一般社団法人フィンテックガーデン 事務局長(日本融資アナリスト協会事務局長を兼務)   井上 達也

企業融資・資金調達のプロのための「融資アナリスト」認定資格

日本融資アナリスト協会(JFAA)では、正しい融資知識を持ち、適切な融資や資金調達などをアドバイスできる「融資アナリスト」を育成している。国内のフィンテックデータを統合する共通プラットフォーム「フィンテックガーデン」を構築・運用するフィンテックガーデンが、同協会を設立した。企業の融資および資金調達の環境の変化にともない、融資アナリストはこれから社会により必要とされる存在になっていくという。

最新の知識と情報にキャッチアップした融資のプロ

――融資アナリストとはどんな資格ですか?
融資アナリストとは、日本融資アナリスト協会(JFAA)が年2回実施する資格試験を通じて、企業に対して融資や資金調達、資金繰りなどのコンサルティングを適切に行うために必要な知識・情報を保有していることを認定する資格です。
企業向けの融資、補助金・助成金を対象に、財務諸表を読み解き、適切な融資や資金調達、資金繰りなどをアドバイスできる正しい融資知識の持ち主が、融資アナリストということになります。
――融資アナリストが力を発揮するのはどんなときですか?
まず、日本政策金融公庫にしても、融資を受けるための要件を読み解くこと自体が大変な作業です。そこに書かれていることが、具体的に何を意味しているのかを理解するには専門知識が必要で、素人が読んでも、一体どんな人たちがその要件に当てはまるのかがわかりません。これは補助金や助成金についても同様です。
また、財務諸表を正しく理解できている中小企業の経営者はそれほど多くありません。たとえば節税に励んだ結果、かえって財務内容が悪化し、金融機関からの融資が受けられなくなることもあるのです。
節税しすぎたために利益が少なくなり、融資を受けるための条件を満たせなくなるケースがあります。また、行きすぎた節税により、意図しない資金繰りの悪化を招き、融資条件を悪化させてしまうこともあります。
その意味で、最新の融資情報に精通し、財務諸表を読み解く高い能力を身につけ、融資に関する適切なアドバイスができる融資アナリストの役割は大きいと思います。
加えて、金融機関から融資を受ける場合、信用力に差がある大企業と中小企業では、条件が異なる点が数多くあります。そのため、大企業に対しては正しい融資知識が、中小企業には不正解となる場合も少なくありません。
融資アナリストは、業種や事業内容、企業規模の異なる企業に対して適切なアドバイスを行える融資知識を持つ専門家です。

時代の変化の中で高まる融資アナリストの役割

――なぜ、融資アナリストの役割が重要なのですか?
まず、融資の姿が大きく変わっているということが挙げられます。昔は金融機関の担当者が一軒一軒飛び込みで企業を訪問し、決算書を見せてもらいながら融資についての商談をしていました。ところがコロナ禍の影響で、こうした従来の営業活動もなかなかできなくなっています。
そのため国内でも、クラウド型の会計ソフトなどから企業の会計データを取得し、AIで分析を行って融資額や融資条件を決定し、自動的に融資を行う「バランスシートレンディング」も始まっています。
また最近では、昔のように、担保がなければお金を貸さないということもなくなってきています。銀行側と交渉し、金利を調整することで連帯保証を外すこともできるようになっています。信用保証協会の保証なしで、銀行自身が貸し倒れリスクを負う「プロパー融資」も行われています。
このように、われわれの目につかないところで融資は大きく変わっていますし、今後もっと変わっていくと思います。
ところが、知識や情報が古く、制度などに対する理解が不足したまま、融資コンサルタントや資金調達コンサルタントとして企業にアドバイスを行っている人がいるのも事実です。中には、詐欺的な行為を行っているケースもみられ、この分野の専門家は”怪しい”と思われることさえあります。
いわゆる詐欺的行為の中には、補助金や助成金の制度などに対する知識不足から、結果的にクライアントに誤ったアドバイスをしていたというケースがあるのも事実です。
そこで、融資や資金調達の適切なコンサルティングを行うための、正しい融資知識を身に着けてもらうため、検定試験と資格制度を作ろうと考えました。
つねに最新の知識や情報にキャッチアップするため、日本融資アナリスト協会が年に1回実施するブラッシュアップセミナーを聴講しなければ、融資アナリストの資格継続はできません。
――検定試験にはどんな問題が出題されますか?
たとえば財務諸表に関して、キャッシュフロー計算する問題もありますし、融資や補助金などの制度に関する問題もあります。
制度については、新型コロナウイルス感染症の影響で、前年度より売上が減少した事業者に対する補助金の支給要件に関する問題が出たり、公的金融機関の融資を受けている方に対して、国が今年度実施している利子補給制度として、間違っているものは何かといった問題もあります。
この分野の権威で多数の著作を持つ、当協会の理事などの専門家が問題を作成。試験問題は当協会が指定する専門の書籍や、Web動画で配信しているセミナーの講義内容の中から出題されます。
――どんな人におすすめの資格ですか?
受験者が最も多いのは税理士の方ですが、今問い合わせが多いのは保険代理店ですね。企業や経営者から寄せられる融資や補助金・助成金獲得の相談に対し、適切にアドバイスを行える知識を身に着け、差別化につなぎたい。そのために融資アナリストの資格を取得したいというニーズがあるそうです。
融資アナリスト資格を取得することで、企業向けに融資や資金調達のコンサルタントを手がける方の、社会的な信用度が高まるような資格にしていきたいと思います。
井上 達也(いのうえ・たつや)
一般社団法人フィンテックガーデン 事務局長(日本融資アナリスト協会事務局長を兼務)
1985年 法政大学経営学部卒
1985年 株式会社日本デジタル研究所 入所
1991年 株式会社フリーウェイジャパンを設立し代表取締役に就任
2019年 一般社団法人フィンテックガーデン 事務局長に就任
2020年 DX診断士協会 事務局長に就任 
2022年 日本融資アナリスト協会 事務局長に就任

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