クリナップ株式会社 代表取締役 社長執行役員 竹内 宏
クリナップが挑む「変革と創造」
システムキッチン35年ぶりブランド刷新
- 住設機器大手のクリナップは10月5日、創立70周年を迎えた。座卓製造から流し台や洗面台など水回り設備に進出。一体型キッチンをシステムキッチンと命名し、手ごろな価格帯で供給することで大きな成長を果たした。世帯数の減少など市場の先行きは楽観できないが、主力製品の刷新、富裕層向けサービス拡充、海外市場の開拓など再成長へ着々と布石を打ちつつある。就任2年目の竹内宏社長は、「変革と創造」をキーワードとした中期経営計画を進めながら、顧客重視の生販体制の再構築を自身のミッションと位置付けている。
- クリナップ70年の歴史をどう受け止めているか
- 「創業者の井上登氏が欅(けやき)の座卓を製造販売したのが当社の始まりだ。その後、高度経済成長期に団地や戸建て住宅向けにステンレス製の流し台を供給、1973年に流し台やコンロ台などを1枚のワークトップでつなげ統一したデザインで一括納入する製品群をシステムキッチンと名付け開発。当初は1セット150万円以上していたが、1983年に50万円台の‘’買えちゃうシステムキッチン‘’「クリンレディ」を投入して拡販に成功した。ジャストインタイムの生産方式、サプライチェーンマネジメントも導入しながら、消費者によい製品を手ごろな価格で供給してきたと自負している」
- 市場はどう変わってきたか
- 「以前は大工の棟梁や問屋にカタログを渡しておくだけで商売になった。現在はハウスメーカー、リフォーム業者、ホームセンター、エンドユーザーへの直販など販路が多様化し、価格面、機能面、デザイン含め高い競争力が必要になっている。また、国内市場は世帯数の減少を背景に新設住宅着工件数などは縮小が見込まれ楽観視はできない」
- 大胆な戦略が必要だ
- 「昨年、主力である中高級価格帯システムキッチン「クリンレディ」を35年ぶりにブランドチェンジし、新たに「STEDIA(ステディア)」を投入した。ステンレスキャビネット、スライド収納、自動洗浄機能付レンジフードなどの機能性を向上させ、戸建てや分譲・賃貸マンション、高級アパートなどの顧客側の内装に合わせたカラーやデザインをより選択できるようにした。足元では消費増税前の駆け込み需要もあり、販売数は想定より伸びている。顧客への調査によると、やはり機能面で評価が高いようだ。価格競争力もあり、収益面での寄与は大きい」
- 他社との提携などは
- 「イタリアのプレミアムキッチンブランド「バルクッチーネ」と取引契約を結び、日本初となる専用ショールーム「Valcucine Tokyo」を東京・南青山で展開中だ。タワーマンションなどに住む富裕層を開拓したい」
- クリナップは創業家や開発・製造出身のトップが続いた。営業畑から初の社長となるが、自身のミッションをどうとらえている。
- 「モノづくり企業としての成功と長い歴史は誇るべきものだが、工場や開発部門を中心にややマンネリ感が強まり、チャレンジ精神に欠けると感じていた。顧客の多様なニーズは一次的に営業部門に入ってくる。これを開発や製造部門で共有し、新たな商品・サービスを作り上げ、スピード感をもって投入していく。各支社や部署にヒト、カネ、モノの決定権を委譲したり、役員の数を減らすなど社内の風通しをよくする取り組みを始めている。2020年までの中期経営計画では「変革と創造」をキーワードとしており、従来の慣習や聖域にとらわれずチャレンジしていきたい」
- 海外展開の状況は
- 「システムキッチンなど住設機器は輸送コストが高く、関税などの障壁もあり日本からの輸出で採算をとるのは困難だ。現地企業との競合も激しい。ただ、国内市場の縮小が避けられないなか、海外での生販体制の構築は不可欠だろう。他社との連携も含め、大胆な戦略を検討していきたい。東南アジアを有望市場とみている」
- 国内では働き方改革なども求められている
- 「当社では一部のショールームで土曜日を休日にしたり、雇用延長者を起用しながら気兼ねなく休みが取れるシフトを組むなど工夫している。スポーツ振興や社会貢献活動にも積極的に取り組みたい。女子レスリング76キロ級で当社所属の皆川博恵選手が東京五輪の代表内定を獲得した。障害者雇用促進法に基づく特例子会社のクリナップハートフルを中心に障害者雇用にも取り組んでいる。企業として社会、地域に何ができるか、今後も思案していきたい」