
■名刺の山「可視化」 米中で売り込み
机の中に眠る“名刺の山”を商機に-。名刺管理事業の三三(さんさん)(東京都千代田区)は、名刺情報をインターネット上で共有し営業活動に役立てる企業向けサービス「リンクナレッジ」の海外展開に乗り出す。来夏にも米国と中国に設立する全額出資子会社を通じ、サービスの外国語版を売り込む。起業5年目で世界を視野に入れ始めた寺田親弘社長に、名刺管理ビジネスの可能性と次の一手を聞いた。
--名刺に着目した経緯は
「人と人のつながりが見えていないとビジネスの生産性が著しく落ちてしまう。そうした問題意識を三井物産に勤めていた時代に強め、仲間と名刺管理サービスの『三三』を起業するに至った。名刺交換は古典的なコミュニケーションツールだが、いまなお世界で広く使われている。その可能性に注目した」
--名刺の有用性とは
「名刺には2つの意味が込められている。一つが顧客情報で、相手にコンタクトする際に名刺をみて電話番号やメールアドレスなどを調べる。もう一つは出会いの証だ。さらに名刺はほとんどの仕事人が持ち歩き、まずは名刺交換から関係が始まる。これらを踏まえると、情報資産としての価値が高い。資産の結びつきを『見える化』して社内で戦略的に共有すれば、ビジネスチャンスにつながる。それを『リンクナレッジ』で実現したわけだ」
--サービスの流れは
「例えば、サービス導入企業の営業部門に、名刺を自動的に読み取るスキャナーと、読み込んだ名刺データを管理する小型端末を貸し出す。営業担当者が名刺をスキャンするたびに端末に蓄積されたデータは、当社が管理するサーバー(高性能コンピューター)へ転送され、データベース化される。その蓄積データを営業担当者がネット経由で好きな時に呼び出し、仕事に生かす。価格の目安は100人に導入する場合で、月約50万円だ」
--導入企業の利点は
「造船の売買などを行う三井物産の船舶部門の導入事例でいえば、10年にわたり人脈をつくってきたベテランもいれば、新人もいる。リンクナレッジの採用で、ベテランが抱える暗黙知(あんもくち)の人脈情報を共有し合い、営業経験が浅い人でも効率よく顧客にアプローチできるようにした」
--今後の展開は
「リンクナレッジの国内導入社数は500社に達した。これを土台に、このサービスを英語と中国語でも扱えるようにする。米中版は、日本所在の外資系企業や米中に進出する日系企業を手始めに提案する。これにより、5年以内に顧客数を1万社に引き上げたい。また、世界各国を名刺でつなぐ交流サイト作りの構想も温めている」(臼井慎太郎)
「フジサンケイビジネスアイ」