一般社団法人 大人のインフルエンサー協会 代表理事   秋山 剛

中小企業にSNS採用を促す

短い時間で自己表現ができるショート動画への人気が高まる中、人をつなげるツールとしてSNS(交流サイト)の積極活用を促しているのが「大人のインフルエンサー協会」だ。2021年の設立当初はSNSによる集客支援に注力していたが、24年から若者採用支援に大きく舵を切り、SNSを活用して若者採用に取り組む人材の育成に乗り出した。秋山剛代表理事は、その狙いについて「自分が働く業界を、やりがいがある憧れの職業として次世代につなげていく“かっこいい親父”を増やすため」と話す。その意味などを聞いた。

――事業内容は
私たちが目指すのは「自分らしく心を開き表現し繋がり、愛と感謝があふれる世界を次世代に繋ぐ」社会。このため動画投稿サイト「TikTok(ティックトック)」などSNSマーケティングビジネス支援のセミナー運営、コンサルティング支援を提供している。具体的には、自身の発信力を高めるインフルエンサー育成、法人向けにSNSの活用を支援するコンサルティング、SNS集合研修、SNS運用代行などを手掛けている。
――会員の属性は
会員は募集していないが、主催するSNS運用セミナーには6500人超が参加した。24年夏からSNSで若者採用に取り組む「SNS採用プランナー育成研修」に乗り出した。これまでのSNS集客支援ではブランドを高めたい個人事業主や店舗、サロンオーナーが9割を占めたが、SNS採用支援では中小企業がほとんどだ。
――採用支援に注力する理由は
中小企業経営者の困りごとといえば採用だ。短い動画サービスを好んで視聴する若者に対しハローワークで求人を出しても情報は届かない。(1990年代後半以降に生まれた)いわゆるZ世代の90%はSNSで情報を検索するからだ。Z世代は働き甲斐や働きやすさを重視する傾向があり、ハローワークの求人票に掲載している情報だけでは、どんな会社、どんな仕事、どんな社長・社員か分からない。これでは就職しようとは思わない。
――SNSを使えば若者にアピールできる
(3K=きつい、汚い、危険とみられがちな労働条件の厳しい)現場系企業は採用コンサルタントを雇っても、若者を採用するのは難しいといわれるが、運送業の60歳代社長がTikTokで発信し「トラックドライバーは夢の持てる仕事」とアピールしていた。このように中小企業の社長自らSNSを通じて発信し、どんな会社なのかといった疑問に応えることができればZ世代とつながりやすくなる。だからこそ中小企業の経営者はインフルエンサーになって、欲しい人材を確保するためにSNSで働き甲斐をアピールすべきだ。それだけ社長には出演する覚悟が問われる。
――若者採用のキーワードは「かっこいい親父(社長)」ということか
協会の活動を通じて、次世代に希望を与える大人を世界に広げたいと考えている。つまり、かっこいい親父だ。中小企業の親父がかっこいい背中を見せ、その背中を見た子供世代が「親父の仕事はやりがいがある」とあこがれる。親から子にバトンがつながる。私も息子が20歳になったとき「親父を尊敬している」といわれた。「親父の仕事は素晴らしい」というメッセージをSNSにより発信する。中小企業にとってSNS採用は有効だ。我々がその支援を行う。
――SNS採用の成功事例は
先ほど話した地方の運送業者はTikTokで7人を採用した。全員が20歳代の未経験者で、このうち4人は東京、京都、大阪、北九州からの移住者だ。また地方の建設業者はTikTok配信の2投稿目で採用の問い合わせが入った。これからも成功事例を創っていく。そのためにSNSを継続的に発信していく方法や、気を付けることなどを指導している。こうしてSNS採用プランナーを24年に20人、25年には100人を育てたい。
――SNSの魅力に気づいたきっかけは
中小企業のSNS支援を手掛ける協会の代表理事のほか、電気工事会社、ボクシングジム、結婚相談所を経営している。異なる事業で集客方法を探る中、「TikTokでバズる(一気に拡散する)」、つまりSNSを活用することで集客・認知・ブランディングが向上しファンづくりにつながることを知った。
――具体的には
運営する結婚相談所が新型コロナウイルス禍でリアルな婚活が難しくなる中、恋愛がうまくいかなくなる症状を診察する「恋愛ドクター」というショート動画を発信した。すると若い世代に一気に認知され30~40代にも拡散した。SNSマーケティングに成功したので、SNSの有効性をみんなに伝えようと協会を設立した。
――先ほど「息子が20歳になったとき」と話した。結婚は早かった
今は47歳。長男は29歳(長女は27歳)。つまり18歳で父親になって高校を中退。生計のため電気工事会社に就職しながらプロボクサーも経験した。子供が生まれて人生が変わった。「情けない親父は嫌い。子供があこがれる、かっこいい親父になる」と決めた、「大の負けず嫌い」のため仕事に打ち込み、工事に必要な資格を取得し、23歳のときに電気工事会社を創業。「(0から1を生み出す)ゼロイチ」が好きなのでボクシングジム、結婚相談所も立ち上げた。

秋山 剛
一般社団法人 大人のインフルエンサー協会 代表理事

1976年大阪生まれ。18歳で父親になり、仕事をしながらプロボクサーも経験。

電気工事会社、ボクシングジム、結婚相談所の異なる事業で様々な集客・採用方法を試行錯誤し、各事業で億単位の売上をあげる。

コロナ禍で業績が最悪の状況に転ずるなか、オンライン事業、TikTokを開始。売上ゼロの状態から半年で年商1億円の事業を構築、すべてSNSで集客。企業経営者、起業家6000名以上に SNS集客、ブランディング、SNS採用を支援。SNS運用の書籍4冊出版。現在は、厚生労働省管轄 認定訓練校として中小企業のSNS採用担当者育成のための「SNS採用プランナー」認定研修を実施。若者が自分らしく活躍できる社会づくりに取り組んでいる。

【著書】


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