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教育・書籍の著作権

図書館にまつわる著作権

弁理士の著作権情報室

利用者である私たちが、何気なく利用している図書館。実はそこにも、いろんな著作権が関係しています。今回は、そのうちからいくつかご紹介したいと思います。

図書館にまつわる著作権

1.どうして、図書館で本が借りられるの?


本(紙の本。以下同様)は本屋さんで販売されています。つまり私たちは、お金を支払って買うのが普通。そうでないと作家さんたちや編集者さんたちが食べていけませんから。でも、お金を払わずとも、図書館でならば本を借りる事ができますよね。何故なんでしょう?

まず、著作権法においては、「貸与権」という権利があります。権利者に無断で、著作物の複製物である本を貸与により公衆に提供することは、貸与権侵害になるので本来はNG。

でも、図書館は実は、教育基本法や社会教育法で、博物館と並ぶ「社会教育機関」であるとされています。そして、憲法まで話を戻すと、「知る権利」があります(憲法)。そのため、非営利かつ無料であるなど、一定の条件を満たす場合に限り、貸与権は働かないことになっています。これを、「権利制限」と言います。貸与権という本来あるはずの権利が、制限されているわけです。

なお、権利制限について、実際には細かく条件が定められていますので、確認が必要です。後述する、「頒布」や「本のコピー」などの場合の権利制限についても同様です。

ちなみに、コミックを有料で借りられるお店がありますよね? この場合は、「非営利かつ無料」ではないので権利制限にはなりません。つまり、貸与権者の許諾がないと公衆に貸与することはできません。そのため、レンタルコミック屋さんは、著作権者の許諾の下でレンタル業を行っています。今度、お店でコミックを借りた時に観察してみてください。出版物貸与権管理センターRRACのシールが、レンタルコミックに貼られていると思います。

2.映画のDVDを館外貸出してくれる図書館もあるけど、アレも非営利無料ならいいの?


結論としては合法でのサービス提供を公共図書館などが行っているのですが、その法的な枠組みは、実は、紙本の館外貸出とは全く別だったりします。

著作権法では、映画はまさに「映画の著作物」に分類されています。映画以外の著作物の場合は、譲渡権(売ったりあげたり)や貸与権(貸す)などが働くのですが、映画の著作物の場合は「頒布権」という権利が働きます。

頒布とは、「有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸与することをいい、映画の著作物又は映画の著作物において複製されている著作物にあつては、これらの著作物を公衆に提示することを目的として当該映画の著作物の複製物を譲渡し、又は貸与することを含むものとする。」と著作権法では定義されています。つまり、公衆への譲渡と貸与の、両方を含む概念なんですね。映画のDVDの館外貸出は、まさにこの「頒布」(のうちの、貸与の方)に該当するので、頒布権者の許諾無しには館外貸出を行うことは原則できません。そして、やはりここにも権利制限が関わってくるのですが、「権利制限となる条件」が、紙の本の場合とは違うのです。

映画以外の著作物の場合は、著作権法38条4項で、権利制限の条件が決められています。一方、映画の著作物の場合は、著作権法38条5項で、権利制限の条件が決められています。

映画の著作物の場合は、非営利の視聴覚教育施設等が行う行為であって、貸与の料金を受けず、さらに、「相当な額の補償金」を支払うなどしてはじめて、権利制限(つまり、権利者の明示許諾無しに、複製物を貸与により頒布することが可能)となっています。そのため、公共図書館は現状、館外貸出用の媒体を(基本的には一般市販価格より高い値段で)購入して、それを使って館外貸出を行っていたりします。

3.図書館で本のコピーを取るのは良いの?


はい、図書館員さんにお願いしてください。ただし、その本の半分まで(ものによっては全部OKの場合もあり)と言われています。

図書館員さんにお願いすると、本の一部のページをコピーして、渡してくれることがありますよね。著作物である本のコピーを取ることは、著作権法上の「複製」に該当します。そのため、複製権者の許諾無しにコピーをすると、複製権の侵害になります。

そしてここでも権利制限。図書館等が、利用者の求めに応じ、調査研究目的であり、非営利事業として行うのであれば、図書館資料を用いて著作物を複製することができます。ただし、実際の条件はもっと細かいので、ご確認ください。

4.図書館は利用者からお金を取っていいの?


公共図書館か、私立図書館かによって違います。

公共図書館には、いわゆる「非営利無料の原則」というものがあります。図書館法17条で、「公立図書館は、入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない。」と規定されているので、利用者から入館料などのお金を取ることはできません。

一方、私立図書館の場合は「非営利無料の原則」の適用は無いので、お金を取ることもできます。例えば1日〇〇円で居放題……といった私立図書館が実際にあります。ただし、お金を取る場合には、著作権法の関係で、いろいろと出来なくなることもあります。例えば、非営利無料の上映は権利制限となっているので合法なのですが、お金を取ってしまうと、この権利制限の適用が無くなるので、権利者の許諾が必要になります。

図書館には、ほかにもたくさん、著作権に関するアレコレがあります。何か疑問をお持ちになりましたら、弁理士に相談してみてくださいね。

令和5年度 日本弁理士会著作権委員会委員

弁理士 松田 真

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

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また、日本弁理士会各地域会の無料相談窓口でも相談を受け付けます。以下のHPからお申込みください。

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