独立行政法人 中小企業基盤整備機構
新事業支援部 インキュベーション事業課 課長 中澤 孝雄氏/大原 隆義氏
今、必要なのはネットワーク

取材日:2011年8月29日

    
中澤 孝雄氏                   大原 隆義氏

どのような組織で、どのような支援をされていますか。
 経済産業省関連の独立行政法人です。国の政策を担う全国組織として、中小企業・ベンチャー企業に対し、さまざまな形で支援を行っています。メニューは非常に幅広く、インキュベーション支援、ファンド出資、経営革新の支援、人材支援、海外展開支援、共済事業やセーフティーネットという形での支援もしています。
 その中においてインキュベーション事業は新しい企業を生み出していくことを目的としています。昭和の頃のように、会社規模だけを大きくして行けばずっと継続できる、という時代は終わりました。現在は新陳代謝を図り、新しい企業を創出していかなければ国の経済・企業活動は維持して行けません。しかし、中小企業・ベンチャー企業がご自身で持っている技術や経営資源、情報だけでは国際競争の厳しいなか、成長していくのはなかなか難しい。私どものインキュベーション施設では、安い事業スペースを提供するとともに、大学との連携・企業間の連携など、さまざまなネットワークによるサポートをしながら企業の成長を促していきます。これからの日本を背負っていくような、新しい企業の芽をできるだけ多く育てていきたいと考えています。
組織の特色は。
 全国組織ということです。我々は、全国で、32のインキュベーション施設を運営しています。例えば一拠点だけですと、そこでの情報や連携での繋がりだけになってしまいます。中小企業・ベンチャー企業も最初のスタートはその地域であっても、自分たちの経済活動を継続して行くためには、さらに幅広い連携やスキームが必要になります。その場合、全国組織というメリットは活かせると思います。もうひとつは経済産業省の独立行政法人ですので、政策の方向性がダイレクトに伝わり易い、という所です。例えば国が力を入れている海外展開支援においても連携・コーディネートがすぐに実施できます。
今、企業に求められことは何ですか。
 中小企業・ベンチャー企業が継続して成長していくために必要なことは、言葉で言うなら「ネットワーク」です。現在、企業を取り巻く環境は、速く、複雑に変化しています。さまざまなことが4~5年サイクルでどんどん変化していきます。事業に直接関係する分野の情報だけでは、今後の成長はできません。ネットワークによる対応が重要になっています。
今、元気がある分野は。
 環境テクノロジー関係に新規参入する方は多いです。異分野から参入してくる方もかなりいます。理由としては、マーケットに期待性がある、という所だと思います。
起業される方は減っていますか。
 減っています。理由のひとつとしては資金の問題があります。やはり、リーマンショック以降、ベンチャー企業の資金調達は厳しくなっています。また、マーケットに新しい動き・ダイナミックな動きが出てきていない、ということだと思います。その中で比較的動いているのは、先程話した環境分野です。
今後の取り組みを教えてください。
 ネットワーク事業を強化していきます。今、必要なことはやはりネットワークです。企業だけではなく我々にとっても重要です。我々にネットワークが無いと支援の幅も狭まります。他の支援機関との連携・ネットワークも今後さらに強化していきます。また、今年から、複数のインキュベーション機関が共同で新事業創出に取り組む「BIネットワーク構築支援事業」を実施しています。
 もうひとつは、今後避けられないであろう、中小・ベンチャー企業の国際化です。単に海外移転を促進している訳ではありません。レベルを上げていかなければならない、という意味です。海外の状況をふまえて、企業にとって一番良い選択肢を選べるような環境を整えるのが、我々の役割だと考えています。
会員にメッセージをお願いします。
 現在マーケットが停滞している部分があると思いますが、その中で何か新しいことをしなければならない時が出てきます。ずっとこの状況が続く訳ではありません。チャレンジをすることが必要な世の中になってくると思いますし、チャレンジが評価される世の中になってほしいと思います。当機構としても、できる限り支援させていただきますので、是非とも我々に相談して下さい。

略歴

中澤 孝雄氏
新事業支援部 インキュベーション事業課 課長
平成62年地域振興整備公団入団。地域開発・産業振興業務、対日投資促進・外国企業誘致業務(英国勤務)等を経て、平成11年以来賃貸型事業施設(インキュベーション施設等)運営事業に携わる。また、中小機構発足後は、東大柏ベンチャープラザ、東北大学連携ビジネスインキュベータの立ち上げ並びにチーフ・インキュベーション・マネージャーに従事し、インキュベーション施設の運営、ベンチャー企業・中小企業の新事業展開を支援。 平成23年1月から現職。

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