株式会社小松原梱包 代表取締役社長 小松原 由大
顧客の心を包み、届ける

商品を運んだり、その見栄えを良くして購買意欲を刺激したりするのに欠かせない梱包・包装資材を扱う小松原梱包が得意とする企画力・提案力に磨きをかけている。顧客の「わからない」「面倒くさい」を解決するために企画段階から加わり、迅速に対応するトータルサポート・ワンストップサービスを強化するとともに、それにより培った知見・データを活かしコンサルティング事業に進出する考えだ。小松原由大社長は「梱包・包装資材でお客さまの成功を手伝ってきた。これからもユーザーファーストにこだわり、ぶれずに事業を進めていく」と言い切る。顧客の心をつかんで包み込む経営姿勢を小松原社長に聞いた。
- ――段ボール箱など梱包・包装資材は差別化が難しく価格競争に陥りやすいといわれる。どのように対応してきたのか
- インターネットの普及で誰でも簡単に価格などを調べることができ、どこで買ったほうがいいか分かる。こうした中で選ばれるには営業力と提案力が必要だ。つまりお客さまの「分からない」「面倒くさい」を解決することが求められるので、お客さまの要望を丁寧に聞き、最適なサービス・ソリューションを提供する。商品を包む素材は何がいいのか、印刷はどうするのがいいのかはもちろんのこと、販促ツールや梱包発送など企画から最終納品までをワンストップで、しかも全面的にサポートすることにこだわってきた。トータルサポート・ワンストップサービスが受け入れられ、重宝されている。
- ――そうした顧客第一の経営姿勢はどうやって生まれたのか
- 私は4代目だが、3代目の父、順二郎が昭和34(1959)年、段ボールをはじめとする梱包資材販売事業を始めた。父はお客さまのところに足繁く通い、梱包資材の販売より「ユーザーファースト」にこだわり、困りごとを解決してきた。「ただただお客さまに喜んでもらいたい」という想いが「誠実で、自分のことを考えてくれている」と評価され、確かな信頼につながっていった。私もその精神を受け継ぎ、ぶれずに「すべてはお客さまのため」にビジネスを進めていく。
- ――創業時の事業は
- 初代・由三郎が大正2(1913)年に「小松原商店」を設立し薪炭問屋を始めたのが始まり。太平洋戦争時の東京大空襲で甚大な被害にあったが、2代目・豊太郎が事業を再開。しかし薪や炭はやがてガスや石油に置き換わったため斜陽産業となり、3代目が梱包資材事業を始めた。小松原梱包を設立したのは昭和50(1975)年だ。
- ――困りごとを解決していく中で扱う商品も増えていったのか
- メインの段ボールは軽い、丈夫、加工しやすい上、古紙に分類されリサイクルされるので環境優位ともいえる。加えて、物流がある限り市場はなくならず、お客様のすそ野は広い。このため、いろいろな業界と付き合える。それぞれが抱える困りごとの相談に応じることで梱包・包装資材の知見がたまっていった。しかも他業界での横展開ができるので面白い。
- ――というのは
- 梱包によって商品の毀損、トラブルを未然に防ぐことができる。包装は商品を売るためのツールだ。お客さまの商品を包む包装紙をロゴ入りにしたら無地より受け手(消費者)の印象が良くなる。デザインがオシャレならブランドとして認知され価値が高まる。信頼も生まれ、売り上げも増える。こうして知見やデータがたまると売れ筋のデザインなどが分かってくる。「ロゴを入れると商品の印象が変わる」とアドバイスを送れる。どうしたら売れるようになるかを提案できるわけだ。つまり売れる手伝いができる。お客さまから受け入れられると我々の差別化につながる。だから面白いし、梱包・包装事業の可能性は高い。
- ――実際にどんな手伝いを行ったのか
- スポーツジムが新たな事業としてプロテインの通販に乗り出すとき、どんな包装がいいのか尋ねられたので、適切なサイズの袋,箱を提案した。さらに店舗に並べるというので什器、ビラやチラシづくりといったポスティング、イベント開催時のプラコップなど、なんでも相談に応えた。ロットを求める大手と違って我々は多品種小ロットが得意。小回りも利く。お客さまは中小企業が多いので大手より我々のほうが頼りになる。だからお客さまは増えており、その甲斐あって2024年12月期は売り上げ、利益とも過去最高となった。
- ――売れるための支援は強化していくのか
- 今はお客さまの企画をフォローする段階にすぎないが、知見・データを蓄積していけばコンサル事業に本格的に進出できると考えている。そうなると我々の企業価値も高まる。お客さまの困りごとを解決するとともに、専門性も高めることでコンサルの質を向上させる。今年は薪炭問屋を始めてから112年になるので、包装資材とコンサルでお客さまの成功を手伝うことで200年を目指す。お客さまの心をつかんで包み、そして最終ユーザーに届けることで、その方たちの心も包む。そんな会社を創っていく。
- ――地域貢献活動については
- 地元とその周辺の蔵前、浅草はインバウンド(訪日外国人客)が多く訪れるので、お客さまのインバウンドに向けた発信力の強化にかかわれるはずだ。パッケージにこだわるお客さまと浅草や蔵前らしい印刷、包装紙を考案したい。インスタ映えすれば集客につながり、お客さまのブランド価値を高めることに貢献できるはずだ。
小松原由大(こまつばら・よしひろ)
株式会社小松原梱包 代表取締役社長
東京都台東区浅草出身。専修大学経営学部卒。1999年日本通運株式会社入社。株式会社アクシアムを経て2003年に株式会社小松原梱包に入社。2013年に代表取締役社長に就任。