――日本でも訴訟社会に備える必要があるのでしょうか
日本は、弁護士を使う人が少ないとか、そもそも海外と比べて訴訟の少ない国だと言われています。ところが訴訟が少ないからといって、日本が法的トラブルの少ない国かといえば、そうは思えません。
メディアでもオレオレ詐欺や悪徳商法といった消費者被害がよく報道されますが、去年の消費者庁の発表では、消費者被害に遭った人は940万人に上り、被害額は5.7兆億円と日本のGDPの1%近くに達しています。これからもわかる通り、けっして日本もトラブルが少ないわけではありません。
弁護士費用保険「Mikata」の加入者に配布される保険証(リーガルガード)とステッカー(リーガルステッカー)
司法制度改革の下で、弁護士の数を増やそうという政策がここ十数年行われ、地裁支部あたりの弁護士数がゼロまたは1人という「ゼロワン地域」は解消したものの、国民が弁護士を頼る機会がなかなか増えていません。当社ではこうした現状を踏まえ、ネックと言われる弁護士費用の問題を保険制度で解決していきます。もう1つは、啓蒙を通じて、何かトラブルがあっても安心して専門家のもとを訪れることができるような社会にしていくことを目指しています。
――そこで弁護士費用保険「Mikata」を開発されたのですね
ひとくちに法的トラブルと言ってもさまざまな種類があります。従来は、交通事故における弁護士費用の負担を軽減できる保険商品は発売されていましたが、その他の法的トラブルを補償する保険がありませんでした。たとえば当社の「Mikata」で言いますと、男女問題、離婚問題に始まり、最近増えている相続トラブル、投資トラブルなどの金銭がらみのトラブルに至るまで、非常に広範囲なケースで弁護士費用が補償されます。この保険に加入していただくことによって、仮に被害に遭っても、速やかに回復が図れることが特徴の1つです。
また「Mikata」は、そもそも弁護士サービスを身近にするための保険商品で、一般の方のように、トラブルがひどくなってから弁護士を訪ねるのではなく、保険に加入していること自体がトラブル抑止につながることも大きいですね。
たとえば加入者の方が、ガソリンスタンドで給油を受けたところ、店員さんのミスで給油ノズルが車に当たり、傷がついてしまった例があります。当初、店舗側は「うちの責任かどうかわからない」とまったく取り合ってくれませんでしたが、「Mikata」の保険証=写真=を提示したところ、店長さんがすぐに出てきて防犯カメラをチェックしていただき、弁償に応じてくれたということです。
お客様からの声として多いのは「弁護士保険に加入したことで、いつでも弁護士に相談できるということが牽制となり、保険を使うまでもなく、問題が解決しました」というものです。私どもの保険に加入していただくことで、弁護士費用のハードルが下がることもあり、いつでも弁護士に相談できる環境を持つことができます。それが法的トラブルを防ぐための抑止効果になるのです。
――TOKYO MXと神戸のサンテレビで放映されている「テリー伊藤のトラブルハンター」に、久米社長も出演されていますね
久米社長がレギュラー出演しているテレビ番組「テリー伊藤のトラブルハンター」。
毎週火曜日20:30~21:00にTOKYO MX、毎週水曜日20:54~21:24にサンテレビで放映中
法的トラブルが身近に起こってしまった時に、どう対処すればいいのかということを番組内で議論していきます。バラエティの要素も持たせつつ、法律の専門家の見解を通じて、楽しみながらトラブル対処のための処世術を学び、トラブルに遭わないための知識を身につけていただくことに寄与できたら、という思いでスタートした番組です。
――今後どんなことを手がけたいと考えていますか
プリベントホールディングス 代表取締役
くめ・けい 1973年、東京都生まれ。菱電エレベーター施設等に勤務後、2002年に独立し介護事業を開始。11年4月にプリベントホールディングスを設立。日本初の単独型弁護士費用保険「Mikata」を開発。13年7月に販売を開始し現在に至る
商品ラインナップの充実にはすでに取り組んでおり、お客様のニーズやご予算に合わせて、補償範囲を選択していただける商品を開発しています。また今後は、企業向けの保険商品開発も視野に入れています。現在、中小企業の約9割に顧問弁護士がいない状況であり、そこに企業向けの安価な弁護士保険が発売されれば、企業の法意識も変化してくるのではないかと考えています。
当社には「司法と国民の間にある大きな濠を埋める」という大きな理念があります。今、日本には8,000以上の法律が存在しますが、法律を知らないために権利を逃したり、損をしても「それを知らなかった人が悪い」という自己責任の下に法が運用されています。にもかかわらず日本では、専門家を身近にしている方が、一部の企業や富裕層に限られており、こうした状況はフェアではないと私どもは考えています。
「自分の目の前にはどんなリスクがあるのか」「これが自分の進むべきベストの選択なのか」といったことを、専門家の意見をもとにジャッジしていけるような環境が必要です。われわれが社会に生きていくうえで、少なくとも、専門家を身近にするということについては、日本国民全員が同じ土俵に立つべきだと思います。
会社概要
設立:2011年4月
資本金:25億3940万円
代表取締役:久米慶
従業員数:45名(連結)
本社:東京都日本橋人形町3-3-13 日本橋人形町フォレストビル8F
URL:http://preventhd.co.jp/