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インターネット上で取引される仮想通貨は、昨年6月にこのコラムで、資金決済法などのいわゆるフィンテック(ITと金融を融合した新しいサービス)関連法の整備も追い風になって今後時間はかかるが普及が進むだろうと書いた。
代表格のビットコインは、昨年6月末には28万円前後だったが、12月中旬には200万円を超え、その後の盗難事件などの影響で2月上旬には70万円を割り込んだものの、その後やや値を戻している。EC(電子商取引)サイトや家電量販店などで決済に利用できる場面も増えてきている。しかし、今日までを振り返ると、仮想通貨の普及に疑問符を付けるのが通説になったと思われる。
その根拠としては、まず、経済学的に、仮想通貨は、通貨として求められる機能を備えるのが難しいという理由がある。一般に、通貨は、「価値の尺度(物の評価手段)」「価値の保存」「交換の手段」という3つの機能を持つものであるとされている。しかし、現状の仮想通貨はその値動き(ボラティリティー)が大きすぎるため、価値の尺度として用いるのは難しい。
同様に200万円だったものが2カ月足らずで70万円になるような大きなボラティリティーは、価値の保存を保証するものとはいい難い。交換(決済)手段としては、技術的には優れた面を持つものの、やはりボラティリティーの問題によって、少額でない取引に使うには安定性がない。
このように、現在の仮想通貨は、通貨に求められる機能を果たせないため、通貨として使われることは難しいと考えられるようになったのである。 ただ、例えば、日銀やメガバンクが円貨と特定レートで換金できる仮想通貨を発行すれば、これらの問題はクリアできる可能性がある。
次に、仮想通貨には、課税関係の課題がある。
資金決済法によって、仮想通貨は通貨以外の財産的価値であると位置づけられていることから、国税庁は、仮想通貨の購入時と売却時の差額、仮想通貨による決済時の差益、他の仮想通貨へとの交換差益などはいずれも雑所得になるという見解を公表した。
そうすると、基本的には、仮想通貨を使った全ての取引を記録し、損益を集計して確定申告しなければならないことになる。仮想通貨を決済手段として使うとすれば、これは煩雑極まりない。
仮想通貨の決済時に自動的に徴税が行われるようなシステムが整わなければ、この課題は普及の大きな足かせになると思われる。
最後に、仮想通貨のイメージの悪化がある。
盗難事件などの不祥事が繰り返されている上、現在1300種類を超えると言われる仮想通貨の中には、無限連鎖講(いわゆるねずみ講)的な仕組みで運営されているものもある。
このような実体は、投機的な行動を好まない一般的な人々への仮想通貨への心理的な距離を益々遠くさせると思われる。
【プロフィル】
古田利雄
ふるた・としお 弁護士法人クレア法律事務所代表弁護士。1991年弁護士登録。ベンチャー起業支援をテーマに活動を続けている。東証1部のトランザクションなど上場企業の社外役員も兼務。56歳。東京都出身。
「フジサンケイビジネスアイ」