トイレ使用状況お知らせシステム「はいってルンバ」の機器セット。社会の高齢化や独居世帯が増えるなかではトイレばかりでなく応用範囲が広がっている
■トイレの空き 遠くから通知
トイレが1つしかない飲食店などで、ドアの前まで行かなくても空いているかどうかが分かれば、店内で客はもっと落ち着いて過ごせるのではないだろうか。愛知県岡崎市で主に自動車生産ラインの電気設計などを手がけるSP-Logic(エスピーロジック)の後藤僚治代表取締役は7年ほど前、名古屋で入ったラーメン店で、そんなことを考え、トイレ使用状況お知らせシステム「はいってルンバ」の開発に着手したという。
システムは、それから1年がかりで出来上がり特許を申請。3年前にやっとそれが認められた。
特許を得られるポイントになったのは「個室の使用時間を計測できること」(後藤氏)。使用時間をあらかじめ設定し、それを過ぎた場合などをPHSやインターネットのメール、ナースコールのシステムと接続して外部の離れた場所にも通知できるようになった。
エスピーロジックの主要業務は、大手自動車会社の孫請け。はいってルンバは「当初、趣味で開発を始めた」後藤氏だが、2008年のリーマン・ショックで受注激減を経験し「上から仕事が降ってくるのを待つようなことは排除しなければ」と、自前のオリジナル商品の強化を決意して開発の作業を加速。そして特許を得て、飲食店など愛知県内を中心に十数カ所に設置してきた。
待つことの排除をさらに推進。弱い「営業面」を補って、愛知県外から全国への展開を目指しネットを使ってパートナー企業をさがし、昨年1月、コンサルティングや新規事業開発を行うノーズフー(加藤俊之代表取締役、東京都渋谷区)と提携、総販売委託契約を結んだ。
昨年はその後の東日本大震災で、一部事業が滞ったこともあったが、夏以降にプロモーションを本格化させ、今では「来年3月までの年度内に100カ所設置が目標」(後藤氏)と見込めるほどの勢いが生まれている。
従来の赤外線センサーでは静止状態のヒトの感知をできず「使用中」を「空き」と知らせることがあったが、エスピーロジックではドアの開閉確認の信号と組み合わせることにより個室使用の状況把握を的確化させたほか、設定により、不使用が長時間にわたった場合の通知も可能にした。居酒屋などの飲食店では泥酔者によるトイレの「占拠」を防止できるほか、介護施設などでは入所者や利用者の事故防止に役立てられる。
また、高齢者の独居世帯に設置して不使用通知を設定すれば、孤立による放置状態を防ぐことができる。
高齢化が進む社会では、インフラともなりえるアイテムだ。(松本良一)
ノーズフー=http://www.knowswho.co.jp/