株式会社ANGEWORK 代表取締役   桐生雄洋

実現方法が確立していないニッチ分野のR&Dに強み

最近力を入れて取り組んでいることは何ですか?
測地サービス事業者から、ドローン開発および点群(3Dスキャンなどで得られる、無数の点から構成される3次元データ)情報の視覚化等の処理を受託しています。ROS(Robot Operating System)ベースのドローン制御システムの構築にC++実装で対応しているほか、ドローンに搭載した「Lidar(レーザー画像検出と測距)」で取得したダムや橋梁などの工事現場などの点群情報を、Web向け3D描画システムで視覚化する処理を行っています。
点群情報の視覚化についてはUnityやWebGLなどを用いたマルチプラットフォームに対応しており、各種の測地アプリを組み合わせたサービスを構築しているほか、オープンソースの測地解析システムの修正や機能強化も手がけています。
最新のIT分野の受託開発を数多く行っています
たとえば、体に装着したセンサーから無線でデータを送信しモーションキャプチャーを行うBlueTooth対応の「ワイヤレスモーションキャプチャーシステム」のデモンストレーション開発や、スマートグラスを利用した工場向けIoTデバイスの実用化開発を行いました。
また、3Dプリンタでも使われるSTL形式のファイルをUnityで表示可能にする自社開発のプラグイン「Runtime STL Loder」が、3Dデータをクラウド医療サービスに利用するiPad向けの歯形管理アプリのエンジンとして利用されており、多数の歯科クリニックに導入されています。
VR(仮想現実)/AR(拡張現実)技術で住宅展示会会場をバーチャル空間化し、ゲームコントローラーで仮想空間の中にある建物内部を移動できるシステムも手がけています。
そのほか当社は、UnityやHTML5、CSS3による2D/3Dゲームや業務用アプリの制作・販売なども行っています。
独自の西洋占星術サービスも提供しています
NASAの天文情報を搭載した占い専用エンジン「MoonFace」を開発し、ホロスコープを10年間運用してきた実績があります。これをもとに、2016年1月に「ANGEWORKの西洋占星術」の提供を開始しました(利用無料)が、月間PVが約8万と好調です。
自分が生まれた年月日と時間を入力するだけでホロースコープを作成可能。HTML5に対応しているため、環境依存がなく、OSを問わずにスマートフォンやタブレット端末、PCなどでホロスコープを表示することができます。
正確な惑星の運行情報とAIにより、世界的にも例が少ない「AI占い師」が運勢を執筆しているのが大きな特徴。現在はAIが大枠の文章を作り、それに私が手を入れていますが、将来的には、占いの結果を記した文書を、ディープラーニング(深層学習)ですべて自動生成することを目標にしています。
「ANGEWORKの西洋占星術」はIoT環境にも移植可能で、小型シングルボードコンピュータ「ラズベリーパイ」に同サービスのソフトウェアを組み込み、AIを搭載した小型デバイスを開発中。たとえば店舗でお客様と対面して占いを行う際、カメラが捉えたお客様の画像の解析結果も加え、アドバイスやラッキーアイテムなどを表示できる独自のシステムの提供を目指しています。
御社の強みは何ですか?
データの軽量化を得意にしています。起動環境やプログラムのコードを含む一連の処理の流れの中で、何が動作を阻害するボトルネックになっているのかを1つひとつ検証し、スマートフォンやタブレット端末などのパワーが低いハードウェアでも、ソフトウェアが快適に動作することを心がけています。
そのためには、小型シングルボードコンピュータにしても、回路の各部位にかかる電流値や電圧が適正かどうかということから、プログラムのコードが本当に正しいのか、きちんとコンパイルされているのかということまで、ソフトウェアだけでなくハードウェアも含めてトータルに考えることが不可欠。
こうした考え方をふまえ、上流工程から下流工程までトータルに提案を行うことができるのが当社の強みです。
今後、どんなことに挑戦していきますか?
たとえば、ロボットの開発環境として利用されているROSが、IoT分野の開発に活用されるケースが増えてくるでしょう。その点、ROSベースのドローン制御システムも手がけている当社は、今後この分野でも大きなアドバンテージを発揮できると思います。
またロボット開発については、産業用ロボットや人型ロボットのようなハードウェア寄りのものではなく、シングルボードコンピュータにIoT機器を接続し、そこから指示を出してIoT機器の制御を行う、ソフトウェアとしてのロボットへのニーズが高まる可能性があり、当社も今後そこに注力していきます。
たとえばスモールビジネスに向けて、小型のシングルボードコンピュータにカメラを接続してズーム操作やパン操作を行い、ARも活用して店舗内の商品を管理するといった、ロボット制御を活用したシステムなどを提供できるようになるでしょう。
「新技術にチャレンジし、実用化する」ことが当社のモットー。私たちが得意にしているのは試作設計で、最初に理論を構築し、雛形を作って量産設計に引き継ぐためのプロトタイプを作るR&Dに力を入れています。「実現方法がまだ確立していない」「どこに頼んでいいかわからない」といった案件に積極的に取り組んでいきたいですね。
当社がこうしたニッチな先端分野に取り組むことで、若手の開発者にチャレンジする機会を提供し、彼らが最新技術にどんどん挑戦して成果を出していける「ラボラトリー」を作りたいと考えています。
私がかつてお世話になったソニーの設立趣意書に書かれている「自由闊達にして愉快なる理想工場」のように、エンジニアが失敗を恐れずチャレンジができ、幸せに働ける会社を築き上げることを目標にしています。
インタビュー:ジャーナリスト 加賀谷貢樹
1989年4月に電力会社に入社し、人事労務システムや原子力発電所内における業務の機械化等に従事。2000年5月より、ソニーでBlu-Rayの国産第1号機やDVDレコーダー、「BRAVIA」の開発などを手がける。2007年に起業し、2011年4月に株式会社ANGEWORK(エンジェワーク)を設立。代表取締役に就任し、現在に至る。

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