第8回
「御社の志は何ですか」社会が必要とする会社しか生き残れない
イノベーションズアイ編集局 経済ジャーナリストM
ソニーのパーパスとは何か。吉田氏は「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」ことだという。いかにもソニーらしいパーパスだ。複合企業ゆえ、株式市場ではコングロマリット・ディスカウントにさらされてきたが、パーパスを基軸にした価値創造が株式市場から支持され、見事にコングロマリット・プレミアムを得るとともに、思わず感動するような商品やサービスを送り出すことで最終利益1兆円企業を創り上げたのだ。
なぜ自分の会社が必要なのかー。パーパスは日本語で「存在意義」と訳されることが多いが、米ボストン・コンサルティング・グループでは、パーパスを「なぜ社会に存在するか」と位置づけ、「どこを目指すか」を示すビジョン、「何を行うべきか」を示すミッション、「どのように実現するか」を示すバリューと分けて定義する。
ビジョンやミッションは時代により変化するが、パーパスは時代を超えたもので、ビジョン、ミッション、バリューの上位概念と位置付けられる。今や時代のキーワードとなっており、日本でもここ数年で導入する企業が相次いでいる。
パーパスは自分たちが何のために存在するのかを示すため、社員は「自分が何に貢献し、何を達成できたか」を感じることでモチベーションを維持・向上でき、エンゲージメント(愛社精神)も高まる。組織の一体感が生まれ、生産性や創造性が高まり、イノベーションにつながる。それだけ会社の成長をもたらし、企業価値・ブランド力も向上するわけで、株主の理解も得やすい。しかし、単なるお題目では何も生まれない。社員の納得・協働なしではパーパス経営は成り立たないのだ。
「パーパス経営」を著した一橋大学の名和高司教授はパーパスを「志」と訳し、株主還元重視の行き過ぎた資本主義の先を見据え「志本主義」の必要性を説く。先が見通せないVUCA(変動制・不確実性・複雑性・曖昧性)と呼ばれる時代だからこそ、社員はもちろん、顧客や社会といったステークホルダー(利害関係者)から共感を得やすいパーパス経営が求められると指摘している。
新型コロナウイルス禍や米中対立などで社会情勢が激変し、価値観も変わる中、ステークホルダーから支持・応援なくして厳しくなるばかりの企業間競争を勝ち抜くのは難しい。そこで改めて見つけなおしたい。「自分の会社のパーパス(志)は何か」―。
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- 第29回 伝統と革新で100年企業目指せ
- 第28回 ストレスに克つ(下) 失敗を恐れず挑戦してこそ評価を高められる
- 第27回 ストレスに克つ(上) ポジティブ思考で逆境を乗り切る
- 第26回 ガバナンスの改善はどっち? 株主はアクティビスト支持 フジテックの株主総会、創業家が惨敗
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- 第24回 人材確保に欠かせない外国労働者が長く働ける道を開け 貴重な戦力に「選ばれる国・企業」へ
- 第23回 人手不足の今こそ「人を生かす」経営が求められる 成長産業への労働移転で日本経済を再生
- 第22回 賃上げや住宅支援など子供を育てやすい環境整備を 人口減少に歯止めをかけ経済成長へ
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- 第20回 稼ぎ方を忘れた株式会社ニッポン 技術力で唯一無二の存在を生かして価格優位をつくり出せ
- 第19回 稼ぐ力を付けろ 人材流動化し起業に挑む文化創出を
- 第18回 リスクを取らなければ成長しない。政府・日銀は機動的な金融政策を
- 第17回 企業は稼いだお金を設備と人への投資に回せ 競争力を高め持続的成長へ
- 第16回 インパクト・スタートアップが日本再興の起爆剤 利益と社会課題解決を両立
- 第15回 適材適所から適所適材への転換を ヒトを生かす経営
- 第14回 日本経済の再興には「人をつくる」しかない 人材投資で産業競争力を強化
- 第13回 「Z世代」を取り込むことで勝機を見いだす
- 第12回 改革にチャレンジした企業が生き残る
- 第11回 「型を持って型を破る」 沈滞する日本を救う切り札
- 第10回 ベンチャー育成、先輩経営者がメンタリングで支援 出る杭を打つことで日本経済に刺激
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- 第8回 「御社の志は何ですか」社会が必要とする会社しか生き残れない
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- 第6回 常識を疑え、ニーズに応えるな ベンチャー成功のキラースキル
- 第5回 トップを目指すなら群れるな 統率力と変革の気概を磨け
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- 第3回 東芝VSソニー 複合経営は是か非か 稼ぐ力をつけることこそ肝要
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