【食】『果物と健康の科学~美味しく食べて健康に~』
福島大学 食農学類 食品科学コース 升本早枝子 准教授
■はじめに
医食同源といわれるように「食」は健康の源です。私たちは果物が有する生体調節機能に着目し、生活習慣病を始めとする疾病予防や健康維持に対する有効性を科学的に解明しています。生産現場から食卓まで、真に「安心・安全・健康」な食生活を提案したいと考えています。
■果物の生態調節機能や疾病予防効果の検討 ~果物を食べると身体によいの?~
果物にはポリフェノール類、カロテノイド類、食物繊維など生体調節機能に寄与する成分が豊富に含まれています。私たちは様々な疾病モデルマウスを用いて、果物を食べることによる生体調節機能や疾病予防効果を解明しています。
■作用メカニズムの解明
~どんな成分が影響しているの?身体の中で何が起きているの?~
果物に含まれるどの成分が生体調節機能に寄与しているのか?また、どの様な作用メカニズムなのかを明らかにすることは「安心・安全」の面からも大変重要です。私たちは、生化学的分析、組織学的分析、遺伝子発現、代謝物測定などに加え、最近では腸内細菌叢解析により、果物摂取による腸管イベントを介した生体調節機能の作用メカニズムを明らかにしています。
リンゴ由来プロシアニジンの摂取により、食事性肥満モデルマウスの体重増加は抑制される。特に高分子のリンゴ由来プロシアニジンでは腸内細菌叢が変動しており、F/B値の改善や肥満改善に有効とされるAkkermansia属が顕著に増加する。
またリンゴ由来プロシアニジンは腸内細菌叢の変動を介し、腸管バリア機能の改善やLPS流出による肝臓の炎症などを抑制することにより代謝機能異常を改善し肥満を抑制する。(Sci rep. 2016 Aug10;6:31208.)
■研究成果の応用 ~研究成果がどんな事に役立つの?~
生産者と消費者が共に笑顔になることを目指しています
・ 農産物の高付加価値化(福島ブランド・日本ブランド)
・ 機能性表示食品に向けた取り組み
・ 消費者へ安心・安全に関する情報収集の提供
・健康長寿を目指した食教育
・ 果実の消費増大
<略歴>
• お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科ライフサイエンス専攻(食品栄養科学領域)博士後期課程修了博士(生活科学)
• 大手酒類・食品企業研究員
• (国研)農業・食品産業技術総合研究機構(食品総合研究所・果樹研究所)
• 北里大学獣医学部・動物資源化学科・栄養生理学研究室助教
• 徳島大学・医歯薬学研究部・代謝栄養学分野特任助教(現職)
升本早枝子准教授(2019年4月着任)
<業績>
• Saeko M. et al., Flavan-3-ol/Procyanidin Metabolomics in Rat Urine Using HPLCQuadrupole
TOF/MS.Mol Nutr Food Res. 2018 Oct;62(19):e1700867
• Saeko M. et al., Non-absorbable apple procyanidins prevent obesity associated
with gut microbial and metabolomic changes. Sci Rep. 2016 Aug 10;6:31208.
• Saeko M. et al., Dietary phloridzin reduces blood glucose levels and reverses
Sglt1 expression in the small intestine in streptozotocin-induced diabetic
mice.J Agric Food Chem. 2009 Jun 10;57(11):4651-6.
http://kojingyoseki.adb.fukushima-u.ac.jp/top/details/437
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