第4回
変わりゆくメディアの在り方
イノベーションズアイ編集局 マーケティングコンサルタント N
ジャニーズ問題が連日報道されているが、並行して問題となっているのがメディアや報道の問題だ。
かなり以前からNHKや民放各社はジャニーズ問題を把握していながら、これまで何も対処してこなかったことに対して問題となっているのだ。
今回はこのメディアや報道についての問題について触れていきたい。
メディアの反省
NHKのクローズアップ現代という番組でこのジャニーズ問題を取り上げ、NHKや民放各社の問題に言及し、NHKの編集責任者も「性犯罪事件」という認識が欠けていたことなどが読み上げられていた。しかし、内容としては「あえて扱わなくてもよいものと認識してしまっていた」という論調で、反省と再発防止を訴える内容であった。
この放送を受けての一般の人や著名人の反応としては、ジャニーズ問題に触れた点については評価されているものの、NHKや民放各社の組織上の問題や業界としての体質などには触れられておらず、本質の解決にはなっていないという厳しい意見が多かった。
実際のところ、なぜこのような問題が起きるのか。ジャニーズ事務所はスポンサー企業を獲得できるタレント、視聴率を稼げるタレントを大勢抱えており、長年そういったタレントを継続的に供給してきた実績もある。テレビ局などにとってジャニーズ事務所は欠かせない取引先となっており、タレント個人ならともかく、ジャニーズ事務所としてのスキャンダルはスルーしたかったというのが本音だろう。
本当の問題
根本的な問題というのは上層部からの指示なども含めた組織体制や業界体質の問題だと多くの人が考えるだろう。NHKにおいては公共放送としての役割が果たせていないことも大きな問題だ。
だが、本当の問題はその先にある。真実が報道されずとも関係者はもちろん、一般の人でも背景を認知しており、NHKも含めたメディアへの信頼は既になくなっているということだ。むしろマスコミとはそういうものだと認識されている。
メディアは原則として嘘を報道することはまずあり得ない。しかし、「都合の悪いことは報道しない」と言われて否定できるだろうか。今回のジャニーズ問題については、被害者が存在する犯罪を報道せず、犯罪者が経営する企業と知りながらも取引を行っていた。つまり、都合の悪いことをスルーし、都合のよい取引を行っていたと言い換えることができる。
情報伝達の変化
NHKや民放各社は、反省し今後改善するとしているが、大広告主であるトヨタやソニー、影響力の大きな経団連など、力のある組織にとって都合の悪い報道をスルーしていない、スルーしないと胸を張って言えるだろうか。
今回のジャニーズ問題に対してマスコミ各社が一斉に報道する引き金となったのは、英BBCが被害者の証言などを含めた報道を行ったことだ。グローバル社会が進む現代では、海外メディアや国内メディアの力が及ばないところからの情報発信もある。また、既にインターネット上では報道されない情報が飛び交っている現実がある。
情報を伝える仕事は、既に利害関係を超えて情報を伝えなくてはならない時代となっている。メディアだけでなく、スポンサーや権力者も変化を受け入れ、全て知られている前提で正々堂々とした活動を行わなければならない。裏を返せば、正々堂々と活動し信用を積み重ねている企業や個人が報われる時代は既に訪れているのだ。
これからの時代、様々な情報がより早く誰もが受け取れる時代になっていくことが予想される。情報操作などのメッキはすぐに剥がされてしまうだろう。どんなに環境が変化しても変わらない大切なことは、メディアも情報元となる企業も個人も誠実であることなのだ。
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