WIPジャパン株式会社 代表取締役会長 上田輝彦氏
日本にいながらもっと世界中とビジネスができる
日本企業の「グローバル化」「多言語化」をワンストップでサポート
- 創業の経緯について教えてください
- 弊社は、世界410の都市に拡がるネットワークを活用し、官公庁・地方自治体・国内外有力企業・調査研究機関など約6,200(2015年3月現在)の顧客に、高度な多言語運用力が必要とされるサービスを提供し続けています。私自身は、大学卒業後、住友銀行に3年勤務した後、英国のケンブリッジ大学大学院に留学しました。その時に知り合った友人と銀行時代の同僚の3人で1995年に「もっと理解しあえる世界をつくりたい」を理念としてWIPジャパンを創業しました。
- 創業当時に大阪市がオリンピックの招致活動をしており、海外の先行事例の収集・分析・レポーティングの仕事を受けたことがきっかけで、海外リサーチが自社ビジネスとして基盤となりました。当時は、Eメールも普及していませんでしたので、海外から紙ベースで過去のオリンピック委員会がまとめた資料を日本に取り寄せて読みながら「どんな準備をしたら良いか」などを報告書にまとめるという仕事でした。
- 海外の事例を取り扱うので、分析・レポーティングの作業には、翻訳を伴います。当時は創業メンバー3人で翻訳を行いました。そのうちに夜も眠れないほど忙しい状況になり、プラットフォーム戦略を採り入れることにしました。
- つまり、国内外のリサーチャーや翻訳者をネットワーキングし、我々は各案件をネットワーク内で業務分担したり進捗管理したりする、いわばプロデューサーの役割に徹するようにしたのです。
- こうすることで、世界中の企業や専門家と連携して対応できるため、大量であったり緊急であったりの依頼に対しても、迅速かつ高いレベルで安定した品質の成果物を納品できるようになりました。
- その後、顧客からの「こんなこともやってくれないか」ということを断らずに引き受けている内に業務範囲は多岐に拡がり、現在ではWEBサイトの多言語化、専門性に加えて多言語能力を兼ね備えた人材の紹介・派遣なども手掛けており、「多言語ビジネス支援NO.1」企業として、インバウンド・アウトバウンドにかかわらず、顧客のビジネスのグローバル化と多言語化に必要なソリューションやサービスをワンストップで提供しています。
- 最近の傾向について教えてください
- 最近の傾向としては、インバウンドに対しての対応、対策への相談が圧倒的に増えています。弊社では「訪日前」「移動中」「訪日中」「帰国後」の4つのシーンに分けて、それぞれにおいて必要な施策を列挙、さらに各施策に必要なソリューションやサービスを提供できる体制が整っています。
- いくつか例を挙げると、例えば「訪日前」では、初めて訪日する観光客は、訪日前に現地で「日本に行ったらどのお店に行くか」、「何を買うか」をかなり細かく決める傾向にあります。そうなると重要なのは、彼らがインターネット検索したときに検索結果上位でヒットすることであり、彼らが普段接するメディアで取り上げられていることです。弊社では、そうした状況になるように、多言語での検索エンジン対策や海外メディア向けのPRの支援をしています。
- また、「訪日前」から「訪日中」のシーンでは、日本の量販店に対して、予約購入システムとECショップの導入を提案しています。これにより、訪日外国人は現地で買いたい商品を予約し、店舗訪問時には商品を受け取ってすぐに免税手続きが完了します。店舗にとっても事前に受注状況が把握できるため、欠品がなくなり、受け渡しの手間も大幅に簡素化できます。
- さらに帰国後のソリューションも提供しています。メールアドレスを取得し、帰国後に現地の友人などに口コミが広がる仕組みづくりや、「もう一度食べたい」「もう一度買いたい」というニーズに応えるECショップの構築を支援できます。こうした施策を実施することで、再訪を促したり、越境ECにより商品を継続購入してもらったりすることが可能となります。
- 今後について教えてください
- 現在は、日本にいながらにして世界中とビジネスができる時代です。例えば、自前のECショップを持たなくても、アマゾンやイーベイなどを活用すれば、世界中に商品を販売することが可能です。越境ECに限らず、あらゆるビジネスにおいて、ITと言語を組み合わせることで、ボーダレスで柔軟な事業モデルを設計・構築することができます。
- そういう点で、経営層・上級管理職層に、世界のITと言語を組み合わせた最新の動向を伝えていきたいと考えています。経営層・上級管理職層が自ら直接作業をするわけではありませんし、またその必要もないのですが、正しく理解していなければ、的確な判断はできませんし、現場に適切な指示もできません。
- 最近、経営者を対象にしたインバウンド関連・越境EC関連のセミナーを開催しましたが、定員を大きく超える参加がありました。それだけ、多くの経営者のグローバル化への意識が高まっている証拠だと思います。
- 弊社のプラットフォームを活用すれば、市場をかなり細分化して捉えることができます。つまり国という単位ではなく、都市という単位まで絞り込んで、その市場に最適な商品設計や販売戦略を立てることが可能です。大企業から中小・ベンチャー企業まで、予算やニーズに応じてソリューションを企画・提供できるということです。これからもこの強みを活かし、「多言語ビジネス支援No.1」を軸に、より多くのビジネスのグローバル化を支援していきたいと考えています。
福井県出身。実家は兼業農家。中高では卓球選手。上智大学在学中、欧州各国や中国等を跋渉。その後住友銀行(大阪)、英国ケンブリッジ大学大学院留学を経てWIPジャパン株式会社を創業。「グローバルビジネスほど面白いものはない」が信条。