鳥の目、虫の目、魚の目

第43回

日本原電、東海第二の再稼働に向け安全対策進む 「念には念を入れて」の姿勢貫く

イノベーションズアイ編集局  経済ジャーナリストM

 

「原子力発祥の地」として知られる茨城県東海村に立地する日本原子力発電の東海第二発電所を訪ねた。再稼働に欠かせない安全性向上対策の進捗状況を確かめるためだ。地域住民ヘの精力的な理解活動も含めて「念には念を入れて取り組む」姿勢が強く感じられた。

防潮堤工事の様子

操業停止に追い込まれた東日本大震災が発生した前日に当たる3月10日、現地に赴くと安全性向上のための工事が最盛期を迎えていた(写真、出典・日本原子力発電)。敷地内の原子力館屋上に行くと発電所の全景を見渡すことができる。津波から発電所を守るため周囲をぐるりと囲む防潮堤、電源を守るための頑強な建物など、東京電力福島第一原子力発電所の事故を踏まえた地震・津波対策、多様な電源や冷却機能の確保対策といった安全性を高める取り組みがはっきりと見て取れた。敷地内の勾配をうまく生かして建物を配置していることも分かる。

福島第一の教訓とは何か。金居田秀二・東海発電所副所長は「『電源があれば何とかなる』という考えは間違いだった」と話した。福島第一は地震時に運転していた原子炉の緊急停止に成功したものの、その後に襲われた津波により原子炉などの冷却に必要な電源をすべて失い、原子炉を冷やすことができなくなった。このため原子炉が過熱し水素爆発が起こった。

これを戒めに東海第二は「津波から守る」「電源を絶やさない」「原子炉を冷やし続ける」「(放射性物質を外部に漏らさず)地域の環境を守る」ことに力を注いできた。

津波から発電所を守るための防潮堤の工事はほぼ完了していた。津波は標高17.1メートルの高さに達すると想定し、防潮堤は標高最大20メートルの高さを確保。岩盤に届くまで打ち込んだ直径2.5メートルの鋼管杭を並べて鉄筋コンクリートで固めた厚さ3.5メートルの壁が張り巡らされ、近くまで行くとまさに城塞のようだ。

ただ、1か所だけ進捗が遅れていた。地下に取水口が通るため鋼管杭を打つことができず、他のエリアとは違う工法を採用したところだ。防潮堤の基礎部分に不備が見つかり補強工事が必要になった。このため完了時期を24年9月から26年12月への延期を余儀なくされた。

水を発電所に入れない防潮堤工事と並行して、電源確保にも取り組む。停電による電力喪失を防ぐため、非常用の高圧電源装置を固定できる堅固な構造物を標高11メートルエリアに建設。さらに高台(20メートル以上)には緊急時のバックアップ電源として移動できる低圧電源車を配備する。

原子炉を冷やし続ける設備も建設されていた。原子炉に水を送る既存設備に加えて、新たに5000立方メートルの淡水を貯める地下タンクを原子炉の横に設置(8メートルエリア)。11メートルエリアにも淡水源を確保、あわせると7日間の冷却が可能という。さらに、万が一に備えて海水を使って原子炉を冷却する緊急用海水ポンプピットを設ける。

このように水源や電源は敷地内の勾配を生かし分散配置しているほか、水素爆発の防止・放射性物質の拡散抑制、地震への備えからテロ対策まで「念には念を入れて」安全性向上に取り組んでいる。

一方で再稼働に欠かせない地域住民への理解活動にも力を入れてきた。政府は原子力発電所から30キロ圏内の自治体に広域避難計画の策定を義務付けているが、東海第二周辺自治体のうち6市町が未策定という。このため避難計画づくりを支援するほか、住民の理解が重要として安全性向上対策工事の最新状況などを報告する説明会を定期的に開催。20年度からは各家庭に直接訪問して玄関先で対話する「こんにちは“げんでん”です」を実施。金居田氏は「5キロ圏内の27,000戸(6万人)をすべて回った」という。

政府が2月に閣議決定した「第7次エネルギー基本計画」では40年度に原子力の比率を2割程度(現状は8.5%)と高めた。それまでの「可能な限り依存度を低減する」という文言は削り、再生可能エネルギーとともに最大限活用する方針を示した。福島第一事故を受けて停止していた沸騰水型軽水炉(BWR)も24年11月に東北電力女川原子力発電所2号機が初めて再稼働したのも、同じBWRの東海第二にとって「追い風」だ。言い古された言葉だが、努力は報われるし、裏切らない。だから、再稼働に向けてやるべきことをやるだけだ。

 

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