インタビュー情報

産学連携をスムーズに進めるコツ!

産学連携情報

信州大学  研究推進部 産学官地域連携課  山崎守雄氏

今回は、「産学連携をスムーズに進めるコツ!」と題して、企業が大学に問い合わせる際に準備をしておくとマッチング確率が上がるポイントについて、信州大学で相談窓口を担当している「山崎守雄氏」(信州大学研究推進部 産学官地域連携課)にお話をお伺い致しました。

Q:まず、信州大学の共同研究や産学連携による研究開発の近況を教えてください
A:『平成28年度に文部科学省が実施した「大学等における産学官連携等実施状況(対象:計1,056機関)」によると
・「民間企業との共同研究実施件数」は、13位(359件)
・「民間企業との共同研究費受入額」は、17位(582,745千円)
・「同一県内企業及び地方公共団体との共同・受託研究実施件数」の地域別では、
北陸・甲信越地方において1位(158件)です。
共同研究件数や受入額は、大学の所在する地域の企業数・企業規模にも影響を受けます。したがって、都市圏ほど多くなる可能性を考慮すれば、地方大学としては産学官連携が盛んな大学ではないかと考えています。』

Q:では、産学官連携が活発に行われる背景には、コツや秘密があると思うのですが、特に「企業が大学に協力を求める際」に、どのように依頼するとよいでしょうか
A:『はい、今回「産学連携事業の創出確率を高める4つのStep」をあげさせて頂きます。』
Step1:ファーストマッチングの確率を上げるために「大学の産学連携ガイド」を活用!
Step2:大学の研究広報を活用して、イメージの幅を広げる!
Step3:スピード感を持った産学連携を進めるためには具体的な内容を提案!
Step4:研究者の心をくすぐる「業界初」「世界初」のポイントを!

Step1:ファーストマッチングの確率を上げるために大学の産学連携ガイドを活用!


Q:企業からのお問い合わせですが、どういった内容の依頼が多いのでしょうか
A:『初めての方で、一番多いのは、“課題に対して困っているから何とかして欲しい”といった依頼です。』

Q:その依頼方法ですと、どんなことが問題になりますか?
A:『切実なことは伝わってくるのですが、何を求めていて、どんな分野の先生の協力がほしいのかが、あまりにも漠然としている場合、それを明かにするための時間が必要だったり、対応可能な教員にたどり着けない、といったこともあります。』

Q:とりあえず、相談というのはまずいのでしょうか?
A:『まずいわけではありません(笑)。もちろん、企業からご相談を頂いた際には、私達事務局やコーディネーターがお話を聞きとり、その後、適切な教員をマッチングし、技術相談、受託・共同研究へと繋がるよう努力をいたします。ただ、少しだけご準備を頂くことで、スムーズに連携の頭出しができます』

Q:どんな準備があると良いですか?
A:『例えば、依頼内容が、「アドバイス」や「相談相手」になって欲しいというものか、あるいは、「受託研究(分析)」を依頼するものか、「共同研究(開発)」が必要なものか、を考えて頂くだけでも入口でのマッチング確率が上がります。実際に、共同研究は必要なく、相談で満足頂くこともあります。』

Q:では、どうやって準備をしたらよいのでしょうか?
A:『本学を始め、多くの大学では産学連携のためのガイドや研究広報をされています。そこには産学連携の事例なども掲載されています。特に初めて大学と一緒にやろうという方は、実例のイメージを掴んで頂いたりすると、良いかと思います。もちろん、ご相談があればこちらでもご案内をいたしますので、お気軽にご相談ください』
■信州大学 産学連携ガイド 「http://www.shinshu-u.ac.jp/cooperation/

Step2:大学の研究広報を活用して、イメージの幅を広げる!


Q:では、具体的に産学連携による共同研究のイメージを掴むためには、どんなものがあるのでしょうか。
A:『ぜひ、一度大学の研究広報をご覧ください。昔のような固い感じではなく、読みやすさ重視で作成しています。その中ではホットな産学連携事例が毎号といっていいほど掲載されていますので、分野に関係なく、こういう形で新しいことができるのか!を掴んで頂くとよいかと思います』
■信大NOW! 「https://www.shinshu-u.ac.jp/guidance/media/now/

Q:信大NOW!はよく拝見しますが、研究は勿論、大学がどんなことに力を入れているのかもよくわかりますし依頼する前に読んでおくと確かによいですね。では、自社のケースに落とし込むためには、どうすればいいですか?
A:『他の事例を参考に、自分達は「何を依頼したい!」を、ある程度明確にしてもらえるとよいです。
「現状」自社ではここまでできる・できた、次はここが、「課題」だからこうしたい、こうすれば「解決」できるはずの3点です。いわゆる研究の仮説に近いものとも言えるかもしれません』

Q:「何を依頼したい」かと、「誰に」が、連動すると思うのですが、大学の研究者のHPは、専門用語が羅列されていて難しい、などの企業側の意見にはどうお応えしているのですか。
A:『そうですね、例えば大枠の分野(例:工学)が決まっていれば、各学部が出している研究紹介などをご覧頂くのが良いかと思います。近年は高校生をターゲットに作成し、社会に向けて少しでもイメージを持ちやすくすることを心がけて作成しておりますので、関連しそうな研究や先生を絞り込むことにご活用頂けます』

Q:より詳細に調べたいなどの場合にはどうしたらよいでしょうか。
A:『研究者総覧をご利用いただき、担当教員を事前に絞り込めれば、マッチングの確度はさらにあがりますので、可能であればチャレンジいただきたいです。本学の研究者総覧ではキーワード検索も可能ですので、前述の研究紹介などを参考にしてあたりを付けていただくことが可能です。また、ジャンル検索で教員を何人か指名いただくのも良い手だと思います。似た研究をしている教員同士は顔見知りの場合が多いですので、本学で対応できなくても、他大学の「○○先生に繋いでみましょう」。ということもありえます。』
■信州大学 研究者総覧 「http://soar-rd.shinshu-u.ac.jp/search/index.html

Step3:スピード感を持った産学連携を進めるためには具体的な内容を提案!


Q:要望が具体的であれば、あるほどマッチング確率があがるということですね。
A:『おっしゃるとおりです。先ほどの例を挙げた「誰に」「何を」が明確になればなるほど、最初の面談までのマッチングスピード、その後の発展確率ともに向上します。』

Q:では、さらに確度をあげるために準備ができることとしては、何がありますか?
A:『ずばりのお応えになりますが、前述の 「誰に」、「何を」に加えて、「いくらで(費用)」、「いつまでに」を明確に示して頂けると、共同研究・受託研究の内容もはっきりしている段階ですので、調整や手続きがスムーズに進みます。』

Q:企業と大学とのスピードがあわないという問題についてはどのようにお考えでしょうか。
A:『共同研究をする際には、研究・開発・製造・販売までの一連のサイクルとしてスケジュールをお示し頂くことが重要かと考えています。それによって、研究者側にも時間感覚を持って進めて頂くことが重要だと思います。しかし、共同研究はチャレンジ要素もあり、必ず成果が出る、時間内に出るということを保証することも、実際に難しいところもあります。心苦しいですが、柔軟性も加味した上で相互に進めることも必要かとは思います。』

step4:研究者の心をくすぐる「業界初」「世界初」のポイントを!


Q:依頼の内容によっては、研究者側が興味を示さないケースもあるようですが、どんなところに問題があるのですか。
A:『依頼内容が自分の研究テーマや研究領域から関与ができる(近い・遠いだけではなく)ことが重要です。加えて、研究の評価という観点から、「論文」が書けるかが大きな要素となります。ご依頼の中にその要素がどこまで入っているかは、マッチングに大きな影響を与えますが、それがあれば、開発後にエビデンスとしても活用できますので、考慮を頂くと双方でメリットがあると思います。』

Q:ある大学でお話を聞いた際に、「日本一」とか「世界初」が重要な要素と伺いましたが、それらもやはり重要でしょうか。
A:『そうですね。論文には、必ず新規性やオリジナリティが求められます。その意味では、日本一ですとか、世界初ですというのは、研究者にとっても最重要な視点ですので、殺し文句になると思います。ぜひそうした点を依頼時にPRできるようにしていただければ、良いかと思います。』

Q:では、最後になりますが、今後の産学連携についてはどのようにお考えでしょうか。
A:『今後ですが、企業からの技術相談の逆パターンで、“教員側からの共同研究先募集!”というような仕掛けができれば面白いかと考えています。まだ構想の段階でどれだけの教員から賛同を得られるかは不明ですが・・・自身の研究に興味をもって研究から開発に移して、試作をしてくれる企業を探している先生もいます。うまくマッチングすれば逆方向からの世界初が、実現すると思います。』

Q:なるほど、企業から持ちかける産学連携と大学から持ちかける産学連携の双方向を加速させることで、さらに研究成果が社会に還元される機会が増えますね。ぜひ、またその仕掛けができましたら、お話を聞かせてください。本日はありがとうございました。

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