第5回
トップを目指すなら群れるな 統率力と変革の気概を磨け
イノベーションズアイ編集局 経済ジャーナリストM
トップに従うことで才能を発揮するタイプの人材がトップの器を持っているとはかぎらない。ナンバー2や3はトップの指示通りに動いて認められてきたわけで、トップに求められる才能である統率力は未知数だし、戦闘能力を備えているかも分からない。
経営も自然界と一緒で、いわば勝つか負けるかだ。度量の狭いトップはイエスマンを周りに集め、後継も順送りでナンバー2や3を指名しがちだ。それが院政を敷くための人事ならもってのほかと言わざるを得ない。指名された後継者も前任の経営を側近としてみてきただけに変革を起こすのは難しい。その成功体験を踏襲することは、互いに居心地がよく、組織も正しいと思い込んでしまう。
自己満足に陥り、過去の継続・現状維持・組織防衛に走ると、時代が変わり、外部環境が変化しても気づかず没落の道を歩んでしまう。新たな価値創造に向けた思考回路が止まっているからだ。イノベーション(変革)を起こそうとせず現状維持を続ける。そんな企業に未来はないのは明白だ。
脱炭素、デジタル化、そしてグローバリゼーション、さらにはガバナンス(企業統治)と経営環境の変化が激しい今こそ、トップに求められるのは統率力であり、変革を起こす気概だ。低迷から抜け出すには稼ぐ力を取り戻すしかない。そのためには守りに入るナンバー2や3といった順送り世代を飛び越えて一気に若返る方がいい。しがらみがないからだ。従来とは異質の人材をトップに登用することが肝心といえる。
トップを目指すなら上司や社長に媚びを売ることにエネルギーを費やすのではなく、派閥に属さずに独力で統率力と変革への気概を磨いていればいい。出世コースを目指さず、関連会社への出向を命じられてもトップの資質を習得する好機ととらえたい。いずれその能力を発揮する機会がやってくるはずだ。一方で、企業は頭角を現すことができる組織や異色の社員でも働きやすい環境を整えておく必要がある。「出る杭は打たれる」企業風土が治らないようでは優秀な社員は去るだけだ。大切なのは放任主義。だからこそトップは後継者を育てる必要はない。後藤新平は「財産を残すは下、事業を残すは中、人を残すは上」という言葉を残した。
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- 第29回 伝統と革新で100年企業目指せ
- 第28回 ストレスに克つ(下) 失敗を恐れず挑戦してこそ評価を高められる
- 第27回 ストレスに克つ(上) ポジティブ思考で逆境を乗り切る
- 第26回 ガバナンスの改善はどっち? 株主はアクティビスト支持 フジテックの株主総会、創業家が惨敗
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- 第23回 人手不足の今こそ「人を生かす」経営が求められる 成長産業への労働移転で日本経済を再生
- 第22回 賃上げや住宅支援など子供を育てやすい環境整備を 人口減少に歯止めをかけ経済成長へ
- 第21回 賃上げで経済成長の好循環をつくる好機 優秀人材の確保で企業収益力は上昇
- 第20回 稼ぎ方を忘れた株式会社ニッポン 技術力で唯一無二の存在を生かして価格優位をつくり出せ
- 第19回 稼ぐ力を付けろ 人材流動化し起業に挑む文化創出を
- 第18回 リスクを取らなければ成長しない。政府・日銀は機動的な金融政策を
- 第17回 企業は稼いだお金を設備と人への投資に回せ 競争力を高め持続的成長へ
- 第16回 インパクト・スタートアップが日本再興の起爆剤 利益と社会課題解決を両立
- 第15回 適材適所から適所適材への転換を ヒトを生かす経営
- 第14回 日本経済の再興には「人をつくる」しかない 人材投資で産業競争力を強化
- 第13回 「Z世代」を取り込むことで勝機を見いだす
- 第12回 改革にチャレンジした企業が生き残る
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- 第10回 ベンチャー育成、先輩経営者がメンタリングで支援 出る杭を打つことで日本経済に刺激
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- 第8回 「御社の志は何ですか」社会が必要とする会社しか生き残れない
- 第7回 大企業病を患うな 風通しのよい組織を、思い込みは危険
- 第6回 常識を疑え、ニーズに応えるな ベンチャー成功のキラースキル
- 第5回 トップを目指すなら群れるな 統率力と変革の気概を磨け
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- 第3回 東芝VSソニー 複合経営は是か非か 稼ぐ力をつけることこそ肝要
- 第2回 トップは最大の広報マン、危機管理の欠如は致命傷
- 第1回 リーダーに求められるのは発進力 強い意志と覚悟で危機に挑む