【産学連携インタビュー企画】
順天堂大学 客員准教授 / WINフロンティア株式会社 取締役 駒澤真人
どんな時に自分はリラックスしているのかを知ることが、自身のメンタルケアに繋がります。
WINフロンティア株式会社取締役であり、順天堂大学で客員准教授も務める駒澤真人さんにお話を伺いました。
―駒澤さんの開発した感情を見える化するセンサーを試させていただきました!副交感神経がだいぶ優位という結果でした―
『そうですか。そうしますと、タイプBということになります。タイプBというのは、交感神経よりも副交感神経が高い方で、自分のペースで物事に没頭するタイプで、人生を楽しむことを重視しているとか、絆や共感を大切にする、ストレスが少ないなどといった特徴があります。
逆に副交感神経よりも交感神経が高い方はタイプAです。きっちりと目標を達成するタイプで、競争心が強い、忍耐強い、ストレスの多い生活を選ぶなどといった特徴があります。
ちなみに、交感神経は興奮している時や緊張している時に働き、副交感神経はリラックス、回復している時に働くもので、どちらも自律神経といわれるものです。』
―なるほど、たしかにストレスは少ない方かと思っていました。でも、ここは頑張らなきゃ!と思うときは、交感神経が優位の方がよいのではないですか―
『はい、状況に応じてコントロールできると良いです。ただ、始終タイプAのままですと、血流が悪くなったり免疫が低下したり、様々な病気のリスクが高まってしまいますので、注意が必要です。』
―え!では、どうしたらよいのでしょうか―
『ぜひ、呼吸を意識してみてください。吐く息は副交感神経、吸う息は交感神経を刺激します。そのため、普段の生活の中で、意識的に吐く息を長くすると副交感神経が高まり自律神経のバランスが整いますので、試してみてください。また、自律神経の測定は、スマホの無料アプリでもできます。こちらも当社で開発したのですが“COCOLOLO~カメラでストレスチェック&AIキモチ予報”というものです。現在、160万以上のユーザーの方にダウンロードいただいております!』
―アプリをダウンロードしてカメラのレンズに指先を付けるだけで、いいのですね!ー
『はい、最初にお試しいただいたのは「Lifescore Quick」というもので、指に挟む専用の機器を取り付けて心拍の変動を測定していました。スマホでは、指先をレンズにしばらく密着させることで測定しています。』
―心拍の変動からキモチがわかるのですか―
『交感神経優位の場合は心拍間隔のばらつきがなくなり、間隔が一定(ゆらぎが小さい)に近づきます。一方、副交感神経優位の場合は、心拍間隔が1拍毎にばらついて変動(ゆらぎが大きい)があるんです。こうした研究は、心拍変動解析とよばれる研究領域で、欧米を中心に数多くの研究が積み上げられているんですよ。』
―そうなんですね。とても簡単な方法なのに凄いです!―
『ありがとうございます。アプリだと手軽にいつでもできるので是非活用していただきたいです。ご自身の今現在の状態を測ることができますし、しばらく続けて測定するとデータが集まります。それらのデータを元に、天気予報の様に将来のキモチの予報が示されますので、前もってココロの準備ができますよ。』
―楽しみながら、自分を知ることができますし、色々とアドバイスもしてくれるのですね―
『そうなんです。ストレス解消のヒントになるようなアドバイスもしますし、また、ご自身では気づいていないストレスも数値として見えるので、対策がとりやすいかと思います。特に、メンタル不調のユーザーさんは、昨日とどれくらいストレス度が違ったのかということを知ることだけでも安心するとおっしゃいます。メンタル不調のユーザーさんは一度辛いことを体験しているので、もとに戻らないためにも、体温計のような、お守り的な要素で活用されているようです。
自分が何をしている時にリラックスしているのかを知っていただく。この気づきが大事でして、それを日々可視化しながら、ご自身のストレスと向き合っていただきたいと思ってます。』
―そもそも、どうしてこうしたセンサーを開発したのですか―
『実は、大学では地震工学を専攻していまして、地球が発する地震波をセンサーにより計測し、建物がどのくらい揺れて、どのくらいの被害が発生するかのシミュレーションの研究をしていました。地震波の特性で、建物の揺れる大きさで被害も全く異なりますので、ある意味、住んでいる場所の健康診断をするような研究でした。その後、地震工学での波形解析の手法を人間の心拍波形にも応用できると考えまして、現在は、生体情報の研究と実用化をおこなっております。
波の情報や揺らぎって本質的な特性、症状をあらわしていると思うんです。その発信対象が地球なのか人間なのかの違いと言いますか、、、そこが自分の中で繋がって、これは面白いなと。地球が発する波(地震波)から人間が発する波(心拍波形)に繋げている人も当時いなかったので、やってみよう!と思いました。』
―駒澤さんは、会社と大学にお勤めですが、産学連携についてはどのように感じていますか―
『どちらにもいる立場からみますと、大学の先生と企業の担当者とで、お互い求めるゴールや享受したいメリットも異なるため、そこのすり合わせが重要であり大変であると感じています。相手の立場をくみ取り、お互いにWIN-WIN となるような連携に持っていくことが大事ですね。私は、ビジネスもやりつつ、アカデミアのこともやりながら2足のわらじですので、両方の考えがわかりますから、うまく繋げられる役目になれたらと考えています。』
―企業としては、どんなことに気をつけたらよいでしょうか―
『やはり重要なことは、その先生の研究に興味をもち、勉強して、真摯に学ぶ姿勢が大事だと思います。企業側があまりにも目先の利益に囚われすぎると、自分本位な提案になってしまいます。基本ですが、先生の研究をリスペクトして、しっかり関係構築をしていく事が大切です。』
―では、大学側としてなにか伝えたいことはありますか―
『学生の教育についてです。私は工学の学生を教えていますが、大学院への進学率が低迷していて、危機を感じます。大学院での研究とビジネスって近いんです。研究の場合“ある課題に対して仮説をたてて、過去の研究を調べて、まずは小さな規模でデータをとって、それを繰り返しながら広げて、最後は論文”とかになりますが、新規事業を立ち上げるときも同じなんです。“仮説をたてて、競合を調べて、プロトタイプを作って、それを小さいサイクルでまわして検証して製品化する”、、流れは一緒なんですよね。それを大学院での研究でトレーニングしておくというのが非常に良いと。将来、社会人となり仕事のテーマは違っていても、根本的な考え方や手法は同じですので、学生という立場で研究をする時間は非常に意義がある。将来の仕事に繋がるんだということを伝えていきたいです。』
―確かに、共通していますね。若い時にしか出せない力やひらめきを大事にしてほしいです。
今回は、自分のストレスチェックもでき、個人的にも有意義な時間でした!―
『そうであったのなら嬉しいです。現代はストレス社会と言われて久しいですが、コロナや自然災害などの発生によって社会環境が激変し、以前より増して、緊張やストレスがかかる環境となっています。メンタル不調に一度なるとなかなか戻れないので、そのちょっと手前からこうしたアプリを使って楽しみながら自分のコンディションを見ていただく。自分の気持ちを整えるようなことができると、病の一歩手前で防げるのではと思っています。ストレスは目に見えないので、そこを可視化するだけで、ひとつのきっかけになりますから上手く活用していただきたいです。』
駒澤真人
WINフロンティア株式会社 取締役
順天堂大学 客員准教授
https://makotokomazawa.com/
■編集後記■
今回は役得なインタビュー回でした!自律神経を上手にコントロールできるよう頑張りたいです!
そうそう、ご紹介した「Lifescore Quick」はリースできるそうです。多数の企業で会社での健康経営やマーケティングにも使われる(売り上げがぐっと伸びることも!!)などと様々な活用法があるそうです。ぜひ、アプリからでもお試しください♪