B to B企業のメタバース、インダストリアル・メタバース基礎講座
第4回
メタバースとホームページ
株式会社アルゴバース 瀧田 理康
メタバースといえばweb3.0の代表選手として語られます。一方ホームページはweb1.0の代表選手です。このふたつは、時代が全く違うので共通点がないように思いますが、実は共通していることがいくつもあります。今回はこのふたつの共通点を考察してみたいと思います。
まず、web1.0と呼ばれる時代の始まりはいつでしょうか?だいたい1990年頃だと思われます。私たちは、アップルのマッキントッシュという画期的で今までみたことのないマシンに首ったけでした。そして1995年にはマイクロソフトのウインドウズ95が出て、一気にインターネット時代に入りました。そのころからホームページという名前が出てきました。ご参考までに、日本ではホームページというとwebページ全体を意味しますね。英語ではホームページは文字通り最初のhomeのページのことだけなので、日本でいうホームページはwebページといった方が通じます。ここは日本なのでどちらでもいいので、今はちょっといにしえな感じを出してあえてホームページといいます。1995年ごろから、どうやらホームページというのを作らなければ・・・という風潮が出てきて、ホームページ制作会社がどんどん作られていきます。言語(htmlなど)を知っていれば自分でもできますが、多くの人はそもそもインターネット自体がちんぷんカンプンなのでとてもじゃないけど自分でホームページを作るという気にはなりません。いち早くこれらの言語を勉強した人たちが一世風靡しました。いまでは、特に言語的な知識はなくても優れたテンプレートに文字をいれていけば、ホームページができるようになりました。だから単純にホームページを作るという仕事というよりは、よりそのページが有効活用される設計をどうするのかという設計スキルが制作会社に求められています。
僕はメタバースが今、ホームページが出始めたときに似ているのではないかと思っています。メタバースの空間を作るには3DCGの知識、スキルが必要です。アバターを動かすにはそれなりにアプリを使いこなす必要があります。これらを一足先に勉強して知識やスキルを身につけたひとがどんどん新しいメタバースの領域を作り出しています。まだ今はみんな手探りに近いのでちょっとがんばれば自分でも楽しめるのですが、なにしろ「メタバースって言葉は知っているけどいったい何?」という人がほとんどなので、メタバースで何かやろうと思ったら制作会社に依頼するしかないというのが現状だと思います。
このようにホームページの黎明期とメタバースの黎明期はとても似た印象なのですが、大きく違うのはスピードです。メタバースは本当にどんどん新しい空間、新しい機能、新しいマッチングが出てきています。たとえば2か月前だと自分のこだわったアバターをあるメタバース空間で使おうとしても、使えないかあるいはとても不安定でした。でも今は当たり前のようにそのアバターが動き回るようになっています。何カ月か前は、ある時間になると突然フリーズしてどうにも動かなくなったのですが、今はだいぶそういうことが起きなくなっています。あと数か月もしたら、もっともっと使いやすく、もっともっと高度な空間が実現していることと思います。
このようなメタバースですが、企業がこれを活用にするには今一歩どうするのかよくわからないというのが現実ではないでしょうか?ゲームやエンターテイメントの世界ではだいぶいろいろなことが開発されているメタバースですが、一般の企業としてメタバースをどう使うかを考えたときには、バーチャルなイベントの開催が今のところ一番なじみやすいのではないかと思います。事実、ものすごく大きなクラウドサーバーをバックに、数万人という規模で同時に入れるというメタバースプラットフォームも出現してきています。
一方僕は、メタバースは新しい形のホームページになるのではないかと思っています。かなりプラットフォームもテンプレートも使いやすくなってきた今、これを使ってホームページのように企業のやっていることを展示というか掲示していくのです。ホームページと根本的に違うのは、ホームページが2次元であるのに対してメタバースは3次元です。今はほとんどの人がPCやタブレットで見ると思いますが、もちろんVRグラスではいればとんでもない没入感で企業の展示を見ることができます。それとアバターが動き回るのでカーソルを動かして表示物を見るよりずっと印象に残ります。そしてこれが一番の特長なのですが、音声やチャットでコミュニケーションができます。ホームページでもチャット機能がついているものがありますが、もっともっとリアルに近いコミュニケーションがバーチャルで行われます。一般のホームページではチャットは1対1の対話ですが、メタバースでは複数対複数で対話することが可能です。メタバース空間を作れば、リアルにいる場所にとらわれることなく、大勢がひとつの場所に集まれるのです。たとえば、時間を決めてその空間内をツアーしてお客様をご案内することなどはとても簡単にできます。
僕の会社では、このようなベネフィットをホームページを作るのと同じレベルの金額で実現できるようにしました。詳しくは個別に問い合わせていただければと思いますが、これは本当に新しいホームページの形態としておすすめです。
このようなメタバースホームページがうまく機能するために、以下のことを考えたらよいと思います。
(1) 特別に人を招いて知らせたい内容を効果的に展示する。
たとえば、新しい工場であったり、新しい取り組み(SDGsなど)の発表であったり、新しい商品の発表などは、よくランディングページというものをつくりますが、メタバース空間で発表した方がずっとインパクトがあります。
(2) コミュニケーションのしかたを設計する。
前述のように、リアルの音声やチャットでアバター同士が会話できますし、今や体のアクションもたくさんつけられます。拍手をしたり手を振ったり、ダンスしたり、飛び上がったりできます。参加者にこれらのコミュニケーションをどのようにとってもらうように誘導するか、その設計が大事になります。これが上手だととても印象深い空間になり、単にランディングページを見るのとは異次元のお客様の記憶インパクトになります。
(3) 競合他社との差別化
メタバース黎明期の今だからこそ、競合他社に先駆けてこのような空間をもつことで差別化を図ることができます。上手なPRすればマスメディアもとりあげてくれます。
こう考えてみると、企業にとってメタバースとホームページは親和性の高いものといえるのではないでしょうか?
プロフィール
株式会社アルゴバース
代表取締役社長 瀧田 理康 (たきた・さとやす)
東京理科大学電気工学科卒。また、武蔵野美術大学造詣学部にてデザインを、京都芸術大学美術科にて写真を学ぶ。現在は、株式会社アルゴバース代表取締役社長として映像制作事業、PR事業。市場・技術調査事業の3つの事業を統括しつつ、XRグラスによるソリューションや3DCGの制作、メタバース事業といった新規事業を担当している。15年ほど半導体業界で部品製造のベンチャー事業を行い、その際の米国や欧州とのビジネス経験をベースに新規事業開発コンサルティングおよび技術の国際展開のコンサルティングを行ってきた。現在も中小企業大学校でアドバイザーを務める傍ら、自社の事業変革として2021年からは3DCG制作事業、2022年からはメタバース事業に注力している。
・中小企業診断士、リスクマネジメントプランナー(一般財団法人リスクマネジメント協会)、PRプランナー(PRSJ)
・著書は「新規事業開発」「経営基本管理/マーケティング」(ともに日本マンパワー出版)等
Webサイト:株式会社アルゴバース