【働き方・労務に関する法令のコンプライアンス違反調査】
最多は「環境・設備の安全管理不足」。建設業・製造業で全体の過半数に
~労災かくしや賃金未払いなど法令違反829件の事例を分析~
AI与信管理サービスを提供するアラームボックス株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:武田浩和、以下「当社」)は、この度、2024年1月1日~2024年12月31日に官公庁が公表した行政処分および行政指導の中から、働き方・労務に関する違反829件を抽出し、違反内容や業種別リスクを分析した、2024年 働き方・労務に関する法令のコンプライアンス違反調査を発表します。
※調査結果の図表は添付ファイル、もしくは下記URLからご確認いただけます。
https://alarmbox.co.jp/allnews/press/250401-workstyle-compliance/
◆調査対象となった働き方・労務に関する法令のコンプライアンス違反の件数
【総件数】829件
1.労働安全衛生法違反(514件)
環境・設備の安全管理不足、労災かくし、人員体制の不備 など
2.最低賃金法違反(146件)
賃金の不払い・遅延、最低賃金額以上の給与を支払わなかった など
3.労働基準法違反(71件)
違法な長時間労働、残業代や休業手当の未払い など
4.不正受給(49件)
雇用関係の助成金・補助金等の不正受給
5.技能実習法違反(49件)
不法就労・入国管理違反、技能実習生の人権侵害 など
※地方自治体を除く、主に中央の官庁や省庁が公表した行政処分および行政指導のうち、違反法令が特定できたものを集計
※今回は全企業に適用される「働き方・労務」に関する違反を対象とするため、特定業界のみを対象とする法令違反は対象外とする
※定期賃金の支払いについては、最低賃金法および労働基準法の両法で定められているため、労働基準法違反として発表された行政処分も一部含まれていたが、今回は分析のため最低賃金法違反としてカウント
※同日に発表されたものは、複数の条項に違反していた場合も1件とカウント
◆調査背景
2025年4月には育児介護休業法や雇用保険法、労働安全衛生法によって定められた労働安全衛生規則など働き方に関する法令が改正され、労働者がより働きやすい環境づくりが推進されています。また、昨今は働き方改革への意識が社会全体で高まっており、長時間の残業や職場の安全対策に対する目が厳しくなっています。
当社はこれまで各省庁などのウェブページに点在する行政処分情報を網羅的に収集し、与信管理サービス「アラームボックス 行政処分データ」として提供してきました。当社が収集した従業員の働き方に関するコンプライアンス違反情報や考察を発表することで、企業が社員の生活を守るためのコンプライアンス遵守に取り組むきっかけとなること、企業活動や与信管理における行政処分情報の重要性と活用法を啓発していくことを目的に、この度、本調査の実施と発表に至りました。
◆主な調査結果(サマリー)
【法令ごとの違反件数】法令別では「労働安全衛生法」が最多
ネット上で公開される行政処分情報のうち、働き方・労務に関する法令のコンプライアンス違反829件を分析した結果、違反件数が多かったのは、労働環境の安全対策や労災の報告義務について定めた「労働安全衛生法」(514件)でした。次いで、「最低賃金法」(146件)、「労働基準法」(71件)が多く、給与の支払いや労働時間に関する違反が多く発生していました。
【業種(大分類)ごとの違反件数】建設業と製造業で全体の過半数を占める
違反が多い業種(大分類)としては、「建設業」(291件)や「製造業」(173件)が多く、こちらの2業種で全体の過半数を占める結果となりました。これらの業種では、建設現場や工場での安全対策が基準を満たしていないことによる労働安全衛生法違反が多く発生しています。次いで、「卸売業,小売業」(67件)「運輸業,郵便業」(57件)となっており、労働安全衛生法の他に労働基準法違反が多く発生しています。なお、業種を中分類に分けた際に違反が多いのは、建築工事や土木工事を元請け業者として請け負う「総合工事業」(129件)、主に下請けとして工事の一部を建設工事する「職別工事業」(125件)、自動車などで貨物の運送を行う道路貨物運送業(43件)となりました。
※業種は総務省の日本標準産業分類(大分類)を参考に区分けを行っています。
※今回の集計対象となった違反件数(829件)をもとに作成(業種不明の39件を含む)
◆調査結果詳細
※違反内容を分類した調査結果の図表は添付PDFもしくは、下記URLからご確認いただけます。
https://alarmbox.co.jp/allnews/press/250401-workstyle-compliance/
①労働安全衛生法違反(514件):環境・設備の安全管理不足、労災かくしなど
2024年に発表された働き方・労務に関する法令のコンプライアンス違反の中で、労働者の安全を守るための労働安全衛生法違反が最も多くなっていました。違反内容を分類ごとに分けると、環境・設備の安全管理不足が過半数を占め、高所作業の墜落防止措置や機械の非常停止装置の不備など、作業環境や設備において本来必要な安全対策を怠ったことで行政処分に至っていました。また、次に労働者死傷病報告書提出義務違反が多く、労働災害が発生した際に、必要な報告書を提出しなかった、または虚偽の報告を行った違反が発生していました。
労働安全衛生法違反が多かった業種は、建設業(240件)、製造業(117件)であり、建設現場や工場などでの安全管理不足が多くなっています。
②最低賃金法違反(146件):定期賃金の未払い・遅延、最低賃金を下回る給与
最低賃金法では、企業に対し都道府県ごとに定められている「地域別最低賃金」もしくは特定の産業ごとに定められている「特定最低賃金」の以上の定期賃金を支払うことが義務付けられていますが、これに違反した企業が多くなっていました。
最低賃金法違反が多かった業種は、製造業(29件)、建設業(14件)、卸売業,小売業・医療,福祉(13件)でした。
③労働基準法違反(71件):違法な長時間労働、残業代や休業手当の未払い など
労働基準法では、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働は時間外労働協定(36協定)の届け出が必要ですが、協定の無い時間外労働や、協定時間を超えた時間外労働に関する違反が多くなっていました。また時間外労働の割増賃金や休業手当など、定期賃金以外の賃金に関して支払いをしていない違反も発生していました。
労働基準法が多かった業種は、製造業(14件)、運輸業,郵便業(13件)、宿泊業,飲食サービス業(11件)であり、長時間労働が課題になっている業種が多くなっていました。
④不正受給(49件):助成金・補助金等の不正受給
補助金の交付については、補助金適正化法や補助金の内容にあわせた関連法令で、交付申請や不正な使用の防止についてのルールが定められています。これらのルールに従わず、不正受給を行い社名の公表に至った企業が散見されました。特にコロナ禍中の事業者に向けた補助金である、雇用調整助成金と緊急雇用安定助成金の不正受給が多くなっていました。
不正受給が多かった業種は、情報通信業(10件)、学術研究,専門・技術サービス業(9件)、宿泊業,飲食サービス業、建設業(7件)で、多く発生していました。
⑤技能実習法違反(49件):不法就労・入国管理違反、技能実習生の人権侵害 など
技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図る技能実習法違反の中で特に多かったのは、就労できる在留資格を有していない外国人の雇用や、出入国在留管理庁からの許可を超えた就労をさせた不法就労、出入国に関する不正でした。また、技能実習生へ人権侵害を行ったことによる認定の取り消しも散見されました。
技能実習法違反が多かった業種は、建設業(17件)、製造業(10件)、卸売業,小売業(7件)で、いずれも技能実習生の受け入れが多い業種です。
◆考察・まとめ
今回の調査では、労働安全衛生法、最低賃金法、労働基準法を中心とした違反が多数確認されました。特に建設業や製造業における違反が全体の過半数を占める結果となりましたが、現場作業を伴う業種では、安全対策や労災対応に関する法令の順守が不可欠であるにもかかわらず、作業環境や管理体制の不備により違反が生じていると考えられます。また、最低賃金や労働時間の管理に関する違反も多く、適切な給与の支払い体制が整っていない企業が一定数存在する実態も明らかになりました。背景には、慢性的な人手不足や、コロナ禍による経営の不安定化が影響していると考えられます。限られた人員で現場を回す中で、安全管理や労務管理が後回しにされる傾向や、急な売上減少による資金繰りの悪化から、給与支払いの遅延や不正受給といったコンプライアンス違反が増加したと分析します。こうした環境下でも、法令の適用は変わらないため、企業には平時・有事を問わずコンプライアンスを継続できる体制づくりが求められます。
また、処分内容によっては事業停止命令や認定の取り消しが発生し、業績に直接影響する場合があります。このように、リアルタイムで企業のコンプライアンス違反情報など、企業の内情が垣間見えるネット上の定性情報を活用すると、安心して契約や取引ができる環境を整えることができます。今後は自社のレピュテーションマネジメントの為だけでなく、取引先のリスクをタイムリーに把握し、ブランド毀損リスクを未然に防ぐことが重要になると考えます。
◆アラームボックス 行政処分データについて
AI与信管理クラウドサービス「アラームボックス」(
https://alarmbox.jp )は、企業や自治体のHPに掲載された情報や、SNSや口コミなどインターネット上で投稿された情報をAI技術で収集・解析し、提供するクラウドサービスです。新規取引時の与信判断、既存取引先の継続的な与信管理、さらに売掛保証までを一括して行うことができます。
当社が提供する「アラームボックス 行政処分データ」は、省庁・地方自治体を網羅した最新の行政処分情報が毎週自動で届くサービスです。アラームボックスが毎日100箇所以上の行政のウェブページから情報を取得・整理して提供するため、利用会員は行政処分を受けた企業の情報を自社のデータベースを簡単に貯蓄することが可能になります。
お問い合わせはこちら:
https://alarmbox.jp/blog/?page_id=21043
◆会社概要
代表者:代表取締役社長 武田 浩和
所在地:東京都新宿区市谷本村町3-22
設立 :2016年6月
資本金:3.36億円
企業サイト:
https://alarmbox.co.jp
サービスサイト:
https://alarmbox.jp