今後の中国は進出するに値するか?
最近の報道によれば、中国人民銀行(中央銀行)が都市住民に実施したアンケートで、住宅価格が「高すぎて受け入れられない」と答えた人が75.6%という結果が出た。2009年の調査開始から最高水準という。これに対して、中国政府は断固として住宅価格を抑制しようとしている。
また、預金金利が消費者物価指数の上昇率を下回る状態が続いているため、国有企業や役人ら既得権益層の余剰資金が高利貸の資金源に回っているという。この“地下金融”の行き着く先は中小企業や個人であり、支払金利が法定金利を大幅に上回るため、中小企業の破綻が相次いでいる。中国銀行業監督委員会は、取り締まりに本腰を入れ始めた。
◆消費主導型へ
今後の中国をどのように見るか。一番大切なことは、中国政府が国民の支持を得られ続けることができるかどうかである。これが不可能となると、日本の中小企業の進出先としてなど、とても考えることができない。
政府に対する国民の信頼は、格差問題を助長するインフレの抑制と、既得権層の腐敗構造にメスを入れることができるかどうかにかかっている。
現在、中国政府が最も注力しているのは消費主導型経済への移行である。国内総生産(GDP)に占める消費の割合は、日本が60%、米国が70%であるのに対し、中国では35%前後という。このため中国は輸出依存体質から脱却すれば、より持続可能な経済発展が可能になるだろう。
中国国内における消費の担い手は誰かといえば、中流層である。しかし、日米ともに国民の70%が中流層に相当するのに対し、中国の中流層は全人口の23%に相当する3億人強と中国社会科学院が推計している。
◆中流層拡大を
中国社会科学院は、中流層を20年までに人口の40%にあたる6億人程度まで増やそうと考えている。中流層を自動車・住宅・海外旅行など経済波及効果の高い消費の主体にするとともに、中流の下の「農民および出稼ぎ農民の工場労働者」の層を少しでも底上げすることができれば、彼らの不満をいくらか解消できるからだ。
この中流化戦略により、現政権の安定が図れる。昨今の労働契約法の施行を通しての賃上げや社会保障制度の整備は、まさに中流層を拡大する施策である。この動きが成功すれば、中国は市場として立派に成長するだろう。今後、日本にとって中国は、安い労働コストを求めての進出先ではなく、地産地消の地としての進出先という位置づけになる。中国が賢人政治を実践し、政府要人が真に優れたリーダーシップを持っているなら、成功できるはずである。
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「フジサンケイビジネスアイ」