人工的にコンピュータ上などで人間と同様の知能を実現させる人工知能(AI)。現在、第3次AIブームとして多くの企業が開発に力を入れている中、日立製作所は10月27、28日に東京国際フォーラムで開催したグループ世界最大規模のイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2016 TOKYO」で、汎用性と学習能力が高いAI「Hitachi AI Technology/H」(以下Hという)を公開した。プレゼンテーションには多くの参加者が興味を示し、大きな注目を集めた。
「Hitachi AI Technology/H」を
搭載したロボットが鉄棒を使って実演。
与えられた目標に対して
多くの仮説から最適な答えを導き出す
プレゼンテーションはボールを使った巨大サーカスのような造作物を使い、ボールの転がりにあわせて「日立のAIとは?」「その特徴は?」「ビジネスでの具体例は?」という3つのゾーンについてスクリーン映像を交えながら紹介、Hに接続されている鉄棒にぶら下がったロボットも初披露された。プレゼンテーションで担当者はHについて「日立が考える人工知能は、人と共存し、人を支援する技術」と説明し、人の思考パターンを超え、複雑・多様化する社会やビジネスに自動適応するAIの有用性をアピールした。
Hは、100万個を超える大量の仮説を自動で生成し、そこから重要な要因を選出、人が与えたオプションから最適な選択を行う。多くの人工知能は課題ごとにプログラムを開発する必要があるが、Hは同じ人工知能プログラムを異なるシステムにアドオンすることも可能だ。また、人が目標を設定すると、人工知能が自ら考え、答えを導きだすことができる。例えば、「鉄棒にぶらさがるロボットの振れ幅を最大化する」という目標と「動きは足の前後のみ」という条件を与えるだけで、自力で学習し、最大の振れ幅を実現する。
物流など導入実績のある
業界のジオラマも展示された
総務省情報通信政策研究所は、AIの経済効果を2045年に121兆円と試算している。自動調整・自動調和の進展に伴うコスト削減などがその要因で、地方経済や余暇の拡大という波及効果も想定している。こうした背景などから、近年、ビジネス面でのAI活用が加速しており、Hはすでに流通や物流、プラント、金融、交通、製造業など14分野57案件に適用されている。ある物流倉庫では倉庫管理システムにHをアドオンした結果、作業効率が10%アップした。このほかにも、コールセンターでは「営業効率をあげる」という目的に対して、「休憩時間に、みんなでもっとおしゃべりすること」というAIの意向を実践した結果、27%の受注率向上効果を確認。鉄道会社ではAIが運転パターンを考えると、電力効率が年間約14%向上する見込みである。