第14回
「社員が共創パートナーにならない」に対処する
StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ 落藤 伸夫

石油供給が不安定になるなど事業環境が悪化することにも備えなければならない場面では、もし先行きが見えない場合でも「副作用の少ない、幅広いメリットが期待できる策」を探るよう勧められます。前回で社員と共創する方法を検討しました。今回は、社員との共創が実現しない理由と対処策について考えます。
会社と社員の方向軸を合わせて対立関係を避ける
前回、社員を共創パートナーとするには、日常業務(現場)で「心理的安全性を土台とする直接対話」と「自己効力感を引き出す仕組みと場」、「小さく始めて反復する実践プロセス」そして「互いを尊重・役に立つことを目指す組織文化」を実現するよう提案しました。
こういうと「いつも現場マネジャーに、これらを実践・実現するよう指示している。しかし徹底していないせいか共創が生まれない。どうしたことか」という声を聞きます。それはなぜなのでしょうか?
話をよく聞くと見えてくる現象の一つとして、事前に行うよう前回に提案した「社員との関係を見直す」と「会社と社員の方向軸を合わせる」が行われておらず、会社と社員とが二項対立関係なままであることが挙げられます。
そうなっている理由を聞くと少なからぬ経営者が「しかし会社(経営陣・マネジャー)が指示を出し、社員がそれに従うという構図は崩すことはできない。崩してしまうと、さぼっていたり、さぼる意思はなくとも『下手な考え休むに似たり』という状況に適切に対応できなくなる」と答えます。
実際その通りで、そのような場合には「会社としてはその働き・成果に合格点は与えられない。改善して欲しい」と伝えなければなりません。このため対立姿勢を温存せざるを得ないというのです。
「改善が必要な場合にはそれを求める、しかし改善を求めても対立しない」という関係をどうやって築くか?同じ方向性を目指す者同士として対話することがポイントです。
社員も納得できる会社の方向性を明確に打ち出すのです。例えば会社が持続可能な売上・利益の実現を目指す時、社員の職場環境や生活を改善させることも「会社の持続可能性」に含まれていると明示することで「同じ方向性を向く」関係とできる可能性があります。
基礎知識や基本動作を身に着けさせる
もう一つ、社員が仕事の基礎知識や基本動作を身に着けていないという現象を見かけます。その理由を聞くと「自走人材を育てるためには自主性を発揮させなければならない。大谷翔平選手が『二刀流を貫きたい』と主張、それを実現できるチームを選んだことが今の成功に繋がっている。彼のように主張を持ち、押し通せる存在になってもらいたい」という声、ある意味で先の意見とは真逆の方向性です。
このため新入社員(若手・中途)が「会社方針に納得できない」と決定を無視したり不平を言い続ける一方で、基礎知識や基本動作が身に着いていないのです。しかしこれには事実誤認があると感じます。
大谷翔平選手が『二刀流を貫きたい』と主張したのはプロ野球として活躍してから、特にメジャーリーグに移籍してからのタイミングで、です。彼はそれまで少年野球から高校野球を経る中で、基礎知識や基本動作を徹底的に身に着けていました。
その経験と実績、そして何より自分自身を的確に捉えて「自分は二刀流を貫くことで、他の誰にもなしえなかった貢献(共創)ができる」と自信を持って言えるようになっていたのです。
それと同様、仕事の基礎知識や基本動作を身に着けていない社員が共創パートナーとなるのは難しいでしょう。先ずそれを身に着けさせることがポイントです。
多くの場合「勉強しろよ」との声掛けや、入社時に数日~数週間にわたっての集合研修などでは不十分です。相手に寄り添い、良く知りつつ、時にはコミュニケーションして相手の感想なども聞きながら、基礎知識や基本動作を教えることになるでしょう。身近な存在をメンターとして割り当て、仕事に取り組んでいるタイミングを捉えて教える、あるいは仕事を振り返って困った事象への対処策を一緒に話し合ってみるなどの取組みが有効でしょう。
社員との共創を目指しているのに実現しないとの声を聞きその状況をよく聞くと、会社と社員の役割分担が曖昧であることが多いと感じます。方向性を打ち出すこと、それも社員が軸を合わせられる会社軸を打ち出して浸透させることと、我が社として仕事をしっかりと確立して身に着けさせることは、まず会社が果たすべき役割です。
それらをしっかり受け止めてもらうことで、社員は会社と共創できる存在に育っていきます。
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本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。
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なお、冒頭の写真はChatGPTにより作成したものです。
プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)
中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA
日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。
現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。
新型コロナウイルス感染症が収束して社会的にも中小企業金融においても「平時」に戻ったとの声がある中、今後は「共創」を目指す企業が躍進していく時代になると確信、全ての中小企業がビジョンを描いて持続と発展を目指すよう提案することとして「共創型金融の時代!あなたはビジョンを描けますか?」コラムを2025年10月からスタートさせた。
【落藤伸夫 著書】

『日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル』
さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。
Webサイト:StrateCutions