山利商事は、最終ユーザーに直接、施工商材を売り込む営業に乗り出した。空調業者や水道工事店など施工業者に代わって商材の機能・性能など購入意欲を喚起する情報を提供。これにより顧客満足度を高め、売り上げ増加につなげる。施工業者は営業活動から開放され工事に専念できる。吉野恵太社長は「利害関係者との共存共栄が重要になってくる。今は試行中だが、2022年にも本格的に始動させたい」と意欲を見せる。
山利商事の吉野恵太社長
--新型コロナウイルス感染拡大の影響は
「20年は5~7月と売り上げが激減した。外出自粛などで飲食店業界の経営状況が悪化したことで店舗やテナント系を中心にわれわれの直接の顧客である施工業者の売り上げが大幅にダウン。新築マンションも延期や見直しが相次ぎ、プラント系も完全にストップした。雇用調整助成金や持続化給付金、テレワーク助成金などを活用したが、挽回するまでに至らず赤字転落というふがいない結果になった」
--今年の見通しは
「昨年延期した物件が多数あり、リフォーム案件も昨年の2倍強出てきている。さらに新たな商材としてコロナ関連の扱いを増やし、最終ユーザーへの商材の売り込み強化に取り組んでいく」
--卸売業者にかかわらず最終ユーザーに近づく理由は
「管工機材や住宅設備機器を扱ってきたが、最近はトイレやエアコン、給湯器などの販売がメインだ。われわれの直接の顧客は設備工事店や空調業者、水道工事店、リフォーム会社などだが、扱っている商材の使用者ではなく、あくまでも設置業者だ。このため例えば賃貸マンションのオーナーに対して良いものより安いものを売りがち。オーナーも安いから納得する。もっと良いものがあることを最終ユーザーに近づいて提案したいと考えた」
--そうしたやり方はうまく機能するのか
「現在は試行中だが、最終ユーザーもインターネットなどで最新情報を仕入れており、知識も豊富だ。価格より機能・性能を重視するユーザーに対して最新情報を伝えることで購入に結びつくと考えている。われわれは商材をメーカーから仕入れるだけで工事は従来通り施工業者に任せる。このため、われわれを含めて『ウィン・ウィン・ウィン』の関係を構築できる」
卸売りという業界の将来を考えると利害関係者の仲間づくりが必要だ。トイレを買い替えたいとき、一緒に床を張り替えたり、窓を取り換えたりと内装の仕事も求められる。設置業者だけでは要望に応えらないのでネットワーク化が必要になる。後継者問題を抱える施工業者も少なくないのでM&A(企業の合併・買収)で応えてもいい。最終ユーザーの満足度を高めるため、将来的には『何でも屋』になる」
--創業以来の精神が生きてくる
「1913(大正2)年の創業から108年。給排水の部材などの製造・販売から始まり、当社にとって一番のヒット商品として塩ビ管と鉛管を接続する『MY(エムワイ)ジョイント』を60年に開発。続いて児玉工業(大阪市)が開発した大ヒット商品『圧着ソケット』の東日本の総代理店として販売網を広げた。創業時から大事にしている『人と人をつなぐ』という精神を引き継ぎ、コミュニケーションを重視してきた。相手の立場になって仕事をしてきたので今でもユーザーの紹介で仕事が増えている。これからもユーザーがわれわれを紹介したくなる仕事をするだけだ」
【会社概要】山利商事
▽本社=東京都江東区佐賀1-3-2
▽設立=1947年2月12日
▽資本金=9000万円
▽従業員数=16人
▽事業内容=管工機材・住宅設備機器などを扱う総合商社
【プロフィル】吉野恵太
よしの・けいた 日本大学経済学部卒。2003年山利商事入社。04年橋本総業入社、08年山利商事、13年取締役常務、17年社長。40歳。東京都出身。
「フジサンケイビジネスアイ掲載」