iPS細胞使う医薬品、日本発の一大産業に

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ヘリオス・鍵本忠尚社長

高齢化が進み、細胞の老化により引き起こされる慢性疾患が増えている。根本的な治療法が存在しない病気もあり、多くの人が世界中で苦しんでいる。こうした中、バイオベンチャーのヘリオスは人工多能性幹細胞(iPS細胞)から医薬品を製造し、難病の治療への貢献を目指す。鍵本忠尚社長は「iPSC再生医薬品を日本発の一大産業に育て上げる」と意気込む。

--眼科医だったが起業した

「臨床医として勤務していたとき、目の網膜の中心部分の黄斑が変化し、ものがゆがんでみえたり視力が低下する加齢黄斑変性の患者さんから、『孫の顔が見たいので直してほしい』と懇願された。しかし根本的な治療法がなく、医師としての自分の無力さを感じたことから、治療薬をつくろうと思い起業した。2005年に九州大学発ベンチャーとしてアキュメンバイオファーマ(のちにヘリオスに事業譲渡)を設立した。こうして眼科手術を容易にする眼科手術補助剤を開発した」

--加齢黄斑変性の治療薬に取り組んでいる

「最悪の場合、失明する病気で、今のところ根本的な治療法はない。そこで人体のさまざまな細胞に変化するiPS細胞を使って、目的の細胞を作成して移植するiPSC再生医薬品を治療薬として開発している。患者以外の第3者のドナーから提供される細胞を使うことにより、大量製造することでコストを下げ、安全性も確保する。臨床試験を17年に始め、20年の承認取得を目指している」

--開発のための体制は

「大手製薬会社である大日本住友製薬と共同開発契約を結んでいる。ほかに知財、製造、非臨床試験などをiPSアカデミアジャパン、ニコン、新日本科学など、世界で勝てる技術を持つ企業と強固なパートナーシップを構築して取り組んでいる」

--価格はどうなるのか

「数百万円から1000万円の間になると見込んでいる。現在、加齢黄斑変性の治療は抗VEGF薬を眼球に注射している。しかし1年以内に再発する人が非常に多く、その度に1回当たり20万円弱を負担しなければならない。しかしiPSC再生医薬品により、ある程度再発が抑えられる可能性がある」

--ほかの臓器への応用は

「昨年から横浜市立大学との共同研究を始め、肝臓など臓器分野の研究開発に着手している。経済産業省によると、国内再生医療市場規模は、20年は950億円だが30年には1兆円、50年には2兆5000億円へと拡大する見通しだ」(佐竹一秀)

                  ◇ 【プロフィル】鍵本忠尚

かぎもと・ただひさ 九大医学部卒。九大病院勤務を経て、2005年アキュメンバイオファーマ(のちにヘリオスに事業譲渡)を設立。11年2月ヘリオスを設立し、12年2月から現職。38歳。熊本県出身。

                   ◇

【会社概要】ヘリオス

▽本社=東京都港区浜松町2-4-1 世界貿易センタービル15階

▽設立=2011年2月

▽資本金=53億8038万円

▽従業員=42人(2015年9月末時点)

▽売上高=2億7900万円(2014年12月期)

▽事業内容=細胞医薬品、再生医療製品などの研究・開発・製造

「フジサンケイビジネスアイ」

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