一般社団法人日本中小企業情報化支援協議会 理事 事務局長 森戸裕一氏
中小企業の未来図を描くビジネスプロデューサーを発掘、育成
取材日:2011年4月18日
- 協議会の業務内容について教えて下さい
- 日本の経済を支える全国の中小企業の情報化を支援すると共に、専門性の高いビジネスプロデューサーの育成、派遣を行っています。協議会は昨年7月に発足しまして、10月に一般社団法人日本中小企業情報化支援協議会として再スタートしました。私たちが目指すのは単なる企業の情報化コンサルティングではありません。中小企業の未来図を描ける専門家の育成・派遣で、私たちはこの専門家をビジネスプロデューサーと呼んでいます。
- 協議会のコンサルティング事業の特色は何ですか
- 中小企業に対する情報化支援と言っても決まったパターンに基づいたコンサルティングをするということではありません。例えば企業がISOを導入する時には、ISO規格に則った機構改革、人員配置から規則化された文書作成方法まで、予め決められた形が厳格に決まっていて、この規格に沿ったやり方に企業を当てはめていくやり方です。私たち協議会が行うコンサルティングはこのような決まった型に企業をあてはめるという事は致しません。それぞれの企業の持つ歴史や文化から独自性、また、その企業にしかないオンリーワンの良さや強みを引き出し、企業が末永く発展出来るような「ビジョニング」を描くお手伝いをするのです。この「ビジョニング」を企業に描いてもらう力を引き出す仕事が、私たちが提唱する「ビジネスプロデューサー」なのです。
- 支援対象は中小企業だけですか
- 私たちのコンサルティングは中小企業がメインですが、大企業さんの経営情報化のお手伝いも致します。しかし、どんな中小企業でも支援するかいうとそうではありません。当たり前ですが全国の中小企業の経営情報化を支援できるわけではありませんし、中小企業でも成長したいという意欲が無い企業や経営者は支援しません。成長したい、変わりたいという意識の高い企業をサポートしていきたいと思っています。
- これからの企業に求められる大切な事は何でしょうか
- 企業経営に必要なことはスピードです。迅速な意思決定のスピード、意思決定を行動に移すスピードがあるかないかが勝敗を決めると言っても過言ではありません。スピードの大切さは以前から指摘されていた事ですが、今回の東日本大震災でこのスピードの重要性はますます高まったと言えるでしょう。経営スピードに欠かせないものは素早い意思決定を可能にする経営判断材料(情報)が手元にあるかどうかです。つまり、企業経営のスピードをささえるのが情報化であり基盤としてのクラウド環境が欠かせないのです。
- 東日本大震災が変えたものについてお聞かせ下さい
- 先の東日本大震災は私たちのライフスタイルを大きく変えたと思っています。こらから企業経営や働き方も大きく変わらざるを得ないでしょうね。例えば毎日朝8時に出社して夜9時に帰ってくることにどんな意味があるのか。毎朝満員通勤電車に乗って会社に行かなくても会議はWeb上で出来ますね。顧客との連絡も今ではメールが当たり前になっていますし、会社に行かなくても直接営業先に行った方が効率的です。日本では副業を禁止している会社も多いと思いますが、副業で稼ぐには能力も必要ですし新しいビジネスの可能性だって広がりますね。このようにこれまで当たり前と思われていた会社の常識が非常識になるという事です。今回の震災で様々な事がドラスティックに変わっていくと思っています。過去の延長線上をなぞっていくことで得られた成功が、震災で分断されてしまったのです。これからは全く新しい考え方、以前にも増したスピード力が求められると思っています。
- こんな時代に会社に求められるものとは
- 先程も申し上げましたが、これからの会社経営で大切なことはその会社の将来のあるべき姿、つまりビジョンを描けるビジョニング力があるかどうかという事です。これまでのやり方の延長上にもはや繁栄はないと知るべきです。特に、中小企業は革新的とも言える新しい経営の姿を描けるビジョニング力を持たねば淘汰されてしまうでしょう。私たち協議会はこのビジョニングが出来る「ビジネスプロデューサー」を今年度中には500名にしたいと思っています。またビジネスプロデューサー同士もクラウドを基盤として横の連携を取れるようにします。
- 支援機関としてイノベーションズアイではどのようなことをして頂けますか
- 私たちは、これまで沢山の中小企業の情報化支援を行ってきました。そして多くの成功事例も作ってきました。例えば、中小企業が中国へ進出したいという場合、巷のセミナー等でアドバイスされるのは大企業が進出してこうして成功しましたというお話です。しかし、この成功例は大企業だから成功できたという要因が決して少なくはありません。大企業が成功したからといって同じような方法で中小企業が進出しても失敗する危険は高いでしょう。また、進出した当時の中国と今の中国の事情も変わってきていますから。中小企業はブランド力も資本力もありません。当然、相手国のインフラも当時と今では違ってくる。中小企業が進出で成功したいのであれば、同じような中小企業の成功事例から学ぶ方が遥かに参考になります。私たち日本中小企業情報化支援協議会では、これまでの中小企業へのコンサルティングを通じて得たノウハウ、成功体験情報を全てベータベース化していますので、中小企業によりマッチした的確なコンサルティングが出来るのです。是非、成長意欲のあるイノベーションズアイ会員企業の皆様のお手伝いが出来ればと思います。
- 最後にこれからの取組についてお聞かせ下さい
- 今後は公的団体との連携を強化していきたいと思いますね。公的団体のアウトソーサーになりたいと思います。例えれば商工会議所的な存在といいますか、地域の振興役たる優秀なコーディネートでもありたいと願っています。公的団体の刺激剤として良い変化(ブレイクスルー)を起こせるような存在を目指していきたいと思います。
略歴
全国5万社の中小企業の情報化支援を行い、中小企業の情報化支援のパートナーとして事務機器販売会社、システム販売会社の営業改善を支援し、全国の中小企業経営者、事務機器販売会社の営業担当者から絶大なる信頼を得ているコンサルタント。
お客様の経営改善を第一に考えた共存共栄のサバイバル営業力強化戦略、お客様視点の売れる営業担当者研修などでクライアント企業の業績改善の成功事例を多く持つ。
「情報化白書」の執筆や大学でも教鞭をとり、業界でも注目される営業力強化支援コンサルタント。