鳥の目、虫の目、魚の目

第13回

「Z世代」を取り込むことで勝機を見いだす

イノベーションズアイ編集局  経済ジャーナリストM

 
2つの「Z」が気になる。一つはウクライナに侵攻するロシア軍の戦車などに書かれた「Z」の文字。テレビなどの映像に映し出されるといらだちを覚えるのは私だけではないだろう。一刻も早く「Delete」してもらいたい。もう一つは「Z世代」の「Z」だ。こちらはぜひとも仲良くしたいし、取り込みたいと思うのではないだろうか。新型コロナウイルス禍で商機を逃した企業ほど、Z世代の特徴を把握・理解し勝機をつかむ必要がある。

Z世代とは1990年代半ば以降に生まれた世代を指す。米国では1960年代半ばから80年ごろ生まれを「X世代」と名付けたことに始まり、その後の80年ごろから90年代半ば生まれを「Y世代」と呼び、それに続く世代という意味で「Z世代」と呼ばれるようになった。ちなみに、その次は「α世代」と呼ぶらしい。

2020年時点でZ世代が世界人口の3分の1を占めるといわれ、20年代半ばまでに多くのZ世代が労働市場に出るため、労働者として、また消費者として社会や経済に与える影響は大きく、それだけ注目度も高まっているわけだ。また生まれたときからインターネットが利用可能なデジタルネーティブの始まりの世代でもある、スマートフォンを使いこなしSNS(交流サイト)に親しんできており情報発信力も高い。インフルエンサーとしてSNSに投稿して共感を求める傾向も強い。スマホを手放せない世代といえ、テレビの視聴時間よりネットの利用時間が長い一方で、パソコン操作にあまり慣れていないともいわれる。

動画配信の普及で「倍速視聴」という映画やドラマの見方もZ世代の特徴だ。録画したテレビ番組を家族で見ていたら、なんと1.5倍速だという。クイズ番組だったので何の違和感もなく楽しんでいた。行間を読むとか、セリフのないシーンや風景も意味があると強がっていたが、せっかちな人にはZ世代の視聴スタイルも何となく理解できるかもしれない。

また最近、大学の授業に触れる機会があったのだが、ここでも教授が情報を2倍速で流していた。新型コロナの流行で対面授業がなくなり、自宅などで講義を2倍速で聴いていた学生にとって、リアルでの授業は教授の話がゆっくり過ぎてイライラスするらしい。Z世代に受け入れられる講義が求められる教授もつらいものがある。そういえば最近はやる歌謡曲もイントロがないらしい。


倍速だけではない。テレビのあるワイドショーでは「ネタバレ視聴」について解説していた。映画やドラマなどの結末を先に見て「おもしろい」ことを確認してから観賞することだそうだ。時間の無駄を省くためというが、なんとも忙しい。効率性を重視し回り道が嫌いなZ世代はコスパ(コストパフォーマンス)ならぬ、タイパ(タイムパフォーマンス)が大事なのだという。それだけ情報があふれかえっており、短期間で大量の情報をストレスなく処理しなければならない時代ともいえる。つまり必要な情報を取捨選択する能力が求められるわけだ。


一方で、情報の供給過多にもかかわらず、知らないことで周りから取り残されたり、友達から外されたりする恐怖や、素早く反応する共感強制力におびえる若者たちでもある。他者からの評価に敏感で承認欲求が強いからだ。「おもしろい」と思ったことを共有したい、自分の考えを認められたいと考える世代といえる。自分の考えを積極的に発信し、同じ考えを持つ人たちとコミュニティーを作る人が多いといえる。


消費者としてのZ世代は「モノ(商品)」より「コト(体験、サービス)」に価値を見いだす傾向が強い。お金で買えるモノより、イベントやライブなどへの参加といった体験を重視する傾向にある。例えば洋服でも「これがほしい」ではなく、「この体験にあうものがほしい」というわけだ。環境問題やダイバーシティ(多様性)などへの関心も強いといわれる。


デジタルネーティブで効率性を求めるZ世代が今後、社会や経済の主役になるのは間違いない。こうした若者に支持される企業になるにはタイパを意識した商品・サービスの提供が欠かせない。また自己実現や社会貢献にも意欲的なので、就職先として選ばれるにはワーク・ライフ・バランスや働き方改革に積極的に取り組む必要がある。


 

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