北海道十勝平野の拠点都市である帯広市の中心街の一角に「平和園」という店名で店舗を展開する外食企業がある。
この会社の驚くべきは、１９７０（昭和４５）年の設立から今日までの４２年間にわたって撤退店が一店舗もないばかりか、ずっと黒字で売上高経常利益率が３％以上を維持している超優良経営を成し遂げていることである。
◆年４０万人来店
主事業は焼き肉レストランの経営で、現在、店舗数は本店のある帯広市を中心に十勝平野に６店舗、札幌市に３店舗の計９店舗を数える。年間来店客数は４０万人以上という。
同社は、現社長の新田良基氏が、実父の経営するホルモン焼き店をいったん整理し、７０年に再スタートした。
焼き肉店を手がけるようになったきっかけは、当時、全般的に焼き肉店はそこそこ繁盛していたが、多くの店は不親切な配膳（はいぜん）や接客サービスで通していた。
新田社長は、こうした商売を見るにつけ、顧客が納得できる価格と親切丁寧な接客サービスを提供すれば、必ず焼き肉店はもっと繁盛すると考えた。加えて、新田社長自身が貧困な生活の中で育った体験から、食を通じて人々に喜ばれる事業を手がけたかったという。
同社は設立当初から、この経営方針を貫き努力を重ねた結果、現在、売上高が約１１億円、社員数は１６０人（うち、パート１００人）と、今や北海道を代表する焼き肉店として高い評価を得るまでに成長発展している。
◆驚きの低価格
帯広市を訪れた際、本店で食事をする機会があったが、焼き肉の味と値段、さらには接客サービスに魅了された。なぜ、このような質の高いサービスを提供できるのか。その理由を新田社長に聞いたところ、牛肉は全て地元の十勝牛で、しかも、肉の加工は全て肉職人の手切りという。
１５年以上のキャリアをもつ肉職人が、肉を一枚ずつ丁寧に切り落とし、余分な脂身を取り除きながら切り分けている。だからこそ、肉は柔らかく、しかもボリュームがあるのだろう。
味付けは、顧客の注文ごとに肉の状態に合わせて１２種類の調味料を調合した「秘伝のたれ」をもみ込む「一丁付け」という手法を取っている。
品質にとことんこだわっているにもかかわらず、値段はというと、想像を絶する安さである。例えば、地元十勝牛の「サガリ（ハラミ）」が５５０円、ジンギスカン定食に至っては何と５００円、しかも、この値段は２０年以上も変わらないという。余談だが、焼き肉に食べなれた筆者の研究仲間は「あまりにも良心的過ぎる」と目を丸めた。
こうした頑張る地方の外食産業を見ると、経営の問題は外ではなく内にあると痛感させられる。
【会社概要】
アタックスグループ
顧客企業１７００社、スタッフ１７０人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。
「フジサンケイビジネスアイ」
