法政大学大学院政策創造研究科教授 アタックスグループ顧問・坂本光司氏
資本力や組織の大きさなどが大企業と比較して総じて劣る中小企業が、成長発展していく唯一の道は、何にもまして人財の確保・育成に注力した経営を貫くことである。
というのは、人財こそ中小企業の成長発展の原動力であり「新しい感動的価値」創造の唯一の担い手だからである。
しかしながら、多くの中小企業はこの最も大切なことを頭では理解していたとしても、実践となるとはなはだ不十分と言わざるを得ない。好況の時は人財を強く求めるが、逆に不況になると、人財を求めないばかりか、苦渋の選択と言いつつ、従業員のリストラを平然と実行する経営をみればよく分かる。
◆不況でも採用
こうした経営は根本的に間違っていると言わざるを得ない。というのは、自社が好況であったのは人財が豊富に存在していたからであり、逆に自社が不況になったのは人財が少なすぎたからなのである。つまり、不況だからといって人財を求めなければ、外部環境の好転による一時的好況に浴したとしても、内発的な景気の創造は到底困難であり、永遠に不況に悩まされる経営が続いてしまう。
だからこそ、人財は設備投資などとは異なり、好不況にかかわらず強く求め続けるべきなのである。
事実、好不況により業績が大してぶれない「景気超越型企業」「景気創造型企業」の経営をみると、好不況にかかわらず人財確保に注力しているという共通項が見てとれる。
こういうと「募集しても、中小企業にはなかなか優秀な人財が振り向いてくれない」とあきらめ顔の中小企業経営者が多いが、それは全くの誤解である。人財確保に注力している中小企業にあっては、優秀な人財がわざわざ入社したいと全国各地から追いかけてくるからである。
◆愛とぬくもり
その代表格は、ライブレボリューション(東京都港区)、アニコムホールディングス(東京都新宿区)、メーカーズシャツ鎌倉(神奈川県鎌倉市)、船橋屋(東京都江東区)、アチーブメント(東京都品川区)、伊那食品工業(長野県伊那市)などである。
これらの企業は、いずれも採用枠が数人から十数人でありながら、毎年、大学生などの応募が約1万人を超えている。
例えばライブレボリューションは、社員数が60人の中小企業で、募集人員もわずか数人というのに、入社希望の大学生などは毎年3万人をはるかに超えている。
これら企業のキーワードをあえて言えば、「愛」「ぬくもり」「仲間」「社員第一主義」「オープン」などである。人財難に悩む企業はぜひ参考にしていただきたい。
【会社概要】アタックスグループ
顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。
「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。
「フジサンケイビジネスアイ」