相続でもめる危険度を簡易診断 相続診断協会が新サービス
高齢化に伴い相続への関心が高まる一方で、財産の多寡にかかわらず遺産分割でもめる家族は少なくない。こうした“争族”を減らし笑顔での相続を普及させる活動に取り組む相続診断協会が新たなサービスを始めた。
顧客からの相続相談に応えたい企業・団体を対象に、「相続人に長い間、連絡が取れていない人がいる」「一部の子どもや孫にだけお金をあげている」「財産に不動産が多い」といった30の質問に答えることで、争族になりかねないリスク度を提示する。この結果に応じて顧客に最適な情報や商品・サービスを案内でき、信頼関係を高められるとアピールする。
サービス名は「簡易版相続診断システム」。同協会の認定試験に合格した相続診断士の資格取得者が利用できる「相続診断チェックシート」の簡易版で、資格がなくても利用できる。資格取得者が10人以上在籍している企業・団体は利用できると導入を呼びかけている。
これに最初に応じたのが常陽銀行だ。行員が顧客との会話の中で相続に関心を示したとき、同システムを紹介する。今春から顧客提案ツール「スマイル・ナビゲーション」に追加した。現状では月間40~50件の診断を実施している(=写真)。危険度・緊急度が低いと診断されると安心するが、高いと驚くとともに対策の必要性に気づく。これを機に、具体策を検討する中で保険商品や遺言信託を案内する。
常陽銀は同システムを使うことで、「家族関係や保有する資産など顧客情報を把握でき、相続に関する問題点も分かる」(営業企画部主任調査役の高橋真興氏)という。適切な提案につながるため、顧客との信頼関係も高まる。
相続はデリケートな問題で言い出しにくいし、やりとりも難しい。相続問題を唐突に取り上げると相手は不快になりかねない。一方で、相続対策に関心を持つが、何から取り組んでいいか分からないといった声も多い。
同システムを利用することで、こうした悩みを解決できるだけでなく、顧客の囲い込みにもつながる。特に最近の高齢者の関心は資産運用から資産管理・承継にシフトしており、同システムは対話ツールとしても役立つ。有効性を確認できた同協会では、高齢・富裕層を多く抱える金融機関などに積極的にアピールしていく考えだ。
同時に、相続診断士の増加につなげたい考えだ。取得者が10人になると企業・団体は無料で使えるからで、常陽銀も同システムの導入にあたり資格取得に乗り出したという。
同協会によると、現在の資格取得者は約4万6000人。その約6割は企業・団体で生命保険や不動産、証券が多いという。最近では地域金融機関や介護・福祉、冠婚葬祭といった業界にも広がっている。山本次郎理事は「高齢化が進む日本では相続知識は営業活動に不可欠」と強調する。追い風が吹く中、同協会は2027年中の10万人達成を目指す。