【睡眠のシーズ】『良質の睡眠による心身の健康増進』~ 生活環境および睡眠環境の整備による睡眠介入~
甲南大学 知能情報学部 知能情報学科 前田多章 准教授
適用分野
睡眠科学,睡眠環境学,発育発達科学,健康科学,長寿科学,室内環境学
特徴
昨今,睡眠と健康,特に「うつ病」や「成人病」との関わりが明らかになってきました。生涯を通して健康を維持するために必要な良質の睡眠が如何にしたら得られる のかを,電気生理学的実験や睡眠−活動計を用いた行動実験により生理学的側面から調査・分析しています。
概要
私たちは,良質の睡眠が得られないと記憶を定着させることが出来ません。ヒトの記憶に関して研究をしていると,多くの人が苦労して勉強した内容を,残念ながら不適切な睡眠習慣により,しっかり記憶できない状況にあることに気が付きます。現代社会において,睡眠の質の劣化や量の減少が急速に進んでおり,低年齢層を含めた日本人の生活の夜型化が指摘されています。そのため,現代日本人は,ヒトが本来持っている記憶能力を充分に引き出せなくなってしまったのです。 そこで,幼児から高齢者まで多くのボランティアの協力を得て,それぞれの睡眠事情と記憶能力や健康との関係を,睡眠日誌,脳波計,睡眠—活動計を用いて調査・研究しています。特に,日中の運動量や学習量を変えて睡眠状態を観察し分析を行っています。得られた成果を活かして公開講座や講演会などで睡眠指導を行っています。
~ 睡眠指導では,次のようなことを薦めています~
○我々の記憶能力を充分に引き出すには,最適な睡眠環境で充分な時間をまとまって寝ることが重要です。最適な睡眠時間は・・・個人差はありますが,6時間あるいは7時間半です。そして,午後11時頃に 就床し午前6時に起床するといった規則的な生活が理想的です。
○朝食をしっかり摂り,午前中に屋外で日光を浴び,出来れば軽いリズム運動を行うことが理想的です。
○午後には,15分ほどの昼寝をし,夕方,軽いリズム運動をし,早めの夕食を摂ります。近年の生活では,我々の夕食は夕方に摂るのではなく夜に摂る,つまり夜食になっています。できれば夕食を心がけたいものです。
○習慣的就床時間の2〜3 時間前には入浴を済ませましょう。
○カフェインなどの刺激物の摂取も避けましょう。
○午後7時以降はなるべく,部屋の照明のフル点灯は避け,出来れば暖色系の光 の下で静かに過ごすのが理想的です。
これらのことを習慣づけることにより記憶力が充分に発揮できるのみならず,健康で快適な生活を得ることが出来ます。
キーワード
睡眠,睡眠衛生,健康,アンチエイジング,発育発達,室内環境,寝床内気候
連絡先
甲南大学フロンティア研究推進機構(甲南フロント)
TEL:078-435-2754
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