エスプールプラス浦上壮平社長
障害者雇用促進法が段階的に施行され、2018年4月からは精神障害者の雇用が企業に義務化される。多様性による組織の活性化を目指すダイバーシティー・マネジメントが注目され、障害者雇用は今後進んでいくと予測される。法律で定められた雇用義務がある企業は、全国で8万5000社ある。しかし法定雇用率を達成した企業は過半数に満たない。障害者雇用支援を手掛けるエスプールプラスの浦上壮平社長は「障害者の雇用が進み所得が上がれば、国の財政健全化にも寄与する」と意義を強調する。
--障害者の中でも特に知的障害者の雇用促進を図っている
「国内の障害者788万人のうち、民間企業に就職している人は6%にも満たない43万人にすぎない。そのうち70%以上が身体障害者で、精神障害者、知的障害者はほとんど就職できていない。当社は主に重度の知的障害者が働く農園を運営しているほか、企業が雇用しやすいよう、千葉県認可の就労移行支援事業所を県内で5カ所運営して教育訓練も施している」
--ビジネスモデルは
「知的障害者を企業が雇い、当社の運営する貸し農園で働いてもらう。企業からは障害者の紹介料、施設利用料を受け取る。大手メーカーやIT(情報技術)、アパレル、外食チェーンなど約40社が利用している。農園は千葉県の市原市と長南町の3カ所にある」
--なぜ農園なのか
「知的障害者が働いている全国の作業所を視察した。すると農作業をしている事例が多かった。楽しそうに働いているのを見て、これをやろうと思った。農園は通年で仕事ができて体に負担がかからないように設備を工夫した。温度管理するためにビニールハウスで覆い、肥料を水に溶かした液によって作物を栽培する養液栽培という安全で清潔な農業技術を導入している。農園の管理者には近隣の高齢者を採用した。小松菜や芽キャベツ、ミニトマト、メロンなどを栽培している。収穫した作物は企業の社員に福利厚生の一環として配布される」
--今後の事業展開は
「大手企業を含む15社が利用したいという意向を示している。だが農園が足りず待ってもらっているところだ。最近では当社の事業の認知度が上がり、東京都内や関西からも進出してほしいと声をかけられる。またフランチャイズ・チェーン(FC)の希望もある。企業の遊休地を借りることができれば、当社の農園として運営できるかもしれない。土地の確保の問題があるので簡単には増やせないが、年内には千葉県内に農園をあと2カ所増設する。働く障害者も今の約150人から約250人に増やす」(佐竹一秀)
【プロフィル】浦上壮平
うらかみ・そうへい 芝浦工大工卒。1990年4月日本情報サービス入社。ファコムジャパン、タートルジャパン(現タートルスタディスタッフ)取締役を経て、99年エスプールを設立し、社長。2006年3月から会長兼務。10年6月エスプールプラスを設立し、現職。48歳。兵庫県出身。
◇【会社概要】エスプールプラス
▽本社=東京都中央区日本橋2-15-3
▽設立=2010年6月
▽資本金=5500万円
▽従業員=15人
▽売上高=3億6600万円(14年11月期)
▽事業内容=障害者雇用支援
「フジサンケイビジネスアイ」