東大発ベンチャーの情報基盤開発は、ストレスチェックを安く・早く・簡単に集計・分析し結果を報告する「Alt Paper(アルトペーパー)ストレスチェックキット」の導入企業が年内に2000社を突破する見通しを明らかにした。企業の事務的負担を最小限に抑えられることなどが受け入れられ、2019年の1800社から200社超増えるという。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、コロナ禍とその防止に向けたテレワークが及ぼすストレスについて質問事項を追加したことも寄与する。千保理CFO(最高財務責任者)に今後の展開などを聞いた。
情報基盤開発の千保理CFO
--19年のストレスチェック調査で分かったことは
「19年末までに集計を完了した962事業者・男女計15万3134人のデータを業種別にまとめた。同業種内では全体的に女性より男性の方が高ストレス者の割合が多く、健康リスクも高い傾向にあることが分かった。17年、18年もこの傾向は確認されており、全国的に就労現場では男性の方が肉体的・業務的に高負荷の業務にあたるケースが一般的と推測される。ただ全体的には就労環境の改善が進んでいる」
--コロナ禍のストレスに与える影響も調べる
「6月から調査を開始した。コロナ禍の影響では通勤時・出勤時の感染や給与・雇用の維持といった不安、運動不足などを聞く。テレワークでは上司や同僚から十分な情報を得られているか、チームと疎外感を感じているかなどだ。テレワークは曖昧な指示や情報遮断でストレスがたまっていないか気になる。集計・分析してストレスへの影響度を出す」
--導入企業数は着実に増えている
「労働安全衛生法改正により15年12月からストレスチェックの実施が義務づけられた。ビジネスチャンスととらえ、同4月に発売した。導入企業は16年の800社から1200社、1500社、1800社と増えた。『安く・早く・簡単に』というアドバンテージをさらに高めるため、今年は事業拡大に伴い本社を移転・増床し事務センターを併設。機械化を進めて外注を減らし物流コストなどを削減するほか、納期を早め、価格競争力も高める。コロナ禍のような新たな問題にも対応でき、顧客ニーズに個別に応えることも可能だ」
--受け入れられる理由は
「アンケートの実施と集計にかかる多大なコスト問題を解決できるからだ。アルトペーパーは元々、『あると便利な紙システム』から来ており、紙に手書きされた情報の自動入力に強みをもつ。普段使っているマイクロソフトのワードとインクジェットプリンター、卓上スキャンを組み合わせて、簡単にマークシート型アンケートを作成。データを自動的に読み取って入力・集計できる」
「マークシートのシステム本体を導入するのに約1000万円の初期投資が必要なうえ、専用紙とその在庫も抱えなければならず運用コストがかかる。アンケートの開封や入力などの作業を行う人員集めも大変だ。こうした悩みをわずか数万円で解決できるのが強みだ」
--今後の展開は
「例えば病院が行う健康診断アンケートだが、フォーマットがまちまちでデータ入力のための人集めなどがコストアップ要因になっている。統一すれば効率化が進むので、われわれの参入余地が出てくる。『人手不足だが残業は無理』という風潮もわれわれには有利だ。展示会などで集めた名刺をマーケティングに生かそうにもデータを集めて分析する社員が足りない。外注する流れにあり、受注が入るようになった」
【プロフィル】
千保理(せんぼ・ただし) 東京大経済学部卒。2004年同大大学院経済学研究科修士課程企業・市場専攻修了。同年ニッセイ情報テクノロジー入社、10年情報基盤開発に入社し最高財務責任者(CFO)。40歳。千葉県出身。
【会社概要】
情報基盤開発
本社=東京都文京区湯島4-1-11南山堂ビル3階
設立=2004年8月2日
資本金=1994万円
従業員数=75人
事業内容=ITシステム受託開発、データ入力業務受託、ストレスチェック事業
「フジサンケイビジネスアイ掲載」