第4回
脱炭素への対応が勝ち残りの道、事業構造の転換に本気に取り組むとき
イノベーションズアイ編集局 経済ジャーナリストM
地球温暖化という人類にとって深刻な危機が迫る中、各国は本気になって脱炭素に取り組むべきときだ。企業も環境意識を高める市民の声に応えられなければ支持を得られず、市場からの退出を余儀なくされる。言い換えると国にとって産業構造の転換、企業にとって事業再編の好機だ。生かさない手はない。
「100年に一度の大変革期」を迎えた自動車産業が典型例だ。排ガスを出さないゼロエミッションの流れは加速、ガソリン車から電気自動車(EV)など電動車へのシフトが間違いなく進む。対応できないメーカーは脱落するしかないサバイバルレースが始まったわけだ。各社がEVシフトを加速するのは脱炭素に向けた環境規制の高まりがある。欧州連合(EU)の欧州委員会は7月、35年に域内の新車が排出するCO2をゼロにすることを義務付ける規制案を発表した。中国も35年までに、新車販売の全てをEVなど新エネルギー車やハイブリッド車にする計画だ。
「火力発電が大部分を占める日本ではEVを増やしても脱炭素になりにくい」と指摘する声がある。しかし日本メーカーもEV化にかじを切るしかない。高性能ガソリン車を発売しても売れなくなるからだ。また部品点数が多いガソリン車からEVへのシフトは失業者を生みかねないといって、国内の車部品メーカーで働く約70万人の「雇用を守る」と強調するメーカーもある。そのためにEVシフトを遅らせることは今の時点では正しい選択かもしれないが、やがてガソリン車は売れなくなる。今の雇用を守っても5~10年先の雇用は守れない。いつの雇用を守るのかが問われる。
産業構造の転換にいち早く対応する企業が勝ち残るのは自明の理だ。ある日本メーカー幹部は「技術者としてガソリン車を残したいが、社会が変わった。経営判断としてEV化を加速する」と話した。もはや立ち止まることは許されない。自動車産業に限らず、COP26を機に、日本企業は産業構造の転換に向けた競争を迫られるのは確かだ。
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