マーケティング新時代 造り物の終焉

第18回

マーケティング観点で振り返る昭和100年

イノベーションズアイ編集局  マーケティングコンサルタント N

 

2025年は昭和100年にあたる年だ。昭和は1926年12月25日から1989年1月7日までの元号で、昭和がはじまってから100年目を迎えたこととなる。この100年の間に社会や経済、生活など、様々なことが大きく変化しているが、その背景と合わせてマーケティングの観点で振り返ってみたいと思う。

戦争時代

1931年の満州事変から日中戦争、そして太平洋戦争で敗戦する1945年までの約15年もの間、日本は戦争を行っていた。この間の日本は指導者層による軍事国家と言え、三国同盟にはドイツの独裁者ヒトラー、イタリアのファシスト指導者ムッソリーニと独裁色の強い国家が集まり、第二次世界大戦を引き起こし、そして敗北している。

・マーケティングの観点
政府の思惑に沿った思想を善として教育し、それ以外を悪として罰することで、洗脳的に世論を操作しようとしても、真実を伝えたいという人や指導者のやり方は間違っていると考える人は少なくなく、命懸けで行動に移す人も存在する。現在と違い、反する意見を持つ人々が声を拡散する手段は限られており、声をあげれば潰されてしまうため、納得できなくても反することを放棄せざるを得なかった時期とも言える。

高度経済成長

戦後の日本は、復興を目指し活発に働くこととなった。戦後すぐに起きた第一次ベビーブームにより、1960年代には多くの若い労働力が社会で活躍し始め、1964年には東京オリンピック開催、1970年には大阪万国博覧会開催と破竹の勢いで国の復興に励んだ。その結果、1968年には国内総生産(GDP)がアメリカに次ぐ世界2位にまで昇り詰めている。高度経済成長と呼ばれるこの期間は、1973年の中東戦争で石油価格が大幅に上昇したオイルショックにより幕を閉じることとなる。高度経済成長期の三種の神器と言われるカラーテレビや洗濯機、冷蔵庫が普及し始め、国民も豊さを感じられるようになり、この後、第二次ベビーブームが起こることとなる。

・マーケティングの観点
この頃、カラーテレビの普及に伴いテレビの視聴率が大幅に上昇し、多くのテレビCMも制作された。テレビが急速にマスメディアとしての役割を担うようになり、オイルショック時のトイレットペーパー争奪戦の様子がテレビで放送されると、新聞以上にリアルな状況が人々に伝わり、より不安に拍車をかけた。テレビCMの放映による集客や認知度アップの効果の大きさは現代以上であったと言える。

バブル経済

高度経済成長を経て、日本は自動車や電子機器など様々な分野で世界進出を果たし、1980年代後半から1990年初頭まではバブル経済期となった。日本の株や不動産価格は上昇し続け、世界の時価総額ランキングでも日本企業が上位を占めていた。しかし、1990年代に入りバブルは崩壊し、景気は悪化の一途をたどることとなる。
メディアにおいては、新聞にテレビ、ラジオ、出版なども全盛期となり、経済紙や専門誌なども多数発刊され、テレビでは今でも語り継がれるようなバラエティ番組やドラマ、昭和アイドルなどが誕生していった。
一方世界では、アメリカを中心とした資本主義国とソ連を中心とした社会主義国による冷戦が1989年に終結し、東西ドイツが統一され冷戦の象徴的存在だったベルリンの壁が崩壊した。

・マーケティングの観点
バブル期は、広告出稿したい企業が溢れ、特にテレビ業界は莫大な広告収益と影響力の増大により、大きな権力を手にすることとなる。様々な分野の出版物も増加し、宣伝競争も激化していった。インパクトのあるCMや印象に残るキャッチコピー、ブランド化による高付加価値など、マーケティング活動も本格化していった。

インターネット時代の幕開け

1995年にWindows95が発売されたことにより、コンピューターの一般普及が急速に進んでいく。この普及の背景にあったのがインターネットで、企業もホームページを開設しはじめ、日本にもYahooが誕生しインターネットでの情報収集も行われ始めた。その後、1999年にはiモードによる携帯電話の通信を利用したインターネットサービスが始まり、2006年には初代iPhoneがアメリカで発売され、翌年には日本にも後継機であるiPhone3Gが登場した。1995年は阪神・淡路大震災が発生し、地下鉄サリン事件という衝撃的な事件が起きた年でもある。バブル崩壊の後、インターネットやコンピューターが普及し、社会が大きく変化していった時期といえるが、この頃から日本の低迷が始まったと言われており、失われた10年、20年、30年などと言われる際の起点とされている。

・マーケティングの観点
1990年代後半にはインターネット利用人口が爆発的に増加するのに対し、テレビの視聴率は僅かに減少し始め、新聞や雑誌などの減少も始まった。インターネットによる情報伝達とコンピューターによるデジタル化が本格的に始まった時期で、現在のデジタル情報化社会の始まりだったのだと改めて実感する。企業は自社の看板としてWebサイトを立ち上げ、Yahooなどに広告出稿を始めた。また、掲示板サイトなどによる口コミ情報が世界中から発信、共有され、嘘か誠か不明な情報を含め、報道されない情報などを一般人が取得できるインフラができ始めていた。

不景気時代

バブルが弾けて以降、企業のIT化推進などの需要が急拡大したが、2000年にはこのITバブルが崩壊し、2001年には9.11同時多発テロ、2008年にはリーマンショック、2011年には東日本大震災と、景気悪化状況に拍車をかける大きな事件が多発し、日経平均株価は大幅に下落して1万円を切ることとなり、失業率も過去最高水準を更新した。この頃、雪印食中毒事件や三菱自動車のリコール隠しなど、大手企業の不祥事が明るみに出るようになり、そごうや千代田生命の破綻、大手企業の事業売却など、上場企業といえども安泰とはいかない時代となったことが世間に認知された。この後、金利ゼロ政策やアベノミクスなど、回復に向けた様々な政策が矢継ぎ早に行われることとなる。

・マーケティングの観点
内部告発や情報漏えいも明るみにでるようになり、情報の重要性の認識が高まった。マーケティングにおいてもSEO対策などが盛んとなった他、インターネットを介した口コミの影響が話題となり始め、これらを悪用したステルスマーケティングなどの問題も表面化した。2000年問題までにシステムを刷新した企業も多く、デジタル化による効率化だけでなく、蓄積したデータの活用によるマーケティングが盛んとなっていった時期で、サジェスト機能やターゲット広告の原型が生まれた時期でもある。ただ、コンピューターの処理性能が追いついておらず、大量のデータを扱うことが困難であったため普及するまでには至らなかった。

情報伝達の変革

2020年には新型コロナウィルス感染拡大の影響で、在宅勤務やオンライン授業などが急速に普及し、飲食業などの業績悪化、非正規雇用者などを中心に失業者が増加した。一方で、テレビ会議システムのZOOMが急速に普及し、引きこもり需要としてYoutubeやNetflixなどの動画視聴やSNSによるコミュニケーション利用が世界中で大幅に増加した。この結果、日本のアニメは世界中に知れ渡り大人気となり、日本の子どもが一人でおつかいに行く動画などをはじめ、日本の様々な文化風習が拡散され、日本人気が大きく上昇した。また、AI活用の一般化やデータ処理能力の急速な進化に伴い、扱う情報量は膨大となり、情報伝達速度は著しく高速化した。その反面、情報検索や情報の精査など、情報を扱う側の能力が求められるようにもなった。

・マーケティングの観点
コロナ禍以降、SNSや動画での情報発信が急速に拡大し、今ではマスメディアをも上回る影響力を持っている。これは日本に限った話しではなく世界的な傾向であり、現在では、ローカルな話題から世界的な話題まで、あらゆる情報がインターネット上に存在し、そこから必要な情報を取捨選択することが当たり前となっている。
マーケティングにおいても、SNSや動画の活用が普及した反面、選択されるための競争は激化し、口コミなどのリスク対策も必用となった。目につくことや良い面のアピールだけでなく、誠実さなどを含め、発信する内容自体の質がより求められるようになったと言える。

マーケティング観点での100年の振り返り

昭和100年を振り返ると、軍事国家の中で自由な発言もままならなかったところから、国会議員であっても個人の情報発信で窮地に立たされることもありえるような現在は、100年前の人々には想像もできなかったかも知れない。振り返ってみると、高度経済成長、バブル、インターネットなど、わずか100年の間に大きな変化がいくつも起きているのだが、流れの中にいる間はその変化の大きさに気付けていない。

現代は、昭和からの100年より更に速いスピードで変化する時代だ。現在の情報伝達の変革は国内だけでなく、世界的に変化を起こし、人々の考え方や価値観の変化も起こっている。だが、そういった中で、古き良き日本文化は世界的にも評価され、日本人の誠実さや他人を思いやる心などが称賛されることも多い。

あらゆる情報が伝達される世界では、どんなに取り繕っても本質が表面化し評価されることとなる。人にせよ、企業にせよ、本質で勝負できる体質をつくることが、これからの100年で必用なマーケティングの源泉となるのではないだろうか。

 

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