一般社団法人あんしん財産管理支援機構 代表理事   黒田 泰(オーシャングループ代表を兼務)

身寄りのない高齢者の財産管理・死後事務をあんしんサポート

――オーシャングループの事業内容は
オーシャングループは現在、相続遺言などを専門に扱う司法書士や行政書士の士業部門を中心に、不動産事業(相続で発生した不動産売却をサポート)や、リーガル・プラットフォーム事業(葬儀社の相続専門コールセンターを通じて、全国280の行政書士・司法書士・税理士に相続相談をマッチングする)など、独自の事業を展開しております。このなかで、独り身の高齢者が安心して生活できる社会の実現するため、身元保証事業(独り身の高齢者の身元保証人となって家族代行をする事業)にも積極的に取り組んでおります。その中で、独り身の高齢者の財産を健全に管理・監督する一般社団法人あんしん財産管理支援機構を展開しています。
――独り身の高齢者をサポートする団体を立ち上げる
私はもともと東証一部上場の経営コンサルティング会社に勤務し、そこで司法書士、行政書士、税理士といった法律家向けのコンサル事業を立ち上げ、特に相続遺言・生前対策の分野におけるマーケティングの第一人者として、高齢者向けの法律関連事業に専門的に取り組んでおりました。この中で、2008年頃に独り身の高齢者にまつわる問題がある事を知りました。具体的には、身元保証人をお願い出来ないで困っている高齢者がいること、この方は葬儀供養を手配する人がいないこと、またその葬儀供養を死後に手配する原資となるお金の管理方法が確立おらず、これが社会問題となっている事を知りました。
私はこれをなんとかしようと格闘し、2011年に某司法書士法人が運営する社団法人を通じて、日本初となる法律家が行う健全な身元保証スキームを構築しました。その後、2012年には、自らも起業してオーシャングループを立ち上げ、この中で身寄りのない高齢者支援をする団体(いきいきライフ協会)を立ち上げました、これは現在、身元保証相談士®という任意資格を通じて全国の同業者に参画いただき、全国76拠点で展開しております。
――健全な身元保証スキームの構築
“お独り身の高齢者様”向けの身元保証サポートは、老人ホームなどの高齢者施設の入居時や入院時のサポートが中心となります。高齢者が施設などに入居する場合、身元保証人が必要となり、一般的にはご家族になってもらうことが多いのですが、身寄りのない方は頼める人がいません。さらに、入院した際の手続や自分自身が亡くなった後の葬儀、供養、部屋の片付けなどの死後事務の手続きなどはどうするのか、といったことが問題になります。
これを誰かしらに依頼して対応してもらう必要がありますが、その方式や契約形態、サービス範囲が明確では無いため、たびたび高齢者の財産の使い込みや横領が起こってしまう状況にありました。現在でも、消費者庁に身元保証に関するサービスや不正に関する相談が絶えない状況があるようで、これがまさに社会課題となっております。
こうした身元保証に関する社会問題の解決を目指して、オーシャングループでは、2020年に前述の身元保証相談士協会および「身元保証相談士®」という任意資格を作り、明確に公正証書を作成して高齢者支援の内容を契約すること、高齢者の身元保証人となるも、その代償として多額の寄付金を受け取らない事、きちんと信託口座を通じて預託金を管理すること等を定めて、健全な身元保証スキームの構築に取り組みました。
この中で、信託口座の受付窓口と高齢者からの預託金を管理する業務を担うのが、今回の「一般社団法人あんしん財産管理支援機構」の役割となります。こうした取り組みは、奇しくもオーシャングループにおいて、2020年3月末から新型コロナウイルスの影響で高齢者向けの相続遺言などの仕事が激減し、このタイミングで一気に身元保証業務を健全化させる取り組み(身元保証相談士協会の設立など)が一気に進むことになりました。
――これまでのサービスとの違いはどこにあるか
まず、2020年に身元保証相談士という任意の資格団体をつくりました。一般社団法人あんしん財産管理支援機構もこれと同時に設立。独り身の高齢者から、亡くなった後に必要となる葬儀費用や死後事務手続き一式の費用を信託口座に預けますが、その窓口業務と管理・監督を一般社団法人あんしん財産管理支援機構が担当します。
私たちのスキームは、寄付金を受け取らない形でお独り身の高齢者様を支援する仕組みとなっております。私たちはあくまで一般企業と同様の時間単価による報酬を得るモデルで、財産の使途はあくまでも契約者の意向に沿います。つまりは、他人の財産はあくまで他人の財産であり、管理こそすれ、それを亡くなったからと言って全額を受領します、というモデルではありません。(現在の身元保証事業者は、寄付金を受領する団体が大半となります)
――高齢化社会はますます進み、需要は増える傾向
いまでも高齢者の30人に1人は、身寄りのない状態いわゆる「おひとり様」となっている状況があるとみられます。この数は年間の死亡者数140万人に対してでは、およそ4~5万人といった規模で、一定数の社会的な問題が存在していることが分かります。
しかしながら、現在は国の動きにも課題があります。そもそも、亡くなった方の賃貸住宅における家財処分などをどう手続きするのかは国土交通省、高齢者の身の回りのケアを日常的に対応しているのは介護事業者であるためここは厚生労働省、信託口座による財産管理や財産処分(相続)などの手続に関係するのは法務省といった具合に監督官庁はばらばらで、総合的にみる行政庁が定まっていません。おひとり様であっても、“財産がなく生活保護を受けている”という場合は行政(各自治体による生活保護課)の補助があるものの、“財産があるが身寄りがない”というケースは、どうにもならない可能性があるわけです。この社会課題を健全に解決することで社会に貢献することが私どもの使命になります。
―― 一般社団法人あんしん財産管理支援機構の今後の展開は
これまでの身元保証事業は、富裕層向けのサービスという面がありましたが、一般層からの死後事務のニーズ(死亡後の葬儀供養、家財処分の手配)も多いことから、どのような資産状況であっても、利用しやすい形にしていきたいと考えております。今後は、全国の司法書士、行政書士と連携して身元保証相談士を広く普及させ、そして簡易的な死後事務サービス(らくしご)などの利用を促し、社会課題の解決につなげていきたいと思います。
黒田 泰(くろだ ひろし)
オーシャングループ 代表
一般社団法人 あんしん財産管理支援機構 代表理事
1978年、埼玉県生まれ。法政大学卒業。大手経営コンサルティング会社に10年間在籍し、弁護士、司法書士、行政書士など法律業界の経営支援を多数行う。特に全国の法律家に向けた相続手続き業務の支援でパイオニア的な実績を持つ。現在、自身が代表を務めるオーシャングループでは司法書士・行政書士による相続関連業務が国内有数の実績を誇る。
また、任意資格「身元保証相談士®」を中心に身寄りのない高齢者の問題に積極的に取り組んでいる。
都市銀行や保険会社、介護事業など上場企業における、相続遺言・高齢者問題に関するアドバイザリーを担当している。著書・講演実績多数。

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