秋沢崇夫社長
国内企業の多くが人手不足に悩まされている。とくに中小企業では働き方改革で残業規制が強化される半面、社員は業務負担が加重になり疲弊している。ニットは主に総務、人事、経理といったバックオフィス業務をオンラインで代行することで、企業の生産性を高めることに貢献している。秋沢崇夫社長は「現在約250社に導入されているが、2020年までに2500社を目標としている」と話す。
他のアウトソーシング受託企業との違いは
「業務を管理するディレクターと約10人のアシスタントが、チームとして業務を請け負っていることだ。一般的なクラウドソーシングでは、依頼する企業側が業務ごとに管理・監督しなければならない。しかし当社では窓口であるディレクターがアシスタントに業務を指示し進捗(しんちょく)管理する。企業側はディレクターへの指示のみで資料作成、毎月の経理処理、予約管理など、手間がかかる業務の納品を受けられる」
業務を請け負うスタッフはどのように選考しているのか
「採用率1%の厳しい基準で選んでいる。応募者にはエクセル、パワーポイントなどで図表を作成してもらうだけでなく、オンライン面接で人柄を判断した上で採用している。現在登録アシスタントは約400人で、そのうち9割を女性が占めている。全体の7割が主婦で、そのほとんどが地方在住だ」
応募する人にとってのメリットは
「オンラインなので在宅でも勤務できる。介護や育児、地方在住のほか、海外に住んでいても自分のスキルを生かせる。チームで仕事をするので、例えば子供が急に熱を出して仕事をするのが困難になっても、他の人がカバーしやすい」
導入するためのコストは
「契約形態により異なるが、例えば契約期間3カ月で月間30時間利用できるパッケージプランは月額10万円だ。同様の業務で派遣社員を雇用すると、求人広告などの採用費用のほか、備品、社会保険などで1人当たり月額25万円はかかる。当社の場合、利用料以外の採用費用などは一切かからない」
起業のきっかけは
「前職のIT企業で部門長を勤めていたが人手が足りず、資料づくりやアポイントメント調整などを全て自分でこなしていた。そのときにオンラインで代行してくれれば便利だと思っていた。その後、明確な構想はなかったが起業するために退職し、1年間米国を放浪しながら、オンラインで仕事をした。これをビジネスにすれば大きな可能性が広がると思い、起業準備に取りかかった」
これから事業をどう展開していくのか
「弁護士や税理士による、高度な業務を提供する。一方で、データ入力といった単純な作業のスタッフも採用して業務の幅を広げたい。また、人工知能(AI)化を進めることで合理化し、さらに業務効率を高めていきたい」
【プロフィル】秋沢崇夫
あきざわ・たかお 青学大経済卒。2004年ガイアックス入社。15年レインボー(現・ニット)を設立し、現職。37歳。東京都出身。
【会社概要】ニット
本社=東京都品川区北品川5-5-15 大崎ブライトコア4階
設立=2015年3月
資本金=500万円
従業員=7人
事業内容=クラウドソーシング運用
「フジサンケイビジネスアイ」