配管の赤錆防止装置などを手掛ける日本システム企画(東京都渋谷区)が、脱炭素社会を実現する新発電システムの実現に奔走している。同社は熊野活行社長が中心になって2009年から海流を活用した発電システムの開発を進めてきたが、これまでに技術的な課題を解決。今年2月には、この技術を活用するための事業会社、Kグリーンエナジーを設立し、実用化に向けた取り組みを本格化する。
「日本は海流発電の適地」と語る
日本システム企画 熊野活行社長
熊野社長によると、同社が実用化を目指す発電システムは水車を使用。海流で水車を回し、その動力で発電機を駆動して電気をつくり出すというものだ。
可変式の羽根を搭載した水中でも回る水車を開発。水の流れがある河川などでの実験を経て、発電ユニット部の実用性を確認した。
ユニットは、川底などに固定することなく発電が続けられるよう、水量の向きに合わせて水車の向きを自動調整する技術なども併せて開発したという。同社は今後、実際の海流による発電に向けた海での実験をはじめる考えで、主体となるKグリーンエナジーへの出資なども募ることにしている。
熊野社長によると、日本近海には黒潮をはじめとする秒速2メートルにもなる強い海流があり、海流を活用した発電を実用化する上では世界的な適地だという。太陽光発電や風力発電といった既存の自然エネルギーと違い、天候や気象条件による発電ムラもないため、エネルギーの安定供給という面でも有望という。
しかし、強い海流のあるエリアは水深が2000メートルを超えるところも多く、海底に発電ユニットを支える柱を立てるなどの構造物の設置が難しい。このため、同社は海底のアンカーからワイヤーで発電ユニットを引っ張り、海中発電する方法の実用化を目指す。
「まずは生み出した電気で水を分解して水素を生産。これを船舶等で需要家に供給する形を目指したい」(熊野社長)という。
海流で水車を回し、
発電機を駆動して電気をつくる
日本は化石燃料などの資源に乏しい。しかし、原子力発電所の稼働が低い現在、化石燃料による発電比率は高い状態が続いている。一方で自然エネルギーの利用は進んできたが、安定供給が難しいことから、これ以上の普及には蓄電技術の向上などが不可欠となっている。
その点、海流発電は「日本近海がその適地である上、安定供給も可能。送電は設備の敷設や送電ロスを考えると課題が多いが、水素の形で供給することで一次エネルギーの海外依存度抑制にも貢献できると考えている」(同)という。
Kグリーンエナジー
URL:https://k-greenenergy.com/
【プロフィール】
熊野活行 くまの・かつゆき
東京理科大工学部卒。1972年大日本印刷入社。88年日本システム企画を設立し社長。日本モンゴル友好交流協会と日本ミャンマー友好交流協会の会長。