コロナ禍とDXでニーズの高まる出張関連業務の最適化を実現
AIトラベル 代表取締役 村田佑介氏、取締役COO 藤本了甫氏

出発地と目的地、時間、人数を入力するだけで、簡単に出張手配が可能なクラウド出張管理システム「AIトラベル」。ユーザー企業約150社、ユーザー数約2万人を数える同サービスの使い勝手や今後の展開について、同社の村田社長に加え、「AIトラベル」のユーザー企業の業務部長から同社執行役員に転じた経歴を持つ、藤本取締役に話を聞いた。

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「AIトラベル」では出発地と目的地、時間、人数を入力するだけで、最短5分で出張手配が完了

 

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代表取締役 村田佑介氏(写真右)、取締役COO 藤本了甫氏

 

出張にかかる業務の手間とコストを大きく削減

 

――「AIトラベル」のサービス概要を教えて下さい

村田 法人のお客様に向けて、出張を最適化するサービスです。出発地と目的地、時間、人数を入力するだけで、簡単に出張手配が完了します。管理者は予約データを一元管理し、出張費が適切かどうかを判断可能。出張者の役職やプロジェクトに応じて旅費交通費の上限を設定することで、予算を超過した予約も一目で確認できます。

「AIトラベル」はプラットフォームとして、ホテル業者や航空会社を始めとする多数のサプライヤーやバックオフィスの経費精算会計システム等とつながっているので、出張者はホテルのサイトや飛行会社のウェブサイトなどに移動しなくても、検索・手配から交通費処理まで一括して行うことが可能です。

これまで総務担当者に任せきりにしていた出張予約を、出張者自身で行えるようにしたいという理由で「AIトラベル」を導入する企業もあります。

――出張の立て替え払いや精算はとても面倒ですよね。

村田 バックオフィスの経理部門が事前に仮払金処理をして概算金額で前渡ししていたり、内の全出張者が上げてきた立て替え精算を、経理担当者がすべて処理しなければならないこともよくあります。ところが「AIトラベル」の場合は、出張の交通費や宿泊費を一括で会社精算できるので、予約時に立て替え払いをする必要がありません。出張者も立て替え精算の手間が省け、経理部門も支払いが一本化できて、作業が非常に楽になります。

さらに、「AIトラベル」を利用した出張旅費や宿泊費のデータを、お客様の会計システムに取り込みやすくなるように勘定項目も設定可能。それにより、たとえばクラウド会計ソフトの「freee」の場合、「AIトラベル」の利用明細が「freee」の取引として自動登録され、これまで経理担当者が手作業で行ってきた旅費交通費の取引登録作業が不要になります。

加えて、出張費が適切かどうかについて、会社として統制をどう取っていくかという点にも配慮し、旅費規程をシステムに取り込めるようにしているので、出張者も規定を守った予約ができ、管理者もチェックの手間が省けます。

――出張に関わる業務全般を効率化できるところが「AIトラベル」の強みですね。

藤本 会計システムをクラウド化した企業は、ようやく全体の20%弱まで増えてきましたが、それだけでは解決できない問題が数多くあります。

たとえば経費精算システムを導入しても、結局は入力作業を行うのは出張者なので、エクセルでも紙でも入力の手間はそれほど変わりません。ですから、経費精算の工数を減らすには、先に村田が話したように、立て替え費用の精算そのものをなくさなければなりません。そのためのソリューションの1つとして、「AIトラベルを導入していただければ、出張費用が会社に対して一括請求になるので、従来の立て替え払いは一切不要になります。

もう1つ、最近「AIトラベル」の管理・分析画面に「勘定科目マスタ」が追加され、任意の勘定科目名・勘定科目コードを追加できるようになりました。それにより「AIトラベル」の管理画面から登録した勘定科目を、毎月の会計用CSVデータに反映させて表示させることが可能になっています。

このように、システム連携までして開発を行わなくても、「AIトラベル」からダウンロードしたCSVデータを、どんなシステムに対してもほぼ加工なしでエクスポートできるという機能を実現しています。

コロナ禍で再認識された出張関連業務の効率化の重要性

 

――コロナ禍で出張が減ったことによる影響は?

村田 当社の場合、緊急事態宣言が発表された昨年の4月や5月頃には、新規契約はたしかに減りました。でも当社のお客様はもともと出張が多く、「AIトラベル」が業務フローに深く入り込んでいるため、サービス解約に至ったケースはほとんどありません。7月以降は回復傾向にあり、毎月徐々に売上が戻ってきている状態です。

藤本 出張という文脈で、コロナ禍により相当の逆風にさらされたと想像される方が多いのですが、そんなことはありません。われわれはもともと、業務の効率化や最適化を売りにして開発を進めてきたので、蓋を開けてみれば、「AIトラベル」のユーザーの中でも、出張管理の重要性を再認識していただいた企業がかなりあります。

実際、コロナ禍を機に、新規のご相談をいただくお客様の業種が大きく変わりました。以前は、業務効率化に興味がある先進的なIT企業や少人数のベンチャー企業というように、革新的なアーリー・アダプターの導入が多数を占めていました。

ところが最近では、コロナ禍にあっても出張をなくすことができないお客様、たとえば製造業や卸売業、倉庫業。あとは各地に店舗を持つ小売業のように、現物があり人の移動が不可欠な業種での導入が増えています。

――コロナ禍でも出張をなくせない企業が「AIトラベル」に期待するものは?

藤本 たとえば出張関連業務をマニュアルで管理している企業では、「不要不急の出張を避けるように」とトップダウンで言われても、不要不急の定義がわからないのです。

ですから、まずは何が必要な出張で、何が不要な出張なのかを明確にしなければ、効率化もあり得ません。そのうえで不要不急な出張を本当に減らしたうえで、業務の効率化を進めていくという流れになっています。

単にシステムを導入する、しないではなく、こうしたプロセスのもとで、自社に合わせていかに出張関連業務を管理していくかという観点からの導入が多いですね。

――「AIトラベル」の導入実績は?

村田 「AIトラベル」のユーザーは、金額もしくは出張件数ベースで言うと、従業員数が100名程度の企業がメインで、導入企業数は約150社、ユーザー数は2万人以上です。

藤本 今後、出張が不可避な多くの企業が関心を持って下さると思うので、ユーザー数は加速度的に増えていくでしょう。「AIトラベル」に関しては、間違いなくコロナ禍が追い風になっています。

――最近ではテレワークも増えてきましたが、出張管理が大変そうですね。

藤本 テレワークの場合、紙があると仕事になりませんから、ペーパーレス化の流れに合わせて「AIトラベル」の需要も増えています。なかでも先の出張をなくせない企業はもちろん、歴史のある有名な企業からもかなり引き合いが来ていますね。

――全社的な業務をデジタル化する中で、紙ベースの出張精算がボトルネックになっているケースもあるのでは?

藤本 多数あると思います。今までは、それをボトルネックとして認識してこなかったのかもしれません。また、出張は必要経費だということで、これまではとくに制約を設けていなかった企業でも、その出張が本当に必要なのか不要なのかという線引きが厳格に求められるようになってきていますね。

村田 おそらく今まで課題には感じていながらも、それで業務は回っているから構わないと思われていたかもしれません。でもコロナ禍を機に、それがかなりクリティカルな問題として顕在化してきたと思います。

藤本 たとえば経理や総務、労務などの担当者は、これまで多くの場合、出社前提で業務が組まれていました。それがコロナ禍をきっかけにノートPCが支給され、テレワークに対応できる環境になったのです。その中で、紙ベースの業務を減らすことが、予算としてトップから降りてくるようになりました。

――遅まきながら、ペーパーレス化の波がようやく押し寄せたという状況ですね。

藤本 ツイッターで一時期話題になりましたが、テレワークを進めているにもかかわらず、ハンコが必要な書類があり、役員が「なんなら私が担当者のところに行っても構わない」と言ったという逸話があります。でも、そういうことはもう許されません。省庁についても、河野太郎行政改革担当大臣が、ハンコ廃止とペーパーレス化を要請しましたが、そういう流れはもう不可避になっています。

その中で、人の移動はなくせない、かつ出張について厳格な管理を行いたいとなるとBTM(ビジネス・トラベル・マネジメント)の導入が必要ですが、そのBTMの中でもわれわれは業務効率化に特化したプロダクト設計を心がけています。

私はもともと「AIトラベル」のユーザーでした。経理畑の人間で、実際に「AIトラベル」を導入し、かなりの工数削減ができたので「これはいい」と思ったのです。

村田 「出張の予約が自動でできてよかった」という程度のシステムでは満足できませんでした。出張は、予約して行ってくるだけでは完結しませんし、出張に行く本人だけでも完結しません。出張者と、その周りにいる人たちや周囲にあるシステムをどうつないでいくのかということを常に考えなければ、本当の意味での効率化は実現できないと思いますね。

福利厚生メニューとして「AIトラベル」の社員の個人利用も可能にしたい

 

――最近力を入れて取り組んでいることは何ですか?

村田 僕は出張には、エンドユーザーである企業のお客様、全国に数ある旅行代理店、ホテルや鉄道・飛行機などの旅行サービスを持っているサプライヤーという3つのプレーヤーが登場すると思います。

1つ目のエンドユーザー向けのサービスとして「AIトラベル」を提供しており、2つ目の旅行代理店向けにも「AIトラベル」のOEM提供を進めています。とくに大手企業の場合、インハウスで旅行代理店を持っていて、そこでグループ全体の出張手配を請け負っているケースが多いので、「AIトラベル」の導入がグループ全体の出張差配業務の効率化に貢献できると考えています。

藤本 今まで内線電話で連絡を取り合っているなどマニュアル作業が入っていたインハウスの旅行代理店も、今回のコロナ禍で効率化が求められ、DX(デジタルトランスフォーメーション)を進める対応が求められてきていると思います。そこで、その部分でのDXを推進めるためのツールとして「AIトラベル」を活用し、従業員の満足度を高めつつ業務効率化を図り、インハウスの旅行代理店のオペレーショナル・エクセレンスを実現するための支援に、われわれは今注力しているところです。

――出張者の移動データを活用した新たなサービスの実証実験も行っています。

村田 今後、先に述べたサプライヤー向けに展開していきたいサービスの試みの1つとして、京浜急行電鉄様および京急イーエックスイン様と共同で行っている取り組みが、東京都主催「令和2年度 イノベーション・エコシステム形成促進支援事業 共同プロジェクト」に選定されました。出張者の移動データを活用し同グループの「EXイン」ホテルの売上を最大化しオペレーションを最適化することなどを目的にしています。

「AIトラベル」では、ユーザーが、この日ここに出張に行くという場合、検索をかけるとかなり具体的な情報がわかるので、その検索内容に対して適切なホテルのプランを当てていく、ということもできるようになっていくでしょう。コロナ禍で痛手を負っているホテル業界に対して、出張者とのマッチング向上にむけたサービスを提供したいと思っています。こうしたサービスが実現すれば、今度はそれを当社の既存のお客様やOEM先にも提供できるようになるでしょう。

藤本 われわれは豊富なデータを持っているので、データをさらに蓄積しながら、最適な出張を提案するために、出張者はどんなニーズを持ち、何を求めているのかを分析していけば、出張者により多くのものを還元できるようになると思います。たとえばそれは、「AIトラベル」を利用するユーザーが出張先で「こんなご飯を食べたい」とか「こういうシャンプーを使いたい」という要望も一緒に実現できる、良質な出張体験かもしれません。

――出張におけるカスタマー・エクスペリエンスの向上につながりそうですね。

藤本 (出張は)意外と嗜好性が高いものですからね。実際、数多く出張をする人ほど、「こんなホテルがいい」という具体的な好みがあるものです。

村田 会社側としては「出張が安くなればいい」というニーズはありつつも、社員がその出張で(高い満足を得ることで)どれだけのパフォーマンスを出せるかという観点や、(「AIトラベル」の導入をいかに)福利厚生として(も活用し)社員の会社に対する帰属意識を高めるかという見方もあるわけです。

藤本 福利厚生の一環としても利用していただけるようにしたいですね。「AIトラベル」はビジネスユースの出張に特化したサービスですが、検索容易性も利便性も高いので、実際に導入企業の社員が、プライベートでの旅行やレンタカーの予約に「AIトラベル」を使いたいという要望が数多くあるのです。今後、導入企業の福利厚生メニューとしても「AIトラベル」を利用していただけるようにしたいですね。

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誰が予約しても、管理者は予約データを把握でき、出張費が適切かどうかを判断できる

 

出張や近場の外出の候補日時を自動的に提案する「AIカレンダー」

 

――今後の展開は?

村田 「AIトラベル」の直販のお客様を増やしつつ、OEM提供を広げていきます。

藤本 今度、学校にも営業に行きます。学校も、出張が多いのにアナログ処理を行っている中で、良いソリューションがなくて困っているところが多いのです。このような業界特有な事情があって、業務効率化できてないというところには積極的に取り組んでいきたいです。

村田 もう1つ、「AIトラベル」とは別に日程調整に特化した新サービス「AIカレンダー」を来年1月に開始します。「AIトラベル」では、出張や打ち合わせの日時が決まってから交通手段や宿泊先の検索・予約を行いますが、事前の日程調整の段階からサポートしたいと考え同サービスを開発しました。

出張や打ち合わせの前には、候補日程を何日か書いてメールで送り、日時を詰めていくというやり取りが発生します。ところが、その候補日を出すのが非常に面倒。1人で移動する時は自分の空いている時間帯を見ればいいのでわりとシンプルですが、同行者が出てくると、「この人はこの日時に出張を入れていいのか」とか「この人は、この前の時間に外出していたら打ち合わせに間に合わない」ということを見極めるのが大変です。

「AIカレンダー」では、たとえば私と藤本が打ち合わせをする場合、2人のスケジュールの中から空いている日時を自動的に提案。予定表に、その時々の移動場所や普段仕事をしているオフィスの場所を入力しておけば、そこから打ち合わせ場所への移動時間を計算し、問題のない時間帯を提案してくれます。

――空いている日程を自動提案してくれるのは便利ですね。

村田 基本的に、打ち合わせなどにともなう近距離の移動は出張よりも数が多いと思いますが、日程調整全体を「AIカレンダー」で行い、出張手配や管理を「AIトラベル」で行うほか、「AIトラベル」の経費精算連携機能を使えば、「何月何日の何時にこの駅からこの駅まで打ち合わせで移動した」というデータを経費精算システムに送ることも容易になります。

「AIカレンダー」は、「AIトラベル」の会員企業の方は登録無料で使用できますが、出張や打ち合わせのスケジュール1件に対して参加者が2人以上の場合は有料になります。

――サービス開発のポリシーと抱負を聞かせて下さい。

村田 僕自身、プログラマーとして、たとえば5分かかる手作業を、いかにプログラムのコードを書いて1秒で終わらせるかといった試行錯誤を、ずっと続けてきました。加えて、僕も藤本も他のメンバーも「この部分に会社としての課題があり、何かそれを解決する方法はないか」とか「最終的にこれをこう使うのなら、この部分はいらないのではないか」ということなどを考えるのが好きで、そうした議論の結果をどんどんプロダクトに反映させています。

藤本 「AIトラベル」自体の開発スピードが非常に速く、今、毎月約1回のペースで新機能をリリースしています。

村田 正式リリースに先立ち、新たに開発したサービスを「AIトラベル」に試験的に適用するプロセスは月に5、60回ぐらいあり、1日に2、3回は新サービスが立ち上がっています。その中から、公に発表するインパクトの大きなものが月に1、2件は出ているという状況ですね。

DXがよく話題に上るようになったのはここ1、2年のことだと思います。おそらく、テック系ベンチャー企業などが、普通に真面目に開発やイノベーションを続けていることを、外部の人たちがDXと呼ぶようになったのでしょう。

その意味で、僕たちがこれまで行ってきたことをサービスに当てはめ、「こうすればよくなります」という改善提案を愚直に続けていけば、それが結果的にDXにつながっていくのだと思います。

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「Googleカレンダー」と連動し、出張や打ち合わせの候補日を自動提案してくれる「AIカレンダー」。2021年1月にサービス開始

 

「取材・構成 ジャーナリスト 加賀谷貢樹」


「フジサンケイビジネスアイ掲載」

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