夢があれば教えて下さい
 私たちのような小さな製造業は、それぞれの得意分野を伸ばしていくべきだと思います。そうすれば「うちは出来ないけれど、あそこでは出来るよ」という形で、仕事を取り合うのではなく、連携し合える関係で、お互いの技術力も上がってすごいことが出来るのではないかと思います。値段の下げ合いという価格競争ではなく、技術力で仕事を取る。そんな形が理想です。弊社では、リーマンショック以降は、最低工賃は下回らないよう価格を下げずに頑張っています。
 夢としては、オリジナル商品の分野でシェアを取りたいです。世界中で「焚き火のグリルといえば(笑's)だよね」といわれるようなメーカーに成長させたいです。個人的には、いつかアラスカのデナリ国立公園にあるマッキンリーに登ってみたいと思っています。
インタビュー:河合 美智子

略歴

有限会社昭和プレス 代表取締役 高久 笑一氏

新幹線が走り東京オリンピックに沸いた昭和39年、珠のような男の子が産まれる。工場の二階で若い衆と共に暮らし、毎日両親の働く背中を見て育つ。その大変そうな背中を見て、『絶対に板金屋などにならない』と誓う。が、気が付いたらなっていた。

1962年10月 会社設立
2008年12月 笑's事業部発足
焚き火グリル『ちび火君』発売開始
2009年12月 GARRRV Gear of the Year 2009受賞
2011年 2月 ウルトラライト&スーパースリム焚き火グリル『B-6君チタニウム』発売開始
2012年 8月 ソルトレイク開催Outdoor Retailer Summer Market 初出展

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